第三話 10
僕は、山本道代からの調査結果を受け、横浜の工事現場で働いている桐山陽介を訪ねた。桐山陽介は、噂通りの好青年で、突然訪ねて行ったにも関わらず、僕の話を快く聞いてくれた。彼の話によると、まだ完済できていない借金は三百万円ほどあると言う。
「どうして君は、そんなにお人好しなんだ?」
「お人好しですか?」
「そうだよ。そんなお人好し、見たことがない」
「そうなんだ……」
「うん」
「僕には後悔があるんです。苛められていた親友を救うことが出来なかった。アイツは苛められているヤツに金を持って来いと言われてたけど、どうしても金を調達できなかった。あの日、アイツは僕に五万円を貸してくれと言った。高校生だった僕には大金だったけど、貸せない金額じゃなかった。それなのに、僕はアイツに金を貸さなかったんです。アイツはたった五万円の金のせいで死んだんだ!」
「だからって、彼が亡くなったのは君のせいじゃない。彼を苛めていたヤツのせいだ。今、君が金を貸している人間は、君が金を貸さないと死んでしまうような人間なのか?」
「……そうじゃないと思います」
「君に借金をしているすべての人間の居場所を教えて欲しい。大丈夫、私は元検事です。検事を辞めたけれど、今でも警察には仲間がいる。安心してください」
お人好しの桐山陽介は、僕を信頼してくれたのか、彼に借金を課した人間の居場所を教えてくれた。しかし、やっぱり彼は甘かった。僕の普通ではない性格までは、見抜けなかった。
僕は、借金をしている人間を虱潰しに探し出し、ぶん殴ったり投げ飛ばしたり脅したりした。案の定、素直に謝るヤツは一人もいなかった。桐山陽介のことを金づるくらいにしか思っていなかった。僕は、そんな輩に有り金全部を出させて桐山陽介に返させ、今後一切桐山陽介に関わるな、関わったら警察が動くと脅し、殴る蹴るを繰り返した。桐山陽介は、「もういいです! やめてください!」と泣いて懇願したが、「本気で自分のことを考えてくれた人は、米澤さんが初めてかもしれない。本当にありがとうございます」と言った。
「君は、十分頑張った。君のような人こそ報われなきゃいけない。本木さんは、君を役員待遇で会社に迎えたいと言っています。あなたは本木さんの依頼を受けるべきだ」
僕がそう言うと、桐山陽介は泣き笑いした。




