大罪
真奈さん視点です。
私は今、ドアスコープの先に映る光景に釘付けになっている。
決して私は不審者ではない。
契約したアパートの部屋のドアスコープを覗いているだけだ。
そして、覗いている部屋の玄関では二人の女の子がキスをしている。
従姉妹と、その親友だ。
バックを部屋に忘れてすぐ戻ってきたのだが、部屋の中から話し声が聞こえていたので、とりあえずスコープを覗いてみたのだ。
スコープカバーが付いていたことを思い出し、何も映らないと思ったが、覗いてみると部屋の中を見ることができた。
私が来たときに動かして、もとに戻し忘れたのだろう。
だが、そんなことはどうでもいい。
二週間ほど前に来た時、二人は顔を赤らめて気まずそうにしていたが、まさかここまで関係が進んでいたとは。
「ベット一つにして正解だったな……」
私は二人に聞こえないよう小さく呟いた。
スコープの先では、二人は何回もキスを繰り返している。
二人の幸せな時間を邪魔しないためにも、バックはスマホで連絡をしてから取りに来ようと思ったが、生憎スマホもバックの中だ。
インターホンを押すしかない。
ボタンを押すという簡単な行為が、まるで大罪のように感じられる。
押せないじゃないか……。
──あれ?
二人がキスをしている中私が帰ってくれば、また気まずそうにする二人のかわいい姿が見れるのではないか?
気づけば私は、目の前にあるボタンを押していた。
人は、欲で簡単に大罪を犯すんだな……。




