第八話 4
山本道代が、自分の事務所へ戻ると、豆太郎を連れた沢登小五郎が待っていた。豆太郎は、相変わらずご機嫌で、神崎美波に愛想を振りまいていた。しかも、飼い主である沢登小五郎が、何度教えてもそっぽを向いていたのに、ジャーキーを手にした神崎美波が教えただけで、お手もお代わりもあっという間に習得していた。豆太郎は、全く呆れたヤツだった。
「ごめん、約束の時間よりちょっと早かったかな」
「私こそ、ごめん。ちょっと唐吉と話してたから」
「ところで、僕に話したいことって? もしかしたら、頼んでいる件?」
「うん、そう。あのね、松沢啓介の出所が、急遽来月に決まったらしいの。あおいちゃんを助けもせず、飲酒運転を隠蔽しようと逃げたんだから、七年の刑期でも短いと思うのに、五年で出所なんてあんまりだわ」
「来月のいつ?」
「それが、詳しくは教えてくれなかったのよ」
「そうか……。でも、知らせてくれてありがとう」
「本当は教えたくなかったんだけど、教えないと一生恨まれそうだから」
「当たり前だよ! 僕は君に仕事の依頼をしたんだからな。教えてくれないのは、詐欺行為だ」
「分かった、分かった。他にも困りごとがあったら、何でも相談して。美波ちゃんもあの若さで、実に頼りになる子だから」
山本道代がそう言うと、神崎美波はにっこり笑って小五郎に会釈し、小五郎も美波に笑顔で会釈した。




