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第五話 6
警視庁鑑識課、橘広樹は、四十年前の米澤和吉殺害事件の資料をコピーし、ある男に渡していた。
「もう、ほんとに頼みますよ。これ、やってること、犯罪ですからね。この間も米澤さんがうちに来て、絵をレントゲンにかけろって大騒ぎして帰って行ったんですから」
「は? 何のために?」
「行方不明になった絵を捜していたらしいんです。でも、なかなか見つからなくて、もしかしたら、絵の下に捜している絵が隠されているかもと思ったらしく、レントゲンにかけてみたら、ビンゴだったんです。花の絵の下に、女性の絵が隠されていました」
「へー」
「絵をレントゲンにかけるくらいだったらいいけど、こういうのはこれきりにしてくださいね」
「分かってるよ」
男は、橘広樹に謝礼を払うと警視庁を出た。そして、ネットカフェに籠り、貰い受けた資料を見た。資料には、被疑者死亡のまま送検され捜査は終了した、と書かれていた。米澤和吉の遺体の検死結果は、頚部圧迫による窒息死とあったが、遺体の写真には、鮮紅色の死斑がいくつも見られた。それなのに、当時、司法解剖を担当した監察医は、そのことには一切触れていなかった。男は、やはり強い疑念を抱いた。どうして死斑を見逃したのか、調査する必要があると思った。




