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20-3. 王国の秘密 3

 あたしらは、何重ものセキュリティを解除しながら、どんどん奥へ連れられて行く。少しだけ不安になってきたところで目に飛び込んできたのは、黒い円のまわりに三つ葉が描かれている放射能標識だった。当然、イヤな予感しかしない。

 厳重な扉を開けた、格納庫らしき部屋に保管されていたのは、多くの円錐形の物体だった。フリーダーが言う。

「皆さんご覧ください。これは、核弾頭です」

「はい?」

 女王様は怪訝な顔で、目の前の物体とフリーダーとを見比べて、言った。

「わたくしは、王国が核保有国だなどとは、聞いていないのですが」

「帝国も、王国が核兵器を保有しているなどとは、知らないはず……」

「聞いていないのですが!」

 フェリックスが何やら言い終わる前に、女王様が叫んだので、あたしを含めた一同はびっくりした。

 女王様は、フリーダーに詰め寄る。

「わたくしの知らないところで、王国は何をやっているのですか!」

「隠していて、申し訳ありません。これは、軍や閣僚の一部しか知らない秘密でして」


「わたしは! 核保有国の女王になった覚えなど、ありませんッ!!」


 その場は静まり返った…… いや、正確に言うと、女王の叫んだ声が、大きな部屋に反響していた。

 怒りを帯びた、というよりも、悲痛な声だった。

「ヤバイな…… あんな女王様、初めて見たわ」

 フェリックスの奴、間抜けな顔をしてやがる。

「女王陛下のおっしゃる通りです」

 フリーダーが静かに言う。

「ですから、これからどうするか、陛下にお考えいただきたいのです」

 女王様は押し黙っていたが、しばらくして、気を取り直したように言った。

「こんなもの、何に使うのですか。帝国が存在を知らないのなら、抑止力になりません。意味がないのではありませんか」

「それは、こちらでご説明します」

 あたしらは、また別の場所に案内された。そこにあったのは、全長が5~6メートルほどのロケットと、クローラー式の不整地運搬車だった。

「これは、短距離弾道ミサイルと移動式の発射台です。射程は約200キロメートル」

 フリーダーが説明する。

「わが国は、戦争になったとき、敵軍の戦車部隊が大挙して押し寄せることを想定していました。そうなれば、さきほどの弾頭を搭載してこれを発射し、侵攻を食い止めるというわけです」

 彼女はフェリックスの方を向いて話している。

「装甲車両というのは、意外と爆風や放射線にも強いものです。ですから、これを使用するときは、ヒロシマ・ナガサキのように空中爆発させるのではなく、地上で爆発させることになります」

「ちょっと待って。そうすると、自国の領内で核兵器を使用するということですよね? 核爆弾を地上爆発させると、土壌の放射能汚染がひどくて人は住めなくなるとか……」

 そんなことになったら、この国の国民はどうなるのか。フェリックスの指摘に、フリーダーは何事もないかのように答える。

「そういうことになりますね」

 今度は女王様が顔をしかめながら尋ねた。

「誰が、そんな作戦を考えたんですか」

「誰か、と問われれますと…… しいて言えば、東西冷戦期の西側諸国ですね。彼らは東側の物量作戦に対し、西ドイツ領内で戦術核兵器を使用して食い止めるという『対策』を考えていたようですから」

「そんな無茶な……」

 あたしも同感だ。20世紀のそういう話を聞くたびに、あの頃はみんな狂っていたんじゃないかと思う。

「そんなことをしたら、報復の核攻撃を受けて、全面核戦争に突入してしまうのでは?」

 そんな展開は、20世紀の終わりにはもう恐れる必要がなくなったものだと思っていた。でも…… 目の前にその恐怖が転がっている。

「敵国の都市を壊滅させるのならともかく、自衛のため自国内で、侵略してきた敵軍を撃破するために使うのですから、報復されるいわれはない、という論理です」

「敵は、そんなに都合よく解釈してくれるでしょうか」

 フリーダーは、女王様の質問には直接答えず、逆に問う。

「私は、このまま戦争を続けると起こる可能性について、きちんと女王陛下にお伝えする必要があると考えました。そのうえで伺います。あなたはまだ、女王という仕事を、続けたいとお考えですか」

「わたくしの意思で、自由にやめることなんてできないでしょう」

「今なら、できます。女王陛下の安否は不明ということになっていますから。あなたはまだお若い。どこかで、違う人生を生きることもできるでしょう」

 女王様は驚いた顔で言った。

「そんなことが、許されるのですか?」

「最初に私たちは、あなたに女王になることを強制しましせんでした。あなたは自らの意思で女王になることを選ばれたのです。そのことには、感謝しています。しかし、その頃とは状況がだいぶ違ってきました。降伏文書に署名するだけの簡単なお仕事、というわけにはいきません。我々が戦争に負けたとき、帝国があなたをどうするか、わかりません。あなたは大切な方を失い、帝国やこの国の在りように絶望もされたことでしょう。私たちは、あなたに命を懸けさせるようなことは、もうしたくありません。あなたがひとりで苦しむ姿を、もう見たくはないのです。あなたがこの国や死者の責任をすべて負う必要など、どこにもないのです。あなたに女王でいることを強制することなど、誰にもできません。ですから、あなたが選んでください。これから、どうなさるのかを」

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