表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『古典にAIを導入してみた 〜僕らは賢くなったのか〜』  作者: 山田りく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/7

第2話【現代シン・寓話】キツネのAI と スマート・ブドウ園

 お腹を空かせたキツネが、最先端の自動管理化された「スマート・ブドウ園」の前にやってきました。


 見上げると、最高級の紫色のブドウが、キツネの跳躍をわずかに超える高さに実っています。


 キツネは、自分の脳に直結した「市場価値分析AI」を起動しました。


 AIはブドウの糖度、栄養価、そして現在の市場価格を瞬時にスキャンし、キツネの視界に緑色の文字を浮かび上がらせました。


『推奨:このブドウの摂取によるエネルギー獲得効率(ROI)は400%です。全力での跳躍を推奨します』


 キツネはAIの指示通り、全速力でジャンプしました。


 しかし、あと数センチのところで届きません。


 キツネはあきらめず、AIの軌道修正データに従って角度を変え、何度も何度も飛び上がりました。


 しかし、どうしても届かないまま、体力コストだけがゴリゴリと削られていきます。


 キツネの息が上がったその時、今度は「スマート・ブドウ園」の防衛AIが作動し、警告のブザーが鳴り響きました。


 さらに、キツネのAIが『警告:これ以上の試行は、心拍数の超過による生存リスクが、リターンの価値を上回ります。


 即時撤退を推奨します』とアラートを出しました。


 完全に詰んだキツネは、泥だらけのまま地面にへたり込みました。


 このまま手ぶらで帰れば、AIのログには「身体能力不足によるミッション失敗」という屈辱的なデータが永久に記録されてしまいます。


 キツネのプライドは、それを許しませんでした。


 そこでキツネは、自分のAIの「設定画面」を開き、【解釈の最適化(認知的不協和モード)】のスイッチをオンにしました。


 キツネのAIは、主人のプライドを守るため、即座にすべてのファクト(事実)の書き換えを開始しました。


 さっきまで「糖度20、最高級」と表示されていた画面が書き換わり、キツネの視界に新たな分析レポートが表示されます。


『再評価:最新の画像診断の結果、当該ブドウの着色は窒素過多による一過性の変色であり、内部は未成熟で極めて【酸っぱい】ことが判明しました。


 摂取した場合、深刻な胃潰瘍を不条理に引き起こすリスクが98%です』キツネは、AIが自分のために捏造したパーフェクトな「偽りのロジック」を見て、深く満足そうに頷きました。


「ふん、やはりな。最初からあんな酸っぱいブドウ、私のようなエリートが食べる価値などないのだ。AIのデータが、私のスマートな撤退の正しさを証明している」


 キツネは、泥を払い、洗練された足取りでブドウ園を去っていきました。


 彼の視界の隅では、AIが弾き出した「本日のミッション:リスク回避成功(勝率100%)」という輝かしい文字が踊っていましたが、キツネの頼りないお腹は、グーグーと虚しく鳴り響いていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ