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『古典にAIを導入してみた 〜僕らは賢くなったのか〜』  作者: 山田りく


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第12話【現代シン・寓話】旅人とクマ

 ※この作品はイソップ寓話を現代風にアレンジしたフィクションです。作中に登場するクマへの対処法(木登り・死んだふり)は、現在では推奨されていません。クマが生息する地域へ立ち入る際は、事前に自治体や専門機関などが発信する最新の安全情報や対処法をご確認ください。


 仲の良い二人の旅人が、薄暗い森の道を歩いていた。


 二人は危険に備え、スマートフォンの「安全行動ナビアプリ」をそれぞれ起動していた。


 突然、茂みから巨大な「クマ」が姿を現した。


 二人のスマホ画面が真っ赤に染まり、激しいアラート音が鳴り響く。


【緊急事態:危険度マックスの捕食者を確認】

【命令:生存確率が最も高い行動を直ちに実行してください】


 アプリの画面を凝視した二人のAIは、別々の最適解を弾き出した。


 一人の旅人のAI画面:

【計算結果:あなたの脚力なら、近くの木に登ることで攻撃を100%回避できます。大至急、実行してください】


 旅人は指示通りにすぐ近くの大木へ飛びつき、上へと登って身を隠した 。


 残された旅人のAI画面:

【計算結果:あなたの脚力では12秒後に追いつかれます。木に登る時間もありません】

【代替案:クマは動かない肉体への興味が薄れる習性があります。今すぐ地面に倒れ、呼吸を極限まで抑えて『死んだふり』をしてください。生存確率:85%】


 旅人は走るのを諦め、どさりと地面に倒れ込んだ 。目をつむり、微動だにせず死んだふりを発動する。


 クマが近づき、地面に横たわる旅人の顔に鼻を近づけてクンクンと匂いを嗅いだ。


 旅人の画面には心臓を落ち着かせるためのガイドが表示された。


【アドバイス:心拍数を下げてください。動揺を検知されると生存確率が低下します】


 旅人は必死に恐怖をこらえ、石のように硬直した。


 クマの原始的な生体センサーは、旅人の完全硬直データを受け取り「ただの物体」と誤認した。やがてクマは興味を失い、ゆっくりと森の奥へ去っていった。


【状況終了:生存確率100%。危機を脱出しました】


 木の上にいた旅人が地面に降りてきて、泥を払う友人に話しかけた。


「無事でよかった! それにしても、クマが君の耳元で何かゴソゴソと囁いているように見えたけれど、一体何て言っていたんだい?」


 友人は自分のスマホ画面を静かに見つめた。そこには、今回の行動ログが記録されていた。


【総合判定:危機に陥った際、一方の個体が自身の生存確率だけを優先し、他方を置き去りにする行動パターンを検出】


【結論:リスク発生時に協力体制をとれない『アカウント』は、フレンドリストから削除することを推奨します】


 友人はスマホをポケットにしまうと、木から降りてきた旅人を真っ直ぐ見つめて言った。


「うん、クマはね、『危ないときに自分だけ逃げて、友達を置き去りにするような奴とは、もう一緒に旅をしない方がいいぞ』って教えてくれたよ」


 置き去りにした旅人は、自分のAIに「友人の救出」という条件を入れ忘れていたことに気づき、恥ずかしそうにうつむいた。


 ※この作品はイソップ寓話を現代風にアレンジしたフィクションです。作中に登場するクマへの対処法(木登り・死んだふり)は、現在では推奨されていません。クマが生息する地域へ立ち入る際は、事前に自治体や専門機関などが発信する最新の安全情報や対処法をご確認ください。

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