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1-2-3 蠍神の神殿

灼熱の太陽が容赦なく砂漠を照りつける中、次期女王選定戦の挑戦者たちは、神殿を目指して果てしない砂漠を進んでいた。天蠍の弓が奉納されている「蠍神の神殿」までの道は厳しく、砂漠の中を丸二日歩かなければならなかった。熱と疲労で足を止める者が次々と現れ、彼らの脱落は砂漠の砂に吸い込まれるように消えていった。


「これ以上は無理だ……」


ある少女が砂の上に崩れ落ち、息も絶え絶えに地面に倒れ込んだ。目の前に広がるのはどこまでも続く砂漠。見渡す限り水も影もなく、助けを求める声は風にかき消されるだけだった。乾いた喉から漏れる弱々しい声はもはや誰にも届かない。


ふと、その少女が頭を上げると、遠くに奇妙な光景が見えた。砂漠の地平線に沿って、まるで蜃気楼のように現れたのは、神聖な教団の神輿だった。威厳を放ちながらゆっくりと進むその姿には、教団の象徴である金色の装飾が施され、幾人もの信者たちがそれを支えている。


「あれは……教団……?」


少女の目に映ったその光景は、夢か現実か判別がつかないほど異様なものだった。倒れたままの彼女は、次第に意識を手放していく。


教団の神輿は、砂漠の過酷な環境にも動じることなく進んでいた。その中に座していたのは、教団の支援を受けるヴァイオレット・リンドグリーンだった。彼女は、森の中で育った者としては異質な光景の中にあっても、涼やかな表情を崩さない。砂漠の風は彼女にとって異質だが、教団の力で守られた彼女は、その暑さを感じることさえなかった。


「神殿まで、あと少し……」


ヴァイは神輿の中で静かに呟いた。彼女の目指すのは天蠍の弓。弓術に優れ、森の守護者として鍛え上げられた自分には、この弓が最もふさわしいと信じていた。教団からの支援は心強いものだったが、彼女の中にはそれだけではなく、自分の力で勝ち取りたいという強い意志があった。


教団の神輿がゆっくりと進む中、ヴァイの耳に微かな風の音が届いた。風は不自然な速さで彼女に近づいていた。


「……誰?」


彼女が神輿から降り立った瞬間、風の塊が砂漠の上を駆け抜け、彼女に追いついてきた。その正体は、風を操る才能を持つ少女、セレナーディア・アークウィングだった。セレナは汗に濡れた顔をぬぐいながらも、疲れた様子は見せずに立っていた。


「ようやく追いついた……」

セレナは荒い息をつきながらも、ヴァイに向けて微笑んだ。


「あなたも天蠍の弓を狙っているのね」ヴァイは冷静に名を告げる。「……私はヴァイ。森の守り手を継ぐ者」


その声には、風に吹かれる木々のような静けさと芯の強さがあった。


向かいに立つ金髪の少女は、ゆっくりと微笑み、帽子のつばを上げた。


「セレナ。風の流れに導かれて、ここに来た者よ」


一瞬だけ交差した視線が、まるで互いの覚悟を読み取るように絡み合う。


二人はしばらく互いを見つめた後、無言のまま蠍神の神殿を目指して歩き出した。その歩みはそれぞれ違う道を辿ってきた二人が、ここで初めて交差する瞬間でもあった。


蠍神の神殿は砂漠の中心に静かに佇んでいた。巨大な石造りの建物は、長い年月を経てなおもその壮大さを失っていなかった。入口に立ちはだかるのは、神殿の守護者たる巨大な石像。その姿は異様で、まるで生きているかのように厳かだった。


「ここが……」

ヴァイが呟くと、セレナもその石像を見上げていた。


「私たちが最初の到達者者みたいね」

セレナは一息つき、次の瞬間に何かが起こるのを予感していた。


二人が神殿の前に立つと、突如として地響きが起こった。石像がゆっくりと動き出し、その目が光を放つ。


「動いた……!」

セレナは驚きの声を上げた。神殿の門番である石像は、天蠍の弓を狙う者たちを試すための存在だった。彼らが弓に辿り着くためには、この石像を倒すか、あるいは避けて進む必要があった。


「ここで立ち止まるわけにはいかない」

ヴァイは静かに言い、セレナも同意するように頷いた。二人は互いに視線を交わし、目の前に立ちはだかる試練に挑もうと気を引き締めた。


神殿の前に立つ二人。試練はまだ始まったばかりだったが、その決意は揺るがなかった。

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