酒はうまい?
「皆さん、飲み物は来ましたか? それでは、私が乾杯の音頭を取らせていただきたいと思います。かんぱーい!!」
「「「かんぱーい!!」」」
なぜかミレネが音頭を取り、ひとまず俺たちの祝勝会兼俺の歓迎会が始まった。
今俺の手にはアルコールの入ったジョッキが掲げられている。本当に飲んでもいいのか? いくら異世界に来たからといっても俺はまだ16歳だ。どうしても固定観念で警鐘を鳴らしてしまう。
「すっごい美味しいです。私はなぜ今までお酒を飲まなかったんでしょうか? こんなに美味しいのを知ってればミカちゃんに止められても無理やり飲んでましたよ」
「ミレネは気に入ったようで良かったわ。ミカはどう?」
「……苦い」
満面の笑みを浮かべるミレネとは対照的にミカは顔を歪めている。
もう二人は飲んじゃったのか。こうなったら俺も行くしかねぇよなぁ。
ゴクゴクッ。
酒の入ったジョッキをあおる。
「え? にっがっ」
普通に苦い。
ミカが顔をしかめていたのが俺にも理解できた。これは、俺のおこちゃまな舌にはまだ早かったようだ。もったいないから全部飲むけどさ。
「ダイサクも? 私がおかしいわけじゃないのよね? これ苦いわよね?」
「ああ、ミレネが美味そうにしてるのが理解できない。どういうことだ?」
「えー? 二人はこの美味しさがわからないのですか? もったいないですね。違うのも飲んでみるのはどうですか?」
「ミカにはまだ早かったみたいね。ちょっと飲みやすい物を頼むからそっちを飲むといいわ」
流れるようにウェリスが新たに注文し、ミカが持っていた酒を回収した。
うまく隠してたようだが、俺の目は誤魔化せないぞ。酒を受け取る時、微かに笑みがこぼれていた。間接キスで喜んでるようにしか見えないって。
その後も順調に酒は進み、俺も気が付けば5杯目のジョッキだ。
最初に飲んだ酒は苦かったが、ミカが飲んでいる者と同じものはとても飲みやすかった。
「ウェリスお姉さん手が止まってますよ。どんどん飲みましょうよ」
「え、ええ。ちょっとミレネ強すぎないかしら。私よりも確実に飲んでるわよね? ほんとに大丈夫なの?」
明らかに飲んでいる量は多いのだが、ミレネは相変わらずいつもの調子だ。これは本気で強いんだろう。
逆にウェリスは少し辛そうだ。俺の目から見ても酔いが回ってきているのがわかる。横に揺れてるんだよな。
「おい、ウェリスきつそうだし、あんまり飲ませないほうがいいんじゃないか?」
「何よ。私はまだまだいけるわ。ダイサクに心配されるようなことじゃない。さぁ、ミレネ飲みましょう」
「そう来なくては面白くないですよね。流石はウェリスお姉さんです……ミカちゃんはもう無理そうですね」
ミレネが俺の横に視線を向け、そう呟く。
実際、ミカは少し前からぼぉっとしている。
こんな感じだし、四人のなかで一番弱かったのは間違いなくミカだな。俺はまだ平気だぞ。
酒はどんどん運ばれてくるのだが、本当に大丈夫なんだろうか?
もうこうなったら信頼できるのは自分自身だけだ。最後は俺が止めるしかないな。都合のいいことに俺は酒には強いみたいだし、気を付けてれば大丈夫だろう。
「キャァーーー。やっぱりミレネは可愛いわぁ!!」
ある一定のラインを越えてからウェリスはずっとこの調子だ。気持ち悪いのかと思ってみていれば、いきなりミレネに抱き着いてそのまま。ミレネも嫌がってないし、別にいいだろうということで放置している。
「ウェリスお姉さん、私が飲みずらいですよぉ」
「いいじゃない。減るもんじゃないでしょ。ミレネが可愛いのが悪いの」
「嬉しいですけど……あ、このお酒も美味しいです」
もうあっちの世界は出来上がってしまっている。俺に立ち入る隙はなさそうだ。
それと、ミカはというと。
「ダイサク……今日は、本当に……ありがと。ダイサクが……いなかったら……どうなってたことか」
「いいんだよ。俺たち仲間だろ。当然のことだ。気にする必要なんてないんだよ」
「へへっ、よかった……」
誰だこいつはと思うだろうが、ミカはちょっと締まらない顔でこの会話を繰り返している。ちなみに今回で7回目だ。これはこれで可愛いので、俺は楽しんでるが、まったく同じ会話を繰り返しているのに気が付く様子もない。これは完全に酔っぱらってる。後で思い出して俺に当たってこないといいけどな。
まあ、そろそろ止めといたほうがいいのもしれないな。酔っ払いが二人の時点で止めないと、俺も全員の面倒は見きれないしな。
「もうそろそろお開きでいいんじゃないか? もういい時間だろ?」
「何言ってるんですか? 私はまだ飲み足りません!! ダイサクさんも余裕そうですよ、まだまだ飲みましょうよ」
「ミレネ可愛い。いや、私もまだ飲むわよ!!」
ミレネも酔ってるのか? 普段と変わらないから判断しずらいんだよ。
それにしてもミレネにくっついてる酔っ払いも厄介だな。こいつ、こんな調子で支払いできるのかよ。
はぁ、まだ続きそうだな。俺は妙に距離をつめてきているミカと仲良くお話でもしておくとしますか。




