1-2-11 エヴァとカリナ
「決着をつけるわよ」とカリナが言った。
エヴァはそれに静かに頷く。彼女達は巨大な蛇を倒し、協力しあって神殿の門を超えた。だが、ここから先はもう共闘ではない。天秤の鎖を手に入れるのはどちらか一人——それがこの闘いの意味だ。
「これで決めるわよ」とカリナが、足元に転がっていた石ころを拾い上げた。
「ええ、お互いに最善を尽くしましょう」とエヴァが静かに答えた。
神殿の中、二人の視線が交錯する。天秤の鎖が奉納された神殿は、かすかな風が吹き抜けるだけの静寂に包まれていた。だがその静けさの裏に、今にも弾けそうな緊張感が漂っている。
カリナは石ころを握りしめ、宙に放り投げた。石が高く舞い上がり、やがてゆっくりと落ちてくる。地面に触れた瞬間、戦いが始まる。
石が空中で弧を描く。
カリナの視線が鋭くなる。
エヴァの指先に微かな光が灯る。
そして――石が地面に落ちた。
「行くわよ!」
カリナはその瞬間、地面を蹴ってエヴァに向かって突進した。力強くも素早い動きで、彼女の拳がエヴァの方へ一直線に迫る。だがエヴァは慌てず、冷静に基礎制御魔法を展開し、カリナの攻撃を迎え撃つ。
「ふっ、そんな攻撃じゃ通じないわ!」
エヴァは魔法で防御壁を作り、カリナの拳を受け止めた。しかし、その強烈な力に壁が震える。
「さすがね、だけどこれでどう?」
カリナは瞬時に体を回転させ、足を使った蹴りを繰り出す。防御壁を崩して彼女の蹴りがエヴァに迫るが、エヴァは軽やかに後退して距離を取った。
「直感だけで動く戦い方…強力ね。でも、私には制御の力があるわ」
エヴァの目が鋭く光り、手を振りかざすと、地面に魔法陣が浮かび上がった。魔法陣が輝き、彼女はその力を使ってカリナの動きを封じようとする。地面が急に軋み、カリナの足元に魔力が集中する。
「足元が…くっ!」
カリナは一瞬バランスを崩すが、持ち前の直感でその異変を察知し、素早く跳ね上がった。彼女の体はまるで獣のような俊敏さで宙を舞い、エヴァの魔法の範囲外へと抜け出す。
「逃がさないわ!」
エヴァはさらに手を動かし、鋭い魔力の矢をカリナに向かって放った。だがカリナは素早く身を翻し、その一撃を紙一重でかわす。そして地面に着地するや否や、再びエヴァに向かって突進してきた。
「直感は負けないんだから!」
カリナの素早い動きに、エヴァは再び防御を固める。彼女はその直前、カリナの動きにわずかな癖があることに気づいた。
「見切ったわ」
エヴァは冷静に魔法を調整し、カリナの攻撃が来る瞬間に、魔法陣を使って防御を展開した。カリナの拳がエヴァの防御に当たり、強烈な衝撃音が響く。しかし、エヴァの防御は崩れなかった。
「くそっ、やるわね!」
カリナは後ろに飛び退き、距離を取る。彼女はエヴァの防御が予想以上に堅いことを悟り、少し息を整える。
「あなたの攻撃は力強いけど、読めるわ」とエヴァは冷静に言った。
「読めるからって、倒せるわけじゃない!」カリナは気迫を込めて反論する。
その瞬間、カリナの体がまた動き出した。彼女の直感がエヴァの次の動きを予測し、再び攻撃を仕掛ける。エヴァはそれを読みつつも、カリナのスピードに追いつけない一瞬があった。
「速い…!」
カリナの攻撃がエヴァの防御を突破し、彼女の肩をかすめる。エヴァは痛みを感じながらも、すぐに体勢を立て直した。
「まだ…終わってないわ」
エヴァは目を閉じ、深く息を吸い込んだ。そして再び目を開けると、彼女の指先には新たな魔法の光が宿っていた。
「行くわよ!」
エヴァの手から放たれた魔法は、鋭い光の帯となってカリナに向かって飛んだ。それを見たカリナは、またも直感でその攻撃を避けようとするが、今度は少し遅れてしまった。
「しまった…!」
カリナは光の帯を受け、後方に吹き飛ばされる。しかし彼女はすぐに立ち上がり、負けじと前に進もうとする。
「まだ負けない!」
カリナの強い意志が感じられる言葉に、エヴァは微笑んだ。彼女もまた、負けるつもりはない。
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