表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『古典にAIを導入してみた 〜僕らは賢くなったのか〜』  作者: 山田りく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/7

第4話【現代シン・寓話】きこりのAI と 谷の精霊AI

 あるところに、貧しいけれど実直なきこりと、その隣に住む強欲な男がいました。


 二人はそれぞれ、最新の「人生最適化AI」を搭載した端末を持っていました。


 ある日、実直なきこりが谷のそばで作業中、手が滑って古い「鉄の斧」を奈落の底へ落としてしまいました。


 すると、谷底からまばゆい光と共に、この地域の資源を管理する「精霊AI(自動等価交換システム)」がホログラムとなって現れました。


 精霊AIは、右手に「金の斧(市場価値:極大)」、左手に「銀の斧(市場価値:大)」を提示し、きこりの端末に通信を送りました。


『認証クエリ:あなたが紛失したアセットは、この金の斧ですか?  それとも銀の斧ですか?』


 きこりのAIが即座にガイダンスを返します。


『推奨:嘘の申告はログの不整合を起こし、信用スコアが失墜します。正直に「鉄の斧」と申告することが、長期的な経済合理性に適っています』


 きこりはAIの指示通り、

「いいえ、私が落としたのはただの鉄の斧です」

 と真実を答えました。


 精霊AIは

『ステータス:誠実性を確認。信用報酬を付与します』

 として、金・銀・鉄すべての斧をきこりに譲渡しました。


 きこりはAIの計算通り、最大の信用利益(富)を得ました。


 これを見た隣の強欲な男は、嫉妬で狂いそうになりました。


「あいつのAIがそう弾いたなら、俺のAIならもっと上手くやれるはずだ!」


 男は自分の古い斧を持って谷へ行き、わざとそれを投げ捨てました。


 すぐに精霊AIが現れ、同じように金と銀の斧を提示しました。


『認証クエリ:あなたが紛失したアセットは、この金の斧ですか?  それとも銀の斧ですか?』


 男のAIは、きこりのデータを踏まえた上で、さらに高度な「ゲーム理論モード」を展開し、男に悪魔のプロンプト(指示)を出しました。


『戦略提案:ここで「金の斧」と主張してください。精霊AIのアルゴリズムは、相手の所有権を100%否定する証拠を持っていません。確率論的に、ここはゴリ押しで所有権を主張ブラフした方が、期待値が最大化されます』


 男は勝ち誇った笑みを浮かべ、大声を張り上げました。


「そうだ! その金の斧こそが、私が落とした私の所有物だ!」


 しかし、精霊AIのシステムは、男のAIのさらに先を行くディープラーニングを完了していました。


 精霊AIの画面に、冷徹なエラーログが赤く点滅します。


『エラー:虚偽の申告を検知。当該ユーザーの過去の行動ログ、および斧の重量とユーザーの筋力データの不整合を検出。これは悪質な詐欺(チート行為)です』


 精霊AIは、男の目の前で金と銀の斧のホログラムを消去しました。


 それだけでなく、男のAIのウォレット(信用口座)を完全凍結し、男が谷底へ投げ捨てた「元の古い鉄の斧」の所有権すらも剥奪(アカウントBAN)してしまいました。


 男のAIは『警告:すべての資産を喪失。リカバリー不可能です』と虚しい機械音を鳴らすだけでした。


 男は、最新の確率論を信じた結果、明日から生きるための最低限の道具(鉄の斧)さえも失い、ただ冷たい谷底を見つめて立ち尽くすしかありませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ