自殺講座その十
洋風な家の前・6月30日12時45分
大きな洋風の二階建ての家。白い屋根に大きな庭。よく手入れがされているのだろう、見事な花が咲いている。俗に言うガーデニングというものだろう。さらに、ガレージには外車と思わしき車が停まっている。
この大きな家が例の女子生徒の家だそうだ。しかし、いいものだろうか?友達が自殺する姿を見たばかりの人にその時の事について聞くなんて許されることだろうか。家の前に来て急に可哀想に思えてきた。
「あの、ケリーさんやはり日を改め……」
「行くわよプリチー透、インターホンはどこかしら?」
あぁ、この金髪はやる気だ。操作魂に火がついたのか、鼻をフンフン鳴らしながらインターホンを探している。
仕方ない、ついていこう。僕が勝手についてきたのだから何も言う権利はないか。
「あったわ!行くわよ……ポチッとな」
ピーンポーン
よく響くインターホンだ。それもそうか、こんな田舎だもんな。
「はい、どちら様でしょうか?」お母さんと思わしき人がでた。
「私警察のものでございますが、娘さんは今いらっしゃるでしょうか?」丁寧な日本語である。
「あら、警察の方でしたか。今部屋にいますがなんのご用でしょう」
「娘さんにお話をお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ええ、結構ですよ。今ドアを開けますね」
案外あっさりと了承が出た。こんな怪しい人を通すものだろうか。それに娘が大変な思いをしたばかりだというのに。
ガチャ、ガチャ、ガチャリ
鍵が3回開く音がする。
「どうぞどうぞ、お上がりください。部屋に案内しますね」と40才前後の品格の良さそうな女性が姿を表す。こちらにどうぞと言わんばかりにドアを開けて待っているので、2人とも急いで玄関に上がらせてもらった。
「こちらです」と母親が部屋へと案内してくれる。
可愛らしいドアの前に着く。
「薫〜、警察の方がいらしたわよ〜」と部屋の前で呼びかけて、母親がドアを開けた。中には事件時屋上を見上げていた女子生徒がいた。
女子生徒の部屋・6月30日13時03分
母親が
「それではごゆっくり」と言いながら部屋からいなくなった後、ケリーと僕は自己紹介をした。
そして現在ケリーが質問を始めた。
「あなたの名前は薫さんでいいのかな?」
「はい……」薫さんは静かに答える。
やはりショックが大きいのだろう。心なしか体調が悪そうに見える。
そんなことお構いなしにケリーは質問を続ける。
「あなたは華滝さんの親しい友達だったのね?」
「はい……」
「じゃあ、あなたしか知らない秘密もあったかもしれないわね?」
「はい……」
いったいケリーはなにを聞き出そうとしているのだろうか。率直に齟齬のある名前について聞けばいいのだろうに。
「あなたは彼女の『翼』を見たことがある?」
「え……?」
なんだかまた、嫌な感じがした。




