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第28話:永久氷壁のセキュリティと、氷上の誓い

「――これで国境全域の防衛インフラにおける『動線最適化』の設計図は完成です」


冥府の国の最前線、吹雪の吹き荒れる国境の砦の展望台。


私は手元にある巨大な羊皮紙の図面をトントンと整え、満足げに息を吐いた。


私の身体は今、アルカイド陛下の分厚い毛皮の外套(コート)によって後ろからすっぽりと包み込まれており、物理的に連結されたデスクの時と変わらない至近距離から、彼の力強く熱い体温が伝わってきた。

祖国のクズ残党たちの自動検挙を終えた私は、二度とあのような「イレギュラーな不法侵入(ノイズ)」が発生しないよう、防衛魔術の配置を完璧なロジックで再構築したのだ。


「見事な防壁だな、ヒラリー」


アルカイド陛下が私の肩に顎を乗せるようにして図面を見下ろし、低く心地よい声を響かせた。彼の銀色の髪が私の頬を掠め、心地よい緊張感が走る。


サファイアブルーの瞳は図面ではなく、私という存在そのものを狂おしいほどの愛着で見つめていた。

「だが、まだ足りない。お前が二度とあのような無能どもの汚らわしいデータ(生存報告)を目にしなくて済むよう、私からも最終的な『セキュリティロック』を施させろ」


陛下がそう呟いた瞬間、彼の身体から地響きのような凄まじい魔力が解き放たれた。


国境の山脈沿いに、天を衝くほどの巨大で強固な【永久氷壁】が一瞬にして隆起していく。


それは陛下の圧倒的な絶対零度の魔力と、私の左手薬指に嵌められたサファイアの指輪の魔力インデックスが完全に同調して生み出された、世界最強の防衛システムだった。


「な……ッ!?」


砦に整列していた数千人の冥府軍の騎士や魔術師たちが、その神業のような光景に驚愕し、一斉にその場に静まり返った。


アルカイド陛下は騒然とする軍勢の前にゆっくりと歩み出ると、私の右手を引き、衆目の中であるにもかかわらず、その長い足を折って私の前に跪いたのだ。


氷のように冷たい床の上に、世界最強の皇帝が、一人の元事務職である私の前に傅いている。


彼は私のサファイアの指輪に、誓いを立てるようにそっとその薄い唇を押し当てた。その大きな手は、私という至宝を永遠に手放したくないという情熱的な衝動で微かに震えている。


「諸君、聞くがいい」


陛下は跪いた姿勢のまま、全軍に向けて冷酷なまでに手際よく、しかし確固たる独占欲に満ちた声を響かせた。


「この氷壁は、我が専属正妃(予定)ヒラリーの知性が生み出した完璧な境界線だ。そして私は、彼女の美しい知性と存在を生涯守り抜き、誰の手にも触れさせないとここに誓う。彼女こそが、我が冥府の国のすべての理であり、私の世界の中心だ」


「「「おおおおおっ……! ヒラリー様万歳! 皇帝陛下万歳!!」」」


地を揺るがすような全軍の大歓声が響き渡る。


背後では魔術師長たちが「陛下が公衆の面前で限界突破のプロポーズを……!」「ごちそうさまです!」と涙ながらに拍手を送っていた。


「ふふ、これほど強固なセキュリティに守られては、バックオフィスとしてもこれ以上の安心はありませんね、旦那様」


私が全軍の熱気の中で、彼を優しく見つめて微笑むと、アルカイド陛下はハッと目を見張り、次の瞬間には顔から耳の裏までを真っ赤に染め上げた。


数千人の部下の前だというのに、皇帝の鉄面皮(ポーカーフェイス)は私の「旦那様」の5(五)文字によって再び完全にサーバーダウンしてしまったらしい。


「お前は……大勢の前で、なんという破壊力の仕様変更(愛称)を……っ」


陛下は照れ隠しをするように、私の腰を強引に抱きよせ(抱き寄せ)、そのまま全軍の視線から私を隠すようにマントで包み込み、自分の胸元へ深く深くホールドしてきた。


彼の激しく脈打つ心音が、心地よい冷気と共に私の全身へと甘く伝ってくる。


前世の孤独なオフィスでは、どれほど組織の基盤を冷徹に支え続けても、誰の目にも留まらないまま、ただ無機質にすり減らされるだけだった。


なのにこの世界で最強の男は、公の場で全軍の前でおのれの膝を突き、私の知性を全肯定し、私のわずかな微笑みと愛称一つで理性を完璧にメルト(融解)させてくれている。


胸の奥が、これ以上ないほど甘い安心感と、強固な特別扱いの熱で満たされていく。


「さあ、旦那様。全軍がこちらを見ていますよ。このまま私たちの歓迎式(結婚式)へ向けて、最優先タスクを執行しましょうね」


「あぁ……。即座に承認(エンター)だ。二度と差し戻しは認めん」


私たちは全軍の祝福の嵐に包まれながら、世界一過保護でホワイトな未来へ向かって、幸せな生涯契約のタイムラインを歩み続けるのだった――。




最後までお読みいただき、ありがとうございます!


「ヒラリーの事務職ロジックが爽快だった!」「アルカイド陛下の赤面フリーズがもっと見たい!」と思ってくださったら、画面の下にある【ブックマーク登録】や、評価の星【★★★★★】をポチッと押して応援していただけると、毎日の執筆の大きな励みになります。


毎日定時で最新話をデプロイ(更新)していきますので、明日もまた、この過保護でホワイトな執務室でお会いしましょう!(ビジネススマイル)


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