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1-2-10 鎖の門番

「秤神の神殿」を目の前に、エヴァとカリナは鋭い視線を交わしながら、荒い息を整えた。二人が渡ってきた足場――浮遊するパネル群は遥か後ろに広がっており、深い縦穴を見下ろすと今にも吸い込まれそうな感覚を覚える。だが、神殿の前に立ちふさがるのは、それ以上に厄介な存在だった。


「なんなの、あれ……」


カリナが低くつぶやく。二人の前に現れたのは、巨大な蛇のような門番だった。その全長は数十メートルにも及び、鋼鉄のような黒光りする鱗が鎖を思わせる。蛇の頭は神殿の門の片側にあり、尻尾は反対側に位置していた。そして、それらはまるで鎖鎌のように、互いに連動して動く。


「頭と尻尾……両方同時に来るわけね」とエヴァが冷静に状況を分析した。


巨大な蛇がゆっくりと動き出し、鎖の音のように金属が擦れる音が響き渡る。そして、次の瞬間、頭と尻尾が同時に二人に向かって突進してきた。エヴァは直感的にカリナへ向けて叫ぶ。


「避けて!」


カリナは言われるがままに後ろに飛び退き、エヴァも右に転がるように回避する。蛇の頭と尻尾は、重さを伴って地面に激突し、瞬時に再び攻撃態勢に入った。


「早くしないと、これ永遠に繰り返すわよ!」カリナが叫ぶ。


エヴァはすぐに目を光らせ、蛇の動きに目を凝らす。鎖のように繋がっている蛇の体は、バランスを崩すと動きが鈍る。しかし、今のところどの部分も完璧に均衡が取れている。頭と尻尾がそれぞれ反対方向に動くことで、絶妙なバランスを保ちながら猛攻を繰り出していた。


「バランスを崩すしかない……!」エヴァは思案にふける。だが、一人では不可能だ。自分の魔法だけでは巨大な蛇の攻撃に対抗するのは無理がある。しかし、カリナなら――


「カリナ! 同時に攻撃しよう! 私が尻尾を引きつけるから、あんたは頭を!」


「冗談じゃないわ! なんであんたに指示されなきゃなんないのよ!」カリナは反発するが、エヴァの言葉が的を射ていることを認めざるを得なかった。「……わかったわよ。で、どうすればいいの?」


「行くわよ!」エヴァは自分の手の中に魔法陣を描き出し、強力なエネルギーを尻尾に向けて放った。同時に、カリナは目を細め、素早く頭の方向へ突進した。


蛇の尻尾はエヴァの攻撃に反応して動きを止め、一瞬のバランス崩壊が生じた。まるで機械が一時的に壊れたかのように、頭も遅れて反応する。その瞬間、カリナは渾身の力を込めて、蛇の頭部に一撃を叩き込んだ。


「今だ!」エヴァが叫ぶと同時に、二人は一斉に蛇の体を攻め立てた。頭と尻尾が同時に反応できなくなり、蛇は均衡を失った。


その瞬間、蛇は大きなうなり声を上げ、その巨大な体が地面に崩れ落ちた。まるで鎖がちぎれたかのように、蛇は動かなくなり、その体はゆっくりと消えていった。


「やった……」エヴァが息を吐き、カリナも肩で息をしながら頷いた。


「まさか、あんたと協力するなんてね」カリナは不満げに言うが、その表情は少しほころんでいた。「ま、でも悪くなかったわ」


エヴァも同じく微笑む。「そうね、たまには誰かと組むのも悪くないかも」


二人は互いに視線を交わし、そして神殿の奥へと足を踏み入れた。だが、彼女たちはこの先待ち受ける試練をまだ知らない。天秤の鎖が待つその場所で、再び激しい戦いが始まるのだ。

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