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代打のカケルさん~恋も仕事もカケルさんのおかげです~  作者: 来留美


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1/18

1、代打のカケルさんとは

楽しくお読みいただけましたら幸いです。




 あの人は言った。


「私は代打ですので」


 と、胸を張って堂々と。



 誰もが誰かの代わりに選ばれるよりも、一番に必要とされて選ばれる方(ほう)が嬉しいはず。

 でも、それは違った。


 あの人は、誰かの代わりを喜んでやる。

 嫌な顔をせず、文句も言わず、代わった人のためにやる。


 その人の名は、、、。





「カケルさん、おはようございます」


 私は出勤し自席に座る前に、隣の席に座る女性社員に挨拶をする。


「光(ひかる)さん、おはようございます」


 カケルさんはフワッと笑って挨拶をしてくれた。

 可愛らしいという言葉がとても似合うカケルさん。

 髪の毛先が優しくカールしていてふわふわのロングで、可愛らしい。


 私の名前は光(ひかる)杏(あんず)。

 まだまだ新人で周りに迷惑ばかりかけ、落ち着きのない新入社員。



「カケルさん。この見積書をコピーしてくれるかな?」

「はい。承知いたしました」


 課長が、デスクでパソコン作業をしているカケルさんにコピーを頼んだ。

 カケルさんは、課長から資料を受け取りコピー機の元へ向かっている。


 コピーなら新人の私でもいいのに。

 何故カケルさんなの?

 


「課長。コピーなら新人の私がしますよ。カケルさんは他の仕事がありますよね?」

「そうなんだけどさ、そういう契約なんだよ」

「そういう契約ですか?」

「そう。光(ひかる)さんは、カケルさんが育児休暇中の社員の穴埋めとして来たのは知っているよね?」

「はい」


 私が新入社員として入る半年前に、女性社員の育児休暇の穴埋めとしてカケルさんが来た。

 カケルさんは直ぐに仕事を覚え、即戦力となっている。

 美しい見た目と気が利くカケルさんは、みんなの人気者、、、にはならなかった。


 カケルさんは仕事とプライベートを完全に分けて仕事の話以外はしない。

 簡単に言えば、誰とも関わらないし、心を開こうとしない。

 謎多き女性。


「その育児休暇を取った女性社員の仕事の全てをカケルさんが受け持つという契約なんだよ」

「全て、ですか?」

「そう。カケルさんは、この会社で働く前に育児休暇を取った女性社員から全てを引き継いだみたいなんだ」

「それでも、小さな仕事は私がしてもいいですよね?」

「さっきも言ったけど、育児休暇を取った女性社員の仕事の全てを受け持つことが契約だから、もし他の人に任せたら契約解除になるんだ」

「そうなれば、他の人を雇うこともできますよね?」



「そこが困る所なんだよ」


 課長は眉間に皺を寄せて、頭をポリポリと掻きながら言った。


「困る?」

「そう。直ぐには次の人は見つからないんだよ。どこも人手不足だからね。探している間に育児休暇が終わって女性社員が戻ってくるよ」

「カケルさんみたいな方(かた)って見つからないんですね。それならカケルさんを見つけたのはラッキーだったんですね」

「カケルさんを見つけたのは育児休暇中の女性社員なんだよ」

「えっ、代わりを自分で探さなきゃいけないんですか?」


 社会人一年目の私には知らないことが沢山ある。

 育児休暇を取るのも大変なんだ。


「そんなことはないよ。これから育児が大変な女性に、代わりを探せなんて言わないよ」

「そうなんですね。良かった」

「でもさ、ほとんどの会社は代わりの人を見つけられず他の残った社員に皺寄せがいくんだよ」

「それは、色々と文句がでそうですね」

「そうだよ。会社に文句を言うのはいいけど、育児休暇を取っている本人へ言う人もいるから困りもんだよ」


 課長は経験があるんだと思う。

 だから、今の状況は本当にありがたいと思っているんだろうなぁ。


「カケルさんは救世主ですね」

「そうだといいんだけどねぇ」


 課長は何か不安そうに言った。

 この状況でも何か問題があるのかな?


「課長。コピー終わりました」

「あっ、ありがとう」


 課長はカケルさんが来たことにより、緊張しているようだった。

 どうして?


「カケルさ〜ん」


 同僚の男性社員がカケルさんを見つけて呼んでいる。

 またカケルさんに仕事を押し付けるのかな?

 カケルさんは嫌な顔をせず男性社員の元へ急ぐ。


「さぁ、光(ひかる)さん。キミにはお茶の準備をしてもらおうかな?」

「あっ、これから会議ですよね?」

「そう。光(ひかる)さんのお茶は人気だからね」

「えっ、でも普通のお茶ですよ」

「お茶じゃなくて光(ひかる)さんっていうのが大事なんだよ」

「私ですか?」

「そう。光(ひかる)さんが笑顔で名前を呼んで置いてくれることが一番の癒しだそうだよ」

「なんだか照れます」


 課長に褒められたのが嬉しい。

 課長は三十代半ばのイケメン。

 大人で落ち着いていて頼りになる人。

 女性社員の中では課長を狙っている人がチラホラいる。


 こんなに完璧な課長だから恋人がいるに決まっている。

 カケルさんみたいな仕事ができて美しい人が。



 もしかして、カケルさんが彼女?

 だからカケルさんの前で緊張していたの?

 好きだから?

 バレちゃダメだから?




「なんでだよ!」


 いきなり大きな声が聞こえて、私は声のする方(ほう)を見る。

 カケルさんと話をしていた男性社員が怒っている。

 何があったのかな?


「おっ、何かトラブルか?」


 課長が急いでカケルさんの元へ向かう。

 やっぱり大事な人だから急いで助けに行くのかな?

 カケルさんには勝てないよ。




お読みいただき、誠にありがとうございます。


~次話予告~

トラブルが起きたのを助けたのは課長。

カケルさんの異変に気付いたのも課長。

二人ってもしかして、、、。

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