12話
先日余の嫡子に降り注いだのは、神罰であった。開口一番にそう切り出され、如何様な反応を返すのが正解か分かる人間を連れて来ていただきたい。内心ではパニックになりながら、自分のひきつった顔がうっすらと笑みを浮かべているようにも感じる。
余りにも情報が不足しているものの、ある程度見えてくるものはある。果たしてそれが正しいのかどうかなどはわからないが、命に関わる以上運任せに投げやりな返答を選ぶ余地は無い。仮定を確定出来る情報が無いのも、ひとえに凡人故か。
まずわかる事は、直ちに命の危険は無いようだという事だろうか。自分の安全が最初に来る辺り所詮凡俗と罵られても仕方のない事であるが、私にとって最初に確認しなければならない事である。3度目の人生があるとは考えない方が良い。
次に、誰でもわかる簡単な部分から行けば、昨日何が起こっていたとしてもそれに関して関与する事は無い、という言質をいただいた事だろうか。それが敵対しない程度なのか積極的に支援する事を意味しているのかまではこれだけでは分からない。
一つのケースとしてみれば、王子を切り捨ててでも教会と親密になろうとする意思表示の可能性もある。まあほぼゼロだが。そうであったならばわざわざ嫡子などという言い方もしなければこの場に同席させる意味も無い。
ならばその逆、かわいいうちのむちゅこたんになにしてくれてんねんおおん? となっている可能性。敵対もまあ無いだろう。その場合は普通なら呼ばずに暗殺等の手段を選ぶ。あっても処刑だろう。つまりその可能性は無いとみて間違いない筈。
順当にいけば和解の席を設けた、という事だろうか。それもこちら側に大分譲歩する形で。王子だけであれば徹底抗戦の構えも有り得たかもしれないが、それを諫めて和解させようというのがおおよその狙いとみて間違いない。
物事には必ず理由が存在する。今回の場合気になっているのが、なぜわざわざこちらを立てるような形での和解を申し入れてきているか、その一点である。単純に考えれば単に醜聞を嫌って早期に和解させ、嫡子の権威を守る行動だろうが……
それだけであるならば、わざわざ国王自らが相対するのか。こちらの出方が読めない故に最初から切り札を切った可能性は、こちらがあくまで席を設ける口実に話し合いを選んだことや風聞から見てまずありえない。
言ってみれば、なめられてしかるべきなのだ。王子様がこちらに未だ敵愾心を向けていたとしても、こちらが許し事件を大したことが無かったように操作するのは簡単であると思うべき情報しか流れていない筈なのだから。
つまり、単純な和解以上の効果を得る事こそが、向こうの狙いと考えてしかるべき。そう考えれば、逆に国王の発言の意味が透けて見えるようになる。つまり、私が神に愛されているという箔をつける事を良しとしているわけだ。
敵対者に対し神罰が下るなど、一般的に見てどのような印象が抱かれるか。考えようによっては王権すら揺るがしかねない存在を肯定するならば、その目的はただの一つだろう。神輿として抱き込むか、反応次第では消す。
故の人払い。あくまでこちらが恭順の意を示すなら和解し、そうでなければ自身の発言を一切無かったことにして危険物を排除する。つまり返答次第でどちらにでも転ぶということだろう。あるいはそれが理解できるかの見極めの可能性。
更に考えるのであれば、そのような危険物を抱え込みたい理由だ。錦の御旗を振りかざすのは、敵対者に対しての正当性を示すため。つまり、この国は戦争の準備をしようとしている……?
といったようなことを頭の中でさくりと流し、何も気が付かないふりをするのは処世術というものだろうか。含みを持たせずに慎重に、あくまで王子にも王家にも敵対するつもりはなく、むしろ正当性の保証すら匂わせるように答弁する。
最終的には子供故に身の回りの世話が必要で、かといって正義感を否定するつもりもなく昨今の神殿が澱んでいたことを認めながらよいしょして、ころりと機嫌を直した王子とズッ友になるのであった。




