第七話 9
その晩は、この間、山本道代と一緒に泊まった同じホテルに泊まることにしたが、酒の弱い新宅正司は、布団に入るなり直ぐに一人で寝入っていた。
新宅正司の寝顔を見ながら、先程、バーで交わされていた会話を思い出していた。
「女か……」
僕は、うんざりしながら呟いていた。坂崎雄二に電話をし、「女が匿っているんじゃないのか?」と訊ねた。坂崎雄二は、「そうだとは思いますが、何も情報は入っておらず、常木の足取りはぱったりと途絶えたままです」と答えた。
僕は、大きなため息を吐き、思わずレイデンに電話していた。
プルルルル、プルルルル、プルルルル、カチャ
「はい、レイデンです。お電話ありがとうございます。セイヤさんですね。また、何かお困りなの?」
「そうですね、困ってます。あの……」
「あ、ちょっと待って。今日はこちらから当ててみます」
そう言って、レイデンは三十秒間、瞑想した。
「また女性のことで困ってるの?」
「ご名答」
「今、私に見えているのは、五十代くらいの女性と、二十代くらいの女性です」
「え? 二十代?」
「ええ」
「五十代の女性は、綺麗だけどガサツな感じですか?」
「そうね。結構ハキハキしてる人ね。食堂を経営してる人かしら?」
それを聞いて、すぐに常木美也子のことを言っているのだなと思った。
「二十代の女性は、どんな女性なんですか?」
「うーん、顔の造りは派手な感じね。優しいけど、ちょっと浅はか」
「要するに頭が悪そうってことですか?」
「相変わらずセイヤさんはすごーく単刀直入だわね。まぁ、そうだと思うわ」
「彼女の特徴を教えて貰えませんか?」
「身長はそう高くないわ。百五十五センチくらい。髪の毛は長くて、いつもお団子にして頭の真上でまとめてる。服装は、大体いつも黒のTシャツと黒のジーンズ。黒じゃなかったら白い服。全身、真っ黒か、真っ白というのが多いみたい」
「分かりました。その女性の横に、五十代後半の男性はいませんか?」
「あー、いるいる。でも、なんかちょっと弱ってるわね」
「男の名前は?」
「えーと……つ、常木さんて呼ばれてるわ」
「ほんとですか! レイデン先生凄いです!」
「ええ? そう? でも、いつもこうだったらいいんだけど、いつもこうじゃないわね」
「そうですね」
「……」
「それで、その女性はどこに住んでるんですか?」
「そんなの分からないわ」
「えーっ! 褒めて損した……」
「もうセイヤさんていっつもそうよね。人をガッカリさせるのが上手よね。あ、でも、ちょっと待って。今、スカイツリーが見えたわ!」
「え!」
「その女の人の住んでるアパートの窓から、スカイツリーが見えるの。なんだかこの女の人、いつも夕方になると着物を着てるわ。芸者さんかしら?」
「ああ、分かった!」
「もう分かったの?」
「ええ、分かりました! ありがとうございます! それで十分です! では、失礼します!」
気付けば、僕は、レイデンに礼を述べ、すぐに電話を切っていた。
僕は、レイデンの言葉で、すぐにピンときていた。スカイツリーが見え、しかも芸者のいる花街といえば、あそこしかない!




