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1-1-27 試練への招待状

サーラは朝、ドアの前に置かれていた一通の封筒に気付いた。

見慣れない紋章が刻まれた、重厚な封蝋付きの封筒──それは教団から届いた、魔法の招待状だった。


そっと指先で触れた瞬間、封筒の表面に淡い青白い光がふわりと浮かび上がる。

光は静かに広がり、まるで眠っていた魔法が目を覚ますかのように封印を解き始めた。


その様子を、ネフィリスが隣で興味深げに眺めている。

彼は尻尾をゆっくり揺らしながら、楽しそうに口元を吊り上げた。


「さて、ついに来たね」


サーラはわずかに緊張を覚えながら封筒を開く。

中から現れたのは、精巧に描かれた地図と、一冊の案内書だった。


案内書には、次期女王選定戦の予備選に参加するための詳細が、整然と記されている。


「予備選に参加する三百人が選ばれ、与えられた一か月の間に、伝説の十二のデバイスのいずれかを手に入れることが勝利条件か……」


サーラは静かに読み上げながら、机の上に地図を広げた。

そこには、教団が管理している十二のデバイスが奉納されている場所が、はっきりと示されている。


「奉納場所はそれぞれ違うみたい」


地図には山脈や森、いくつもの街道が細かく描き込まれていた。

奉納場所は都市の遺跡、孤島の神殿、雪山の奥など様々で、どれも簡単に辿り着けそうにはない。


「……思ったより、遠い場所ばかりね」


サーラは思わず息をつきながら、案内書をめくる。


「この十二のデバイスについても細かい説明がある」


それぞれのデバイスには独自の特性があり、どれも強力な力を秘めていた。

だが、その人気には明らかに差が出そうだということも、サーラにはすぐに想像できた。


「まあ、派手な武器は人気だろうね」

ネフィリスが首をすくめる。

「こういう戦いでは、みんな剣とか槍に飛びつくものさ」


「攻撃系のデバイスは、倍率が高そうね……」


三百人。

その数字を改めて考えると、胸の奥が少しだけざわついた。


それぞれが魔法に自信のある者たちだ。その全員が、同じ神器を狙う可能性もある。

激しい競争になることは避けられないだろう。


ネフィリスが肩越しに地図を覗き込み、興味深げに尻尾を揺らす。


「さあ、どれを狙う?

どのデバイスが君に合っているのか、よく考えた方がいい」


サーラは地図を見つめながら、もう一度デバイスの説明に目を通した。

どれも一長一短があり、自分に本当に向いているものを見極めるのは簡単ではない。


「どうしよう……」


サーラは小さく呟きながら、地図の上を指先でなぞる。


「焦ることはない。君には時間があるし、君ならきっと自分に最適な選択を見つけられるさ」


ネフィリスは落ち着いた声でそう言った。


その言葉を聞きながら、サーラは再び地図に視線を落とす。

不思議なことに、眺めているうちに胸の奥で少しずつ気持ちが整っていくのを感じていた。


「まずは動かないと始まらない。

地図を睨んでいても神器は飛んでこないからね。

さて、どこを目指す?」


ネフィリスが問いかける。


だがサーラはすぐには答えず、ただ静かに地図を見つめ続けた。


心の奥では、すでに一つの選択肢がぼんやりと浮かび始めている。

しかし、それを言葉にするには、もう少しだけ時間が必要だった。


サーラはゆっくりと深呼吸し、自分の決意を確かめるように地図を丁寧に畳む。


これから始まる一か月──

その先には、きっと長い戦いが待っている。


だが不思議と、恐れよりも先に胸に広がったのは、静かな高鳴りだった。


第二章に続きます。

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