番外編 「プロローグ」
番外編 「プロローグ」
ぼくの名前はダフィー・ノーツ。11歳。
毎朝8時半にバスに乗り、ミドルスクールに通っている、ごくごく普通の少年だ。……と自分では思っている。
趣味は映画鑑賞。特にアクションを主体としたジャンルが大好物。その中でも「ザ・サイレントシリーズ」は格別だ! B級の筋肉映画だとか言うヤツもいるけど、そいつらは何も分かってない。
練られたプロットに、ストレスを感じさせない場面構成。そしてウィットに富んだセリフの数々。ラブロマンスに、サスペンス、そしてブロマンスな要素だって備えた映画の中の映画だ! これをけなすコトは映画というジャンルそのものをバカにするようなモノだ。……と自分では思っている。
日課は学校の帰りに教会に寄り、清掃活動、福祉活動を行い、神父様の手助けをすること。ほぼ毎日のように通っているので、この教会内ではかなり名が知れ渡っていて、神父様や他の信者の方々から結構可愛がってもらってる。この前なんて「いずれ君は【楽園】に行けるだろう」と、これ以上ないお褒めの言葉をいただいた。「恐縮」という言葉を、その時初めて使ったよ。
ぼくは、弱きを助け、慈悲を持って全ての人間を包み込む、女神「メグジェシカ」の教えに深く感銘を受けている。
幼き少女のようなその姿に纏いし両翼は、希望・平和・慈愛といった、ポジティブな言葉を連想させてくれる神々しさに満ち、僕はその大理石の御身を拝見するたびに、メイプルシロップのぬるま湯に浸かるような気持ちになってしまう……。
でも……それと同時に、いつか見た「夢」のような……どこか懐かしささえ感じさせる、妙な記憶が引き出されてしまうことがある。
それは、ある少女の記憶。
僕が、弱いものイジメが大好きなクラスメイトに「ザ・サイレント 小説版」を取り上げられて困っていると、その少女は近くに転がっていた野球ボールを豪快なオーバースローでこっちに向けて投擲した。
そのレーザービームのようなストレート球は、見事にそのいじめっ子の股間に命中し、僕の宝物は無事に手中に戻った。
『なよなよしてないで! 少しはビシっと抵抗したら!? 』
少女は僕に対して怒鳴るようにしてそう言い、目の前から去ってしまった。
この記憶は、過去の実体験のリプレイなのか? それとも夢の中で作り上げた、僕の妄想なのか? どういうワケなのかそれがハッキリしない。
なぜなら、記憶の中の少女の顔は、いつ思い返しても「ボカシ」がかかっていて、鮮明に思い浮かべるコトが出来ないでいるからだ。
一体なぜ? そして、少女は何者なんだろう? 彼女の顔、そして名前は……?
謎ばかり深まっていくけど、僕はついつい思い込んでしまうんだ。ぼくみたいなモテない映画オタクがこしらえた想像にすぎないのかもしれないけど……
あの少女は、僕を助ける為に降臨してくれた……
「女神様」だったんじゃないか?
……と自分では思っている。
『電子で作られた世界より始まる、少年と少女の物語』
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