悩む悪魔
「で、地元が大変なんだって?」
それに対して飛鳥は懐から帰還要請の文を取り出して涼に見せる。
「ふむ。でも帰れないってのか?」
「うん。魔力がちいっとばかし足りないんだ。」
飛鳥は俺と母さんを再生して魔力を消費してしまっている。そのかわり地道に返却するという契約を結んでいる。
具体的には、俺は飛鳥の悪魔コアと接続されてエネルギーを融通し合うことによる。
おかげでやたらとお腹が空くのだ。
母さんはもっと稼ぐ為にフォームレスに飛んでいる。身体はここにあるのだけど。
「あとちょっとか、どれくらいで貯まるんだ」
俺は冷蔵庫からキュウリを取り出してキムチに浸けて食べながらそう聞く。
そういえば母さんがどういう状況なのか確認しておく必要もあるな。
「涼、そういうのをばっかり食べているんじゃない?」
俺は更に魚肉ソーセージの袋を破いているところだった。
飛鳥に視線を向けて若干ばつが悪そうにしつつ、たまにはいいんだと言い訳をする。
飛鳥はいつもプロテインとかそういうのばかりじゃん、とぶつぶつ言っている。
まあ加工食品よりはきっちりと料理したものの方がいいんだろうなーとは思っているがついついめんどくさくて。
話を濁すように飛鳥に魔力の蓄積具合について話すように促す。
「ウーン、あの移転装置に投入すべきは僕の魔力の3割程度なんだけど、今は2割くらいしかたまってないんだよ」
「時間的にはどのくらいか」
「地球時間で5年くらい……」
ああ、そうか。
俺と母さんに飛鳥が使った魔力が約8割で、今の状態で地道に返していってもやっとこさ5年後に3割まで回復するのね。
「じゃあもっと素早く稼ぐか」
「どうするつもりなの?」
「俺もフォームレスに行くのさ」
「僕は反対だな」
「何でよ」
「僕は魔力が貯まるまで帰れないんだ、つまり涼と離ればなれになる……それに危険だよ」
「俺がフォームレスでたっぷり魔力を稼げばお前も早く魔界に戻れる。それに母さんだけに苦労をかけるわけにはいかないさ」
ちなみに俺が母さんと同様に魔界で今の五倍稼げるなら、俺と母さんへの悪魔契約束縛も早く解ける。
俺は飛鳥を見る。
こいつとの契約が嫌という訳ではない。むしろこの関係はなんとも言えない心地よさがある。新しい世界も見ることが出来た。それに俺と母さんを助けてくれたのだ。そして飛鳥はその影響で苦しい立場にあるのだ。
熱い。熱いぜ。このシチュエーションに男気を感じるぜ!
「涼、不気味な顔してる」と飛鳥が指摘する。
「まあ、その計算だと俺の稼ぎが五倍になれば1年くらいで帰還の魔力くらいは貯まるだろ」
う~ん、と飛鳥は難色を示している。
「場合によってはお前の国を助ける活動をしてもいい。そうすればお前も国に顔がたつだろ
」
「なるほど~」
「でも寂しいからな~」と飛鳥は渋っている。なんというしぶちん。
「まあ、落ち着けよ。お前にとっても悪い話じゃないぜ……」俺は愉快そうな顔で提案する。




