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鳥人戯画  作者: 吾子 要
5/11

自殺講座その四

帰宅路・13時05分


まだ日が高いので、散歩がてら回り道をして帰る。


ここら辺一帯は田んぼと民家ばかりある狛下と、スーパーマーケットやコンビニなどがあり少し栄えている狛上に分けられる。その狛下と狛上のちょうど中間部分に存在するのが僕たちの通う狛中第一高校というわけだ。なので生徒の住んでいる場所はどちらにも存在して、どちらに住んでいるかで学校での立場が決まったりする。今思えばくだらないことだと思えるけど、昔は狛下に住んでいることがコンプレックスだった。だから中学校では狛上に住んでいるように無理に振舞っていた。

しかし、高校に上がって柴咲に出会ってから少し変わった。柴咲は狛上なんかとは比べ物にならないくらいの都会からこちらに引っ越してきたらしく、狛上、狛下どちらも田舎に見えるらしい。そんな考え方を持っていた奴と出会ったら、今までの気苦労が恥ずかしくなってきて狛上に住んでいるよう振る舞うことはやめてしまった。

人が虫の争いなんでくだらないと思うのと同じ考えなんだろう。

しかし逆にこんな考えを狛下住民は珍しいらしく、浮いてしまう。狛下住民からは狛上の奴らと仲良くしよってと思われ、狛上住民からは田舎者が調子に乗っていると思われているらしい。だからクラスで本当に仲良くしているのは柴咲くらいだろう。他のクラスメートはどうにもぎこちない関係になってしまった。

色々なことを考えながら歩くこと10分ほど、ある広場の前を通りかかる。ここの広場には子供の頃よく来て近所の子と遊んでいた。でも近所の友達はみんなしていつの間にかいなくなってしまった。

ここら一帯の人は子供がある程度育つと都会の方へと移住してしまうと母に聞かされた。だから僕には近所の友達というか幼馴染は同じクラスの北条くらいしかいない。

北条とは子供の頃はよく遊ぶほど仲が良くて、子供の時に「わたしとおるくんのおヨメさんになる〜」って言われた気がするのだが、いつの日にか覚えていないが疎遠になってしまって、今では1日に少し会話をする程度だ。なぜなのか思い出せない。

僕は何故か昔のことをあまり覚えていない。普通、4歳くらいからの記憶が断片的に残っているものだと思うが、僕にはそれがない。10歳くらいの時からしか記憶がない。

それのせいかわからないがこの広場の近くに来るといつも脳が抑えられるような痛みがする。きっと、僕が昔を思い出せないのと関係があると思うが、これといった原因はわからない。

色々と考えているうちに家が見えてきた。我が家は二階建て、屋根は瓦、玄関は引き戸、側面には縁側といった感じでザ・和風建築という言葉がよく似合う家だ。しかし、それも外観だけで中身はリフォームされていて洋室なんかもあったりする。言ってみればガッカリ和風建築だ。そのことをを祖父に言ってみたことがあるがお前たち子供のためにリフォームしたんだと怒られた。

玄関の前まで行き引き戸を引く。鍵が掛かっていない。ガバガバである。

「ただいまー」靴を脱ぎながら言うと

「あらおかえりなさい、早いわね」母が居間から顔を出し応える

「色々とあってね」今日起きた概要を伝える。

「大変じゃない自殺なんて、それに直接見ただなんてら大丈夫だった?」

「自殺が?大丈夫な訳ないよ、たぶんもう助からないんじゃないかな」

「ちがうわよ、あなたが大丈夫だったかって」

予想外の質問だった、

「僕は見ての通り大丈夫ですよ、ノー問題です」

柴咲の影響かエセ外国語がでてきた。

「ならいいわ。洗い物は台所に出しといてね」

やけにあっさりしてるなと思う反面、色々質問されずに済んだことは嬉しくもあった。


そういえば今日は夜に映画をやるようだ。


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