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「……で、なんでここに来た?」
「私の家知られてるんですよ」
「べっつに相手はストーカーでもねぇだろ。働かない奴にいられても邪魔だ」
「じゃあ働く」
「今日はシフトいっぱいだ。帰れ」
ユキはアルバイトの中では1番長い期間働いている。
店長のおれが言うのもなんだが、この小さい店でよくもまぁ飽きずに働くもんだと思う。
そいつが今日、酷い顔で息を切らして店に入ってきた。
他のバイトの女の子に声を掛けて休憩室に入った途端、ソファーを乗っとった。
こりゃ、重症らしい。
というか、馬鹿だろ。
こいつが来た直後にこの前の男がやってきた。
爽やかなイケメンだが、なんとなくコイツの好みじゃなさそうな男。
今もカウンターで女の子に詰め寄ってて、ぶっちゃけ迷惑だ。
「ユキ」
「なんですか」
「裏口から帰れ。これ、特別におれからの助言」
無言で立ち上がったユキのポケットで携帯が鳴っている。
「…はい。あぁ、海。あ、鞄?……うん。ゴメン、今から行く」
鞄も持たずに来たのか。
電話を切って立ち上がったユキに表情はない。
こっちとしても、あの男をこれ以上放置できない。
あ、これ一応店長としてね。
「んじゃ、私帰ります」
「おう」
「店長。……まだ大分先まで、お世話になります」
「さっさと就職決めちまえ」
苦笑して出ていくユキを見送って、あの男をどうするか考える。
「あーぁ……全く、面倒を持ち込むのは得意なんだからよ」
(淡く流れるミュージック)
うちの頼れる従業員の為に。




