真奈さんの友達
「瑠海ちゃんやっほー」
「こんばんは、葵さん」
ホールに出てすぐに、声をかけられた。
「楓ちゃんはキッチン?」
「はい、今日は空いてるので」
「バイトもだいぶ慣れたみたいだね。あ、注文いいかな」
「大丈夫です、いつものコーヒーですか?」
「うん」
このカフェでバイトを始めて一ヶ月ほど経つ。
だんだん仕事内容にも慣れてきた。
葵さんは真奈さんの友人で、このカフェの常連だ。
ウルフカットの綺麗な髪が目に留まる。
葵さんの注文を受けてキッチンに伝える。
しばらくして、真奈さんがトレイにコーヒーをのせてホールに出てきた。
「はい、葵」
「ありがとう、真奈ちゃん」
「今日ちょっと遅いね。ラストオーダーギリギリだよ」
「仕事が長引いちゃって。でも真奈ちゃんに会いたくて来ちゃった」
真奈さんは「はいはい」と笑って返事をする。
「私、キッチンの方戻りましょうか?」
「ホール出たばっかだけどごめんね。よろしく」
「わかりました」
「楓」
キッチンに戻って、楓に声をかける。
「あれ?瑠海、早かったね」
「真奈さんがホール出るから戻ってきた」
「あ、葵さん来たから?」
「うん」
「真奈さん達って、高校生からの友達なんだっけ」
「仲良いよね」
葵さんは、カフェが空いている日はほとんど来ているらしい。
実際、私達がバイトをしている日はほぼ必ず見かけている。
オーダーもないので、二人で話をしながら掃除をしていると、真奈さんがホールから戻ってきた。
「お二人さん、今日もう閉めちゃおうと思うから、お疲れ様」
「わかりました」
「支度してホールで待っててね。まかない作るから」
制服から着替えてホールに出ると、葵さんがいた。
「あれ、葵さん帰らないんですか?」
「ん?あぁ、今日は真奈ちゃんと一緒に帰ろうと思ってねぇ」
私達は葵さんの席の手前に座る。
「お二人さん、今日はドリアだよ」
すぐに、真奈さんがそう言ってキッチンから出てきた。
私達の前にプレートを置いて、そのまま葵さんの隣に座る。
「真奈さん達って、家近いんですか?今日一緒に帰るって言ってましたけど」
「あぁ言ってなかったけ、私達ルームシェアしてるんだよ」
楓の問いに真奈さんが答える。
初耳だ。
「真奈ちゃん、ルームシェアじゃなくて同棲でしょ?付き合ってるんだから」
「!?」
「そうなんですか!?」
つい大きい声が出てしまった。
「う、うん」
「真奈ちゃん、二人になんも言ってなかったの?」
「いや、別に言うほどの事でもないかなって」
確かに、葵さんとは高校生からの付き合いだとは言っていた。勝手に友人としてだと思っていたが、まさか恋人だったとは。
「どっちから告白したんですかっ?」
楓が二人に尋ねる。
確かにとても気になる。
「私からだよぉ」
葵さんが答えた。
「お泊まり会した時にベットの上で『好きだよ』って言ったら、真奈ちゃん顔真っ赤にしっちゃってぇ。それでも小さい声で『私も』って言ってくれってぇ。もう可愛すぎてそのまま服──」
「葵それ以上は…」
葵さんが話しているのを顔を赤らめた真奈さんが遮った。
「……」
「ドリアいただきますね…」
冷めかけたドリアを一口すくって食べる。
クリーミーなベシャメルソースがおいしい。
私は隣の楓を横目に見る。
いつか同じようなことを楓にするのだろうか。




