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「ハジメさんが、どうしたんですか?」
心臓が冷えた。
なんだろう。
確かに、ハジメさんの友人と赤石さんの友人同士で仲が良いのは知ってる。
「あの日のことを問い詰められてな」
「それ、は……そうですか」
「すまない」
なぜ謝られたのかが解らない。
見たことのない赤石さんの表情に思わずドキリとするのは癖みたいなもの。
これが無くなるのは寂しいけれど、もう決めたことだ。
「ユキ」
「はい」
「ハジメは、お前のことが好きらしいな」
「は、い……言われました」
「そうか…」
事情がよく飲み込めない。
赤石さんはあの日のことをハジメさんに問い詰められた。
ハジメさんが私を好きだと言っているのも知っている。
それで何で、赤石さんがそんなに辛そうな顔をしているの。
「おれは、気づくのが遅すぎてお前を傷つけた」
それは違う。
そう言葉を発する前に唇が唇で塞がれた。
ぐるぐるぐるぐる。
ニューロンの接続が間に合わない。
唇が離れて、すぐ目の前に赤石さんの顔。
キリキリと胃が痛い。
「今更……何を、言うんですか」
「すまない」
「せっかく、せっかく私はっ、………」
「ユキ」
「もう、嫌っ…」
好きとか嫌いとかなんだとか。
赤石さんの腕を振りほどいて出口へと走る。
「うおっ!?…っユキ?」
「……すいません」
誰かにぶつかったのに言葉だけの謝罪をして廊下を走った。
(闇に崩れたラブソング)
逃げ出した私はどこに行くのか。




