第六話 4
加賀美佐助への挨拶を済ませ、予定より十五分早く自分の事務所に到着すると、新宅正司の他に、神崎美波と見知らぬ小さな女の子がいた。三人は僕がドアを開けると、一斉に僕の方を振り返り、気まずそうな顔をした。
新宅正司はコピー機で、何やら大量にコピーしている。僕はつかつかとコピー機に近寄り、その中の一枚を取り上げて確認した。そこには、「迷い犬です! 見かけたら、ご一報ください!」と書かれ、紙の真ん中には犬の写真が貼られていた。
「何をやっているんだ!」
僕は、思わず声を荒げていた。
「ごめんなさい、私がお兄ちゃんにココを捜してと頼んだの」
その小さな少女は僕にこう言った。
「うちの事務所にこんなことをやる余裕がどこにあるんだ? しかもこの子は男の子じゃなくて女の子じゃないか!」
「女の子はだめなの?」
その少女はそう言うと、シクシク泣きだした。
その途端、外から様子を見ていた山本道代が、ずかずかと入って来て叫んだ。
「こんな小さな子の前でなんてことを言うのよっ! どうしてあなたはいっつもそうなの? 人の気持ちなんかお構いなしっ! あなたは鬼なのっ! 本当に最低な人間だわっ!」
「そうですよっ! 最低ですよっ!」
神崎美波までそう叫んだ。新宅正司のほうを見ると、彼は何も言わずに僕を睨みつけている。
すると、突然、また事務所に大量のゴミ袋が投げ込まれ、ゴミ袋と共に平林真奈美が現れた。
「あんたは私に借りがあるんだよね? あんたが佐助の仕事をすりゃいいじゃないか。新宅に莉子の仕事をさせておやりよ!」
何故、平林真奈美が、僕と加賀美佐助の事務所が業務提携したことを知っているのか驚いたが、平林真奈美にキングスクラウンのチケットを譲って貰ったという借りがある以上、彼女の意見に従わざるを得なかった。
「平林さんがそう言うのならそうします」
僕は、憮然としてそう言った。




