奴隷商人だったようです
荷馬車に近付いてみると、数人が荷馬車の周りで戦っている。
どうやらあの荷馬車は襲われているようだ。
目撃してしまったからには見捨てるわけにはいかない。
もし、見捨てたらどうなったか気になって夜に眠れなくなるかもしれない。
おそらく戦っているのは盗賊と護衛だろう。
どちらも防具は同じように見えるので、どっちが護衛でどっちが盗賊かわからないな。
もう全員雷魔法で気絶させた方がいいか。
僕がそう思った時、一人の男が戦っていた相手を倒し、仲間に加勢しようとしたのだろう、周りを見渡した時に僕と目が合った。
「なんでこんなところに子供が!?
いや、そんなことより早く逃げろ!!盗賊だ!!」
僕にそう言い放って、別の男に切りかかった。
あの人は護衛のようだ。
あの人だけ残して、あとは全員気絶させよう。
あの護衛の人に仲間を聞いて、それ以外は縄かなにかで縛っておけば大丈夫だ。
それに下手に護衛だと思う数人を残すと、残した人と戦っていた人が切られるかもしれない。
盗賊でも別にギリギリの戦いというわけでもないから殺すのはかわいそうだ。
「サンダー!」
僕が雷魔法を使うと、僕に逃げろと言った人以外がバタバタと倒れた。
「な、なんだ!?何が起きた!?
おい!しっかりしろ!!」
護衛の人が近くに倒れた男に駆け寄って、体を揺らしているが、男は起きない。
当然だ、気絶しなかったり、すぐに起きたら面倒なので、それなりに強めに魔法を使った。
「おい、嬢ちゃん、まさかとは思うが嬢ちゃんがこれをやったのか?」
護衛の男が、仲間を揺らしても起きないことが分かって、僕に駆け寄ってきた。
「うん、そうだよ。それより早く仲間の人以外を捕まえた方がいいんじゃない?」
「あ、あぁ、そうだな。色々聞きたいことがあるし、助けてくれた礼もしたい。
俺達の雇い主が荷馬車にいるからついてきてくれ。」
男はそう言うと、荷馬車の方に歩き出した。僕それについていく。
「俺はサリムだ。お嬢ちゃんの名前を教えてくれないか?」
前を行くこの人はサリムさんと言うらしい。後ろを振り返らずにそう言った。
「私はジュンだよ。よろしくね、サリムさん。」
「あぁ。それにしてもこんなちっちゃい女の子に助けられるとはな…」
そう言って自嘲げに笑った。
「サリムさん、盗賊は追い払えましたか?」
荷馬車からひょろひょろした男が出てきた。
この人がサリムさん達の雇い主だろう。
「いや、それが、俺達が苦戦していたところをこのジュンが助けてくれたんだ。」
「ほぅ、このお嬢さんが…。」
そう言って僕のことをジロジロ見てくる。
「なんですか?」
こういう視線は少し不愉快だ。
「いえいえ、すいません。その若さでお強いのですね。
自己紹介が遅れました。私、奴隷商をしております、ロランスと申します。
助けていただきありがとうございました。」
そう言って頭を下げた。
「冒険者のジュンです。たまたま通りかかっただけなので。それに護衛の方たちも一緒に気絶させてしまいましたし。」
「面識がない限り、戦っている最中ではどちらが盗賊か分からないのは仕方ありませんよ。」
「やっぱり盗賊も護衛も同じような装備で見た目では区別できないんですか?」
「はい、どちらにも知った顔がない場合は基本的に区別できませんね。」
やっぱりそうなのか。
「でもまぁ、後で気絶させてしまった護衛の人たちには謝っておきますね。」
「そうですか、優しいのですね。
冒険者の中には盗賊と間違えて怪我を負わせてしまっても、謝らないどころか助けたんだから礼を寄越せ、という者もいるのですよ。」
なんてやつだ。僕がその雇い主だったら警察のような組織に突き出してやりたい。
しばらくロランスさんと話していると、一人の男が近付いてきた。
「ロランスさん、無事だったか、よかった。
どうも気絶してしまったようだが、そちらのお嬢さんが助けてくれたと聞いたが?」
護衛の一人か。やけに目が覚めるのが早いな。
まだあまり雷魔法には慣れていないので、加減を間違えたのかもしれない。
「無事ですよ、ありがとうございます。それと、直接見たわけではありませんが、こちらのジュン様が全員を気絶させたと聞きました。」
「本当なのか?」
僕に聞いてきたので、頷いた。
「そうか、すまない助かった、礼を言う。」
と頭を下げてきた。
「それよりも気絶させてすいません、どこか違和感とかありませんか?」
「あぁ、大丈夫だ。それに護衛と盗賊の区別なんかつかなかったんだろう?だったら嬢ちゃんが謝ることなんかないさ。」
と、そう言ってくれた。
「他の人はまだ気絶したままなんですか?」
「あぁ、サリムと俺以外は全員気絶したままだよ、起きる気配もない。サリムは盗賊を縄で縛っていたが、俺は確認と礼を言いたくてな。
まぁそれも済んだし、1人じゃ大変だと思うからサリムを手伝ってくるよ。」
そう言って男は去っていった。
やっぱり加減は間違えてはいなかったようだ。ならなんであの人だけ目覚めたんだろうか。
まぁ個人差がある、ということにしておこう。
「ロランスさん、この荷馬車ってこれからどこに行く予定なんですか?」
「メイガンですよ。となりの街まで少し用がありまして、その帰りに盗賊に襲われたのです。
ジュン様はどちらに?」
「私もメイガンです。」
「そうですか、ではこのまま護衛として、この荷馬車と行ってもらえませんか?もちろん報酬は出しますし、それとは別に助けていただいたお礼もします。」
うーん、どうしようか。
私が1人で走った方がよっぽど早く着くけど、まぁそんなに急ぐ必要も無いし、街までの距離も遠くないからまぁいいか。
「わかりました、一緒に行きましょう。今日中に着きますよね?」
「よかった、ありがとうございます。ええ、おそらくはベットで寝れますよ。」
よかった、今日は野宿する予定だ、などと言い出したら1人で走って帰っていたところだった。
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