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6、 映画館デートはセンスが必要。

 高校受験の朝。

 いつもより少しだけ早起きして階段を下りた。一応、塾ではA判定だったけど。それに甘んじてはいけない。ギリギリまで参考書を見て。名前の書き忘れは絶対にないようにしないと・・・。

 今日は流石に朝食は作らないけど、軽く朝食を食べるためにキッチンへ向かう。そしてドアを開けるとある違和感に気付いた。

「?」

心なしか、キッチンを使った。薫りとか熱を肌で感じる。

 朝になると、最近はすっかり冷え込んでいるのに・・・お母さんが夜食でも作ったのかな?

 しかし、母が何か作った場合、何かしら洗い物が残っている場合が多いのだが、洗い物は無くすっきりしている。

「?」

不思議に思っていると、ダイニングテーブルに何かが置かれているのに私は気付いた。

「・・・お弁当?!と、チョコレートとこの袋は・・・?」

袋を開けると、そこには、ここからは何度も乗り換えしないといけない場所にある。有名な受験の神様のお守りが入っていた。

 そして、私はお弁当の下にメモが挟まれているのに気付いた。

 開くとそこには、見慣れた文字。私が世界で一番好きな筆跡と、最近彼が嵌っている漫画のキャラクターが描かれていた。メモには一言

「がんばれ!」

の文字。

 ポタリと涙が朝から零れた。お弁当もチョコもお守りも弟の遥がこっそり準備してくれたのだ。

チョコレートは、多分受験前に目が覚めて、糖分を頭に回すようにだろう。まだ、幼いのにあの子はどうしてこう気が回るのだろう?


「こんな天使様の加護があったら、とても落ちるわけになんていかないじゃない・・・?」


 おう、やったろうじゃないの。長年積もり積もったこの熱き弟への想い。

ブラコン魂今こそ見せてやる!!

「神様・・・わたしやります!!」


そうしてその日の受験、私は宣言通り燃えに燃え。

その高校に私は主席合格し、以来、高校での成績一番を守り続けたのだった。




「リンちゃんマジありがとう!!恩に着るよおおおお。」

私、西園寺閑はその金曜日の夜に、幼馴染にして、一番の親友。服飾専門大学に通っているリンちゃんの家を訪ねていた。

「別にいいよ。私服だけはいっぱい持ってるから!」

彼女は、自分で言う通り、服をいっぱい持っている。それこそ仮衣装の専門店のように、部屋には、ハンガーだらけで、服・服・服のオンパレードだ。流石は、服が好きすぎて、その道に進むだけのことはある。

 昔よく私はリンちゃんと二人で、服をとっかえひっかえ、ファッションショーごっこをしたものである。 

何とも懐かしい。

「ほんと、服を買いに行く服すら今の私は持ってないからさあ。ほんと助かる。絶対お土産買って来るね?」

そう言うと、アッシュ系に染めたボブの髪を揺らしながら、リンちゃんは八重歯を見せて笑った。

「なんだそれ?って言うか、映画のお土産って何よw」

「・・・え?キャラメルポップコーンだよ?決まってんじゃん。好きでしょ??」

「やめてよ!湿気っちゃうじゃん!?やめてよ!!」

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あいかわらずなんて、見かけに反してなんて弄りがいのある子なのだろう?ほんと好きよ、リンちゃん?

「冗談はさておき、あんなイケメンと出掛けるなんて、それだけでも罪深いのだから。せめて見かけだけはそれなりに整えないと犯罪になってしまうと思って・・・。」

私がそう言いながら借りた宇久を畳んでいると

「ふうん?そんなにイケメンなの??写真とか無いの??」

と、リンちゃんは興味を示した。私は自分のスマホを出して、スッスッと指を動かす。確か前、サークルで練習用に撮った写真があったはず・・・。

「あ、あったあった。コレコレ!」

私は、写真を見つけると、画面をリンちゃんの方に向けた。

「・・・お、おお~これはこれは・・・中々どうして!!」

思わず感嘆の声を上げるリンちゃん。ふふふ、先輩のイケメン具合に恐れをなしたか?

うちの大学きってのイケメン。会ったら思わず拝んでしまうそのご尊顔!

そりゃあ、声も上げようというものよ!

「ハル坊と並ぶか並ばないかの超イケメンじゃん!!・・・それでも、わずかにハル坊が勝ってるか?」

ん?遥。いきなり出てきた遥の名前に若干驚く。

「どうして、ここで、遥?」

それに、リンちゃんこそきょとんとして

「え?だって、しずの周りのイケメンの言えば、まずハル坊じゃん!」

・・・確かに、遥は元お天使様なだけあって、非常に綺麗な顔をしている。なのに、なぜか私は急に先輩とそんな遥が並べられることに変な違和感を覚えていた。

「遥は、確かに一般で言えばイケメンだけど・・・う~んなんだろ、口じゃなんかうまく説明できないや?」

「ま、ハル坊は閑にとっては特別だもんね?何しろ、ハル坊が悪い事したときの為に、弁護士目指してるくらいだし?」

それに、私は、思わず頭にクエスチョンマークを飛ばす。

「ええ、言ってないでしょそんな事・・・。」

それにリンちゃんは頭を振って、ツーンと胸を伸ばし

「いいえー確かにしずは昔言いましたー!『弟がいざ、実際犯罪に手を染めた時に、私が守るために、弁護士になろうかと思うんだけど、どう思う?』ってー!!」

それに、私はちょっと赤くなって反論する。

「そ、そんなの昔冗談で言っただけでしょ!」

しかし、リンちゃんは、付けまつ毛ビシバシの目を細めてなお続ける。

「でも、実際、法学部に行ってるでしょう?」

「・・・・・・。」

確かに、私は今、法学部に通っている。・・・え、じゃあ私がもともと法学部に行ったのって、元々それが起因ってこと?・・・すっかりそんな事忘れてた。

「ふふふ、図星でしょう?」

図星かもしれない。

私が今この大学のこの学部を選んで通っているのは、元は遥の為だったんだ・・・。


「お、重い・・・!!」

重い。我ながらなんて重いの?超ヘビィ級のブラコン具合である。


「今更だって!もう治らない病気って、周りは認識してるから、大丈夫大丈夫!」

「全然大丈夫じゃない・・・!!というか病気認定受けてるし!?」

周りから病人認定されていた事実を知り、私は、更にショックを受けた。

だが、はた目に見たら、確かに病気以外の何物でもない!!こわ!自分がひたすら恐ろしい!!

そして、そんな頭抱える私をリンちゃんは見つめながら朗らかに笑うと

「でも、いい機会じゃない?これを機に他の男の子に目を向けるのも?」

そう言って何だか意味深に彼女は笑うのだった。


ーーーーそして、先輩との映画デート当日の日曜日。

私は、待ち合わせの駅の改札を出ると、目の前で先輩は手を振って待っていた。

 まるで雑誌から出てきたようなミリタリーデザインを落とし込んだデニムジャケットに、無地のブランドのTシャツ。ボトムスに美しいツヤ感が上品なスラックスを着用し、足元は黒いショートのレザーブーツを履いている。

センスもスタイルもモデル顔負けである。

 流石は、我が大学きってのイケメン。玉木パイセンである!!


思わず少し遠くからしげしげと感心して眺めれば、しびれを切らしたのか、軽く走って先輩の方から私を迎えにいらした。なんと恐れ多い事!

「す、すみません!私歩くの遅くて・・・。」

先輩を走らせたのが申し訳なくて私は速攻、平謝りに出た。申し訳ない。申し訳ない!

 しかし、そんな私の反応に先輩はびっくりして


「違う違う!西園寺と早く一緒にいたくて、俺が勝手にしただけだから!」

か、カッハ―(吐血)何そのいきなりの口説き文句は!?

 しかも更に先輩は、

「ここだと人が多くて話せないから、とにかくいったん外に出よう?」

そう言って私の手を握ると、人混みから私を連れ出した。


駅の外に出ると、外は眩しいくらいに晴れていた。ここまで来れば人が邪魔にはなるような事もないだろう。

 なので私がそのまま手を離そうとすると、何故か逆に、先輩は私の手をぎゅっと強く握り返した。

「あ、あの、先輩ここまで来れば、人も多くないですし・・・。」

そう言うと、先輩は、その綺麗な色素の薄い瞳を細め。

「うん、そうだね。ごめん、さっきのはとっさについた嘘なんだ。」

「えっ?」

嘘?どういうこと・・・。

「西園寺と手がどうしても繋ぎたくて、しょうもない嘘をつきました。ごめんなさい。」

へ、へあ!?な、なにそれ!?

「だって西園寺。今日、可愛すぎる。」

な、ななななななななな!?私は、自分の顔がどんどん茹で上がるのが自分で分かった。

 たぶん、居酒屋の今日のおススメとして、カウンターに並べられた鮮やかな酢だこくらい。私は今、真っ赤に仕上がっているに違いない。恥ずかしい!

「西園寺、花柄のワンピース似合ってる。最高だよ。」

いやいやいやいや!!最高は貴方の方ですから!何ですかそのイケメン破壊力は?

 こっちの心臓を機能テストしてるんですか!?ドキドキが止まらない!!

「しぇ、しぇんぱい・・・なな、何をそげな・・・!」

思わず、こっちのキャラクターが突然迷子になり。

語尾の行方すら、方向性を失ってしまう。

せ、先輩・・・改めて貴方はなんて恐ろしいイケメンなのですか!?強すぎる!

「あ、そうだごめん。今日観る映画のチケット、先にWEBで買っちゃったんだ。・・・この映画を観ようと思ってるんだけど、西園寺嫌いじゃなかった?」

そう言い、先輩にスマホの画面を見せられる。

こ、これは・・・!

「これは、今超話題の鬼アニメの映画のチケットじゃないですか!う、うわあ!!嬉しい。めっちゃ観てみたかったんですよコレ!!」

何でも超泣けるらしい。

 この間ニュースで、映画の興行収益が、えげつない額になっているというのをチラリと見た。つまり、それだけリピーターもそれだけ多く見ごたえのあるものだという事だろう。

 何これ、ガチで嬉しいやつなのですが?

「西園寺が嫌じゃないなら安心した。」

そう言い先輩は笑った。いやいや100点満点のチョイスです!

「あ、そうだ、先輩チケット代を・・・。」

おっと、いけない私の分も買ってもらったんだしお金を出さないと。私は鞄から自分の財布を出そうとした。

 それに先輩は、空いている手でいきなり軽く、私のおでこをデコピンした。

「こら、先輩で男である俺に恥をかかせるんじゃない!!今日西園寺は、財布を帰りの電車まで出さない事。宜しいか?」

それを聞いて、私は慌てた。

「そ、そう言うわけには・・・って、きゃ!!」

しかし先輩は、そんな私の言葉をスルーして、握った手を引っ張り映画館に向けて歩き出す。

「せ、先輩やっぱり、私も出しますから!そんなに甘えるわけには・・・!」

私はそれでも言い募った。けれど、先輩はそんなチラリと私を振り返り、舌を出してみせると。

「や~だよ!」

と、まるで子供みたいな口調で言って。プイッとまた前を向いてしまった。

・・・え、な、なんですかその拗ねた男の子みたいな物言いは?

何か今の超可愛かったんですけど?

ちょっと、多方面イケメンの可能性を見せつけるのを即刻、止めてもらってもいいですか??

私の心臓は既に爆発しかけてますよ?


 ・・・ああ、果たして私はこのデートの帰りまでに、心臓を酷使しすぎて倒れて、救急車で運ばれたりしないだろうか?大丈夫なのだろうか?

 思わず先輩のイケメン力が凄すぎて、私は自分の命すら危ぶんだ。

 そして、間もなく私たちは映画館に到着した。


 先輩の取った映画の席は何と、プレミアムシートで、席も十分に離れているから飲食もOKらしく。

先輩は、当たり前のようにキャラメルポップコーンと飲み物も買ってくれた。更に奇跡的に残っていたパンフレットも。

 まさに至れり尽くせり、まるで王様になった気分である。


 そしてプレミアムシートはプレミアムなだけあって、席がふあふあで、まるで雲の上に座っているようだった。

・・・あかん、これ完全にこっちを寝落ちにさせる気満々じゃないですか?


 しかし、そんな考えは正に杞憂だった。

 何故なら、映画が面白過ぎて、おまけに泣き過ぎてしまって、私は睡魔に襲われることはついぞ無かったからだ。

 ・・・ハンカチを念の為二枚持参していて本当によかった。

 というか、ティッシュ箱まるまる一個持ってきても良かったかもしれない。

 『いや~、映画って本当にいいものですね!』思わず昔いらっしゃった、有名な映画評論家みたいな事を素で呟きそうになる。

 いや、もしかしたら呟いていたかもしれない。すでに手遅れだったかもしれない!

 取りあえず、それ以上独り言を漏らして、後ろの人に通報されない様。

 私は、その後必死にお口にチャックをした。おくちYKK・・・。


 映画のエンディングクレジットまで観終えると、部屋全体に明かりが点いたが、私はまだ呆然としていた。

 あまりに感動が深すぎる!

 私は、そこでようやく、隣の先輩を見る余裕がようやっと出来、ハッとして慌てて真横を向いた。


!!


先輩は、その目を真っ赤にしていた。明らかに泣いたようである。

「・・・先輩泣いたんですか?」

思わず私がそう言うと。

「・・・西園寺こそ。というか、これで泣かないやつは、心が死んでるよ。」

ええ、全くその通りで。


 でも、いつも完璧で余裕があって爽やかな先輩が、こんなに泣くことがあるだなんて思っていなかったから、私は先輩がこんな風に人間らしく泣くことに、小さな感動を覚えた。


 先輩はハンカチで、その若干泣きはらした目元をぎゅっと拭いさると。

 さっと片手に私たちのポップコーンのトレイを持ち、もはや当たり前のように私の手を握り立ち上がらせてくれた。

 なんかはた目には、私達は完全なる恋人同士の様である。

本当にこれは夢では無いのかな?私は自分の頬をつねった。痛い。・・・まさかのリアルに間違いないみたいだ。いまだ信じられないが。

 スクリーンを出てトレイを映画館の係の人に渡し、私達は明るい出口を出る。

そしてそこで、

「あ・・・!」

そこで、私は驚いたように目を見開いた弟・・・遥と出くわしたのである。

約一か月ぶりの更新です。

皆に忘れられていないか・・・とても心配です!

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