奴隷をいただくようです
奴隷商館についた僕は応接室のような部屋に通された。
僕をこの部屋に案内したロランスさんは、僕を1人部屋に残してどこかへ行ってしまった。
しばらくしてから戻ってきたロランスさんは僕の向かい側に座った。
今この部屋にはロランスと僕しかいない。
「ジュン様、改めまして、助けていただいてありがとうございました。」
「改まらなくてもいいですよ、さっきも何回も聞きましたから。」
「それでは早速、お礼の件なんですが、ジュン様は現金がよろしいですか?」
「なんでもいいですよ。」
もともとお礼が欲しくて助けたわけではない。
「そうですか、では現金ではなく、奴隷はいかがでしょうか?」
ロランスさんは、少し間を開けた後、そう言った。
「奴隷…ですか?」
「はい、どうしてもジュン様に引き取ってもらいたい奴隷がいるのです。」
「私に?」
どういうことだろう。
「詳しい話を聞かせてもらってもいいですか?」
「わかりました。」
ロランスさんは静かに話し始めた。
…というわけで、ジュン様に引き取っていただきたいのです。」
ロランスさんの話を簡単にまとめると、ロランスさんは昔は貴族だった。
しかし、商人になりたかったロランスさんは親の反対を押し切り、家を飛び出したそうだ。
それから数年後、色々あって、奴隷商人になったロランスさんは、とある街で、両親と仲の良かった貴族の娘を見つけた。
その子は奴隷として、売られていたらしい。
当然ロランスさんはその子を買い取った。
話を聞こうとしたが、相当ショックを受けていたらしく、何も話さなかったそうだ。
しばらくの月日が経ち、徐々に喋るようになり、最近聞いた話では、よくわからないまま、両親が殺されて、自分は奴隷になったという。
その子にはこんなところじゃなくて、いい主人に買い取ってもらいたい。
自分のところにいても、心のケアはできるが、幸せにはできない。
と、ロランスさんは語った。
その話を聞いて、僕は1つ疑問に思った。
「奴隷から解放することはできないんですか?」
「不可能ではありませんが、それには奴隷には落とした者の同意が必要なのです。
彼女を奴隷にしたのは彼女の家と仲の悪かった貴族なんですが、その者は相当タチが悪く、同意する条件として、私には絶対に払えそうにないような額を要求されました。」
ロランスさんはとても悔しそうな顔でそう言った。
「事情はわかりました、その子を見せてもらってもいいですか?」
「はい、ついてきてください。」
そう言ってロランスさんは歩き出した。
しばらく歩くと奴隷達がたくさんいた。
みんな檻に入ってはいるが、死にそうなほどガリガリに痩せている者や、顔色の悪い者はいない。
どうやら本当に奴隷を粗末には扱っていないようだ。
まぁこの世界ではこれが普通なのかもしれないが、僕の奴隷のイメージはご飯も最低限しか与えられず、売り物になりそうにない者は紙くずのように捨てられるような理不尽なものだ。
みんな僕が通るとジッとこちらを見てくる。
その表情は絶望などではなく、好奇心や期待や恐怖といったものだ。
僕達はそのまま歩いて奴隷達がいる部屋を後にした。
するとそこには、金髪の少女が他の奴隷より少し大きめの檻に入れられていた。
ロランスさんはこちらに振り返った。
「ジュン様、これが先ほどお話したセリーでございます。」
この子か。見た目はとてもかわいらしい。
今の僕の身長は150cmくらいだが、それより10cmほど小さい。
日本では小学生か中学生くらいの年齢だろう。
「セリー、こちらはお前を買ってくれるかも知れないお方だ。挨拶しなさい。」
檻から女の子を出しながらロランスさんが言う。
「こ、こんにちは…」
セリーと呼ばれた少女は軽く頭を下げながら緊張した表情で挨拶をした。
「こんにちは」
僕は彼女に近づき、手を取り笑顔で挨拶を返した。
第一印象は大切だ。
なぜか彼女は僕が手をとると少しビクッとした。
「ジュン様、彼女は人見知りなので怒らないでやってください。」
「これくらいで怒ったりしないよ。」
「それに普通は購入前の奴隷に触れたりはしないので、驚いてしまったのでしょう。」
「そうなの?ごめんね?」
「いえ、こちらとしては何も問題ではありませんよ。ただそういうことはみなさんしないだけです。」
そうなのか、まぁいくらかわいくても奴隷だからしょうがないのかな。
「彼女は私が売りたい方に売る予定だったので、ある程度のことならなんでもできます。
ジュン様ですと、家事や戦闘がメインですかね。
家事は完璧にこなせます。
戦闘は優秀な冒険者に指導してもらったので戦力にはなるはずです。」
他にも色々彼女のアピールポイントを教えてくれた。
僕としてはこの子をもらいたい。
ロランスさんの頼みを聞いてあげたいし、セリーはすごく優秀だ。
それになんだかんだ1人は寂しい。
もし戦闘ができなかったら、サポーターみたいな役割でもいいし、最悪僕の帰る場所で待っててもらって話し相手になってもらうだけでもいい。
僕は今は男ではないけどだけど、かわいい女の子とは仲良くしたいからね。
でもそれは僕の気持ちで彼女が嫌と言うなら仕方ないから諦めよう。
普通は奴隷相手にそんなことはしないだろう。
ただ戦わせるだけならそれでもいいだろうが、僕は彼女と仲良くしたいから無理やりでは意味が無いのだ。
もう1度僕はセリーの手を取り、目を見た。
彼女は今度は驚かなかった。
「セリー、私はあなたを買いたい。私のところに来てくれる?」
「ジュン様、奴隷にそのようなことは…」
やっぱりロランスさんが止めようとしてくる。
「ごめん、ロランスさん、私はセリーがどうしたいか知りたいの。」
そう言うとロランスさんは引き下がった。やはり僕が奴隷の同意は必要ないことを知らないと思ったらしく、伝えたかっただけの親切心だったようだ。
「ジュン様、私はジュン様に買っていただきたいです!」
「わかった、じゃあこれからよろしくね!」
日曜日の方が平日より時間があるはずなのに、なぜかギリギリになってしまいました。




