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~面倒事⑥バーベキュー後編~

あけましておめでとうございます。

いつもいつも更新が遅くて大変申し訳ありません。

数少ない読者の方々にはいつも感謝しています。

ボチボチですが今年も地道にやっていきますので、よろしくお願いいたします。

第9章ー9




「えぇ~、そうなんですか?」

「そんなの信じられないけど⋯⋯」

「でも本当なんですよ。ねぇ?」

「あぁ、証拠を見せてやるよ」


 現在バーベキューの真っ最中。盛り上がっていたのは昔の(こう)君の話だ。

 私と出逢うまでの間、離婚してからというもの一切の女断ちをしてオタクと化していた(こう)君。今の洗練された姿からは想像がつかなかった奥様方に、ヨッシー呼ばわりしていた頃の(こう)君の写メを同僚のご主人が見せている。


「これこれ、これが昔の吉川さんだぞ」

「えぇ━━ッ!」

「ね、全然違うでしょ」


 私は笑いながら奥様方に昔の(こう)君の見た目をディスってみせる。


「前髪が長過ぎて目が見えないし、着てるものも無頓着だったし、仕事はできるけど無愛想だし。初めて会った時は完全にオタクの兄ちゃんだと思ってましたからね」


 離れたところで肉を食べている(こう)君と携帯の写メを見比べて、奥様方は「へぇ~」と不思議そうにしている。


「たまたま鬱陶しい前髪だな、と思って髪をあげたら綺麗な目をしてて、実はコイツ隠れイケメンじゃん! って気づいたんですよ」

「コイツって⋯⋯」


 ちょっと呆れた顔で見られてしまった。


「いや、だって、五つも年下のオタクだと思ってたから」

「それがあれだったわけでしょ?」

「大金星じゃないですか?」


 どの世代でも恋バナには花が咲くな。

 食い付きが半端なくいい。


「でもすぐにそうなったわけじゃないですよ。お互いバツイチだし、(こう)君は傷も癒えてなかったようだし⋯⋯」


 そこで少し悲し気な雰囲気で言葉を濁してみる。


「あぁ、ネットで騒ぎになってましたよね。前の奥さんがひどかったんでしょ?」

「私も見ました。Ryoが物凄く怒ってたって」

「そうそう。Ryoは(こう)君のことが大好きで、私も初めて会った時は完全に敵意むき出しでしたよ」

「えぇ━━っ、あのRyoが?」

「また変な女に捕まって傷ついて欲しくなかったんでしょうね」

「うわぁ~素敵。Ryoの優しさも、そんな吉川さんを立ち直らせた吉岡さんも、二人ともすっごく素敵ですよ」

「え、何々? 何の話?」


 そこへ(こう)君ご本人登場。


「あっ、(こう)君。あっちはもういいの?」


 それとなくハイエナ達の方に視線を向ける。


「あぁ、何か気疲れしちゃって」

(こう)君、ああいうタイプ苦手やもんね」


 私は笑いながら焼けた肉や野菜を紙皿にのせて(こう)君に渡す。受け取った(こう)君は一口食べると「うまい」と発した。


「この肉、あっちと同じだよね? 全然味が違うんたけど?」

「そりゃそうやろ。こっちは主婦のスキルが詰まったバーベキューになっとんやから」


 自慢気に(こう)君に説明する私。


「これは小百合さんの特製ダレが、こっちは下ごしらえの際に美恵さんの隠し味が入ってるんやで」

「良かったらこれも一緒に食べてみてください」


 そう言って、恵子さんが薬味を勧める。


「うわっ、これメッチャうまいじゃん」


 一口食べて、いい反応をする(こう)君。


「やろ~?」


 なぜか私がドヤ顔で答える。


「ありがとうございます。うちの人も好きなんですよ」


 誉めてもらって嬉しそうな恵子さんがお礼を言う。


「お前、料理上手のいい奥さんもらったな」

「いやぁ、そうですか? そうですよね? そうでしょ?」

「あんた何言ってんのよ!」


 新婚の恵子さんは照れ隠しでご主人の背中を叩いている。最近結婚した新婚さんってこの人だったんだ。


「これ絶対に龍斗好きやと思わん?」


 私は恵子さんが用意してくれていた薬味を指しながら(こう)君に尋ねる。


「うん、絶対アイツの好きな味だよ。典ちゃんが家で作ってやったら喜ぶんじゃない?」

「私もそう思ったから、恵子さんに作り方教えてもらっとくわ」

「えぇ━━っ、こんな簡単な薬味ですよ?」


 いきなり話を振られた恵子さんは大慌てだ。


「あぁ、そう言えばそろそろ着くって連絡あったよ」

「あ、間に合ったんや。無理かと思っとったのに⋯⋯」

「何か龍斗が黒井さんも誘ったらしいよ」

「うわっ、森の中にゴーシュとか似合い過ぎやろ?」


 そんな私と(こう)君の会話に奥様方が敏感に反応した。


「えっ、えっ? まさか、まさか来るんですか?」

「えっ、ホントに? ホントに?」

「さっきの感じだとRyoと龍斗の二人とも来るとか?」

「はい。是非とも参加したいって二人が言うもので。騒がしくなったらすみません」


 (こう)君が前もって了承を得ておく。


「「「きゃあぁぁ━━━っ!!」」」


 奥様方の心の叫びが叫び声になって山にこだまする。


「とんでもない! こちらこそ大歓迎ですよ」

「生の芸能人なんて私初めて!」

「それもRyoと龍斗でしょ? 私、あんたと結婚してホントに良かったと今実感してるわ」

「なんだよ、それ?」

「あははははっ」


 盛り上がったまま和やかな雰囲気で昼食のバーベキューは進んだ。





「あ~、いたぁ~」

「やっと見つけた」

「⋯⋯」


 見るからに一般人(パンピー)とは一線を画す男三人がこちらに向かって華麗に歩いて来る。

 龍斗はお腹がすいてるのか、来て早々バーベキューに手を伸ばそうとしたら、周りの奥様方が我先にと箸を勧めている。

 Ryoは一目散に(こう)君の隣をゲットして、「ゆっくりできた?」とか、「楽しんでる?」とか聞きまくっている⋯⋯恋人かッ!?

 で⋯⋯私の隣に無言で立つゴーシュ。ここへも黒一色の服装でやって来て威圧感が半端ない。ペコリと頭を下げて一応挨拶らしきことをしたが、言葉は発しないため「誰?」「ボディーガード?」などと言う声が周囲から漏れ聞こえている。


「黒井さんも来てくれたんですね?」


 (こう)君がゴーシュに話しかけた。


「あぁ。俺はいいって遠慮したんだが、龍斗がどうしてもって聞かなくてな⋯⋯部外者なのにすまん」


 大きな体をしたゴーシュが、どこか身の置き場のないような居心地の悪さを感じているのか、えらく緊張しているように見えた。


「どしたん? 何かあったん?」


 そう私が聞くと、ゴーシュはボソッと答えた。


「こういう集まりは馴染めなくてな⋯⋯昔、お前の村で歓迎された時のように、見知らぬ人間とどう接していいか未だにわからないんだ」

「えっ? マジで? その緊張感は戸惑いからなん?」


 私が驚きながらも、最強の名を持つゴーシュがこんなことに緊張しているという事実におかしくなりフフっと笑った。


「⋯⋯笑うな⋯⋯」

「あっははははっ」


 大爆笑してしまった。


 私の爆笑で周りの人も気が緩んだのか、無口なゴーシュに対しても恐る恐るだが料理を勧めてくれた。龍斗とRyoに関しては遠慮がちながらグイグイ話しかけている。まぁ、分からんでもないな。二大トップスターと殺し屋みたいな男だったら、誰でもあっちの二人へ流れるわな。


 そんな感じで和気あいあいとバーベキューを楽しんでいたところ、子供の一人が龍斗に話しかけてきた。


「ねぇ、バンパイアキングの人?」

「えっ、あぁ、そうだよ。お兄ちゃんがバンパイアキングだ」


 龍斗がそう答えると、


「うわぁ━━っ、やっぱり!」

「すげぇ、カッコいい━━ッ!!」


 子供達のテンションが弾けていた。


「ねぇねぇ、じゃあドーンって何かできる?」


 おいおい、ドラマと現実がゴッチャになってるぞ子供達。あんたらの夢は壊したくないが、普通の人間にあんなことできるはずなかろうが。

 ⋯⋯だが、今日は違う。何せ今ここには、私の隣には()()勇者ゴーシュがいるんだから!


 受け答えに困っている龍斗と瞳を輝かせて期待している子供達に向かって私が助け船を出すことにした。


「みんな~、バンパイアキングが本気を出したらバーベキューの場がメチャクチャになっちゃうよ。だからキングの腹心の部下、右腕と言われるこのゴーシュが少しだけ能力を見せてくれるって」

「なっ!?」

「ホント?」

「マジでぇ~?」

「やったぁ━━━っ!」


 急な無茶振りに驚くゴーシュと大喜びの子供達、そして誰よりも期待を込めた笑顔の龍斗。


「おい、リコ。こんなところでマズイだろ?」


 滅多に見られない慌てたゴーシュの姿がとても面白い。

私はシレッと森と小川の方を指差した。


「大人にバレん程度の簡単な風魔法と水魔法を少しだけ披露したらえぇやん。子供の言うことやから、後で親に話しても信じたりせんよ」


 私がそう言うと、誰よりも前のめりな龍斗がノリノリで後押しする。


「そうそう。ちょっとでいいから兄貴のスゴさを子供達に見せてやろうよ」

「あ、いや、だが⋯⋯」

「はいはい、みんなぁ~、これから俺の兄貴がスゴい技を見せるからあっちに行くぞぉ~」

「わぁ~い、やった━━っ!」


 そう言ってゴーシュの背中を押しながら、子供達を引き連れて龍斗は少し離れたところへ向かって行った。


 その一行と入れ違いに真鍋社長と()()女達がこちらへとやって来た。


「お前らが来た途端、主役を奪われたよ。こっちに加わりたいって女性陣に突き上げられてな(笑)」

「もうっ、社長ったら。内緒だって言ったじゃないですかぁ」


 そう言ったのは取り巻きの一人。ほとんどがミーハー丸出しでRyoをガン見している。目当てだったもう一方の片割れ(龍斗)は、恐ろしげな男と一緒に子供達と小川の方へ向かったため、ヒールを履いた自分達では無理だと諦めコッチへ来たんだろう。

 ただ本郷とかいう女だけは、Ryoを気にしながらも(こう)君への視線を外さない。

 今からこの女をキャンと言わせる気満々の私は、(こう)君の目を逸らすために退場させることにした。


「Ryoも(こう)君も久しぶりやろ? こんな時ぐらいしかお互いゆっくりできんのやから、あっちで座って話でもしてきた

ら?」


 わざと二人をこの場から逃がそうとした私の言葉に、本郷が食い気味に止めにかかった。


「えぇ~、せっかくお近づきになれると思ったのにぃ。私、吉川さんともっと話がしたいなぁ~♪」

「ッ!!」


 おっとぉ~、本郷が猫なで声で(こう)君へ話しかけた途端、一瞬でRyoの顔色が変わったぞ。

 これ⋯⋯私の出る幕ないんじゃね?

 初対面の時、(こう)君本人から直々に紹介された私にですら()()態度だったRyoが、赤の他人の図々しい女を大事な叔父さんに近づけるはずがない、絶対に!

 案の定、営業スマイル全開のRyoが本郷へ問いかけた。


「忙しい中、仕事の合間に何とか時間を作って久しぶりに会えた俺と叔父の団欒を邪魔するほど大事な話って何?」

「あっ、いや、邪魔するつもりじゃ⋯⋯」

「ねぇ真鍋さん、今日は()()()()()()がメインなんだよね?」

「あぁ、そうだぞ」

「じゃあ家族の俺が(こう)さんをあっちに連れてっても問題ないよね?」

「もちろん!」

「だって。(こう)さん、あっちでゆっくり話そうよ」

「行ってらっしゃぁ~い♪」

「う、うん。じゃあ典ちゃん、また後で」


 そう行って(こう)君は腕を引っ張られながらRyoに連れ去られた。一瞬場の空気が凍った感じがしたが、私の「行ってらっしゃぁ~い」で何とか元に戻ったようだ。


「Ryoは叔父さん大好きなんで、(こう)君との時間を邪魔されると途端に機嫌が悪くなるんですよ」

「そうなんですか?」

「まだまだ子供だと思いません?」


 私の言葉に主婦陣が乗ってきたところで、一気に畳み掛けることにした。


「何せ初対面の時に(こう)君から紹介された私と大喧嘩だったんですよ? 普通あんな有名人が一般人のオバサンとガチで揉めます?」

「えっ、本当に?」

「ホント、ホント。いきなり険悪な雰囲気で(こう)君も困ってたし」

「へぇ~、そんなに叔父さんのことが好きなんですね」

「うん、だから今のような関係になるまでかなりの苦労してきた感じかな」


 私がそういうと諦めの悪い女が食いついてきた。


「苦労って例えばどんな?」


 こいつ、さては自分も何とかなるかもって思ってるな?


「ん~、何はともあれ最難関のRyoの許しが出ないと始まらないかな? Ryoのお眼鏡にかなわなかったら即アウトだね」

「そんなに難しいんですか?」


 取り巻きの一人が話に入ってきた。


「Ryoと龍斗の二人から甘えられても動じず、頭をひっぱたけるくらいの度量があれば何とかなるんじゃない?」


 シレッと答える私に、


「えぇ~、そんなの無理ですよ~」


 と、ほとんどの女性陣が戦う前に敗けを認めた。


「あと、自立してない人は無理だろうね。うちは全員が働いてて各自それなりの収入あるからおんぶに抱っこの人はまず無理。まぁ私はご飯作ったりしてるけど、そんなのは外食やら出前で何とかなるし。あぁ見えて部屋の掃除とかは自分達でやってるし」


 私の言葉に本郷が食いつく。


「えぇ~、でもあの三人と比べたら誰だって収入は劣りますよね?」


 おっ? 暗に私が金銭的なお世話になってるってディスってる?

 こいつとことん諦め悪いな⋯⋯。

 すると、今まで場の様子を伺っていた真鍋さんが声を発した。


「でも吉岡さんもかなりの収入あるでしょ?」

「「「「「えっ?」」」」」


 一斉に周囲からの視線が私に刺さる。


「あいつからちょっと聞いたけど、作家や翻訳の仕事で稼いでるらしいじゃん。翻訳はすごい数こなしてるらしいし、通訳の依頼まであるってホント?」

「えぇ、まぁ、それなりに」


 思いもよらぬところからのパスに慌てたけど、ある意味ナイスフォロー。私が言うより真実味が増すよね。

 してやったりと満足している私の背後から、


「それに資産を一番持ってるの典ちゃんだしね」


 と、龍斗の声がした。


「おっ、おかえり龍斗。てか、どういうことだよそれ?」


 川辺に子供達と一緒に消えていた龍斗が戻ってきて、会話の内容が聞こえていたようだ。つい口を挟んだようだが、真鍋さんは自分の知らない情報に興味をそそられたようだ。


「典ちゃん俺達の中で一番金持ちだよ、たぶん」

「ちょ、龍斗ッ!」

「マジかよ?」

「えっ、嘘?」

「えっ、えっ、どういうこと?」


 騒然となった。

 龍斗のバカ野郎。そこまで言う気なかったのに。


「要するに典ちゃんは俺達や金目当てでもなく、純粋に(こう)さんのことが好きってことだよ。だから俺らも認めてんの」


 何てことはないような口振りで、肉に手を出しながら答える龍斗。まぁ、この子がこう言ったからにはこれ以上のことを突っ込んでくるバカはいないだろう。丸く収まったからいいか。

 と、一安心したのも束の間、ゴーシュが全てをぶち破る豪速球をど真ん中に投げ込んできた。


「それにあいつ自身がリコにベタ惚れだ。他の女がつけ入る好きなんぞ一切ないな⋯⋯」


 急に殺し屋のような男が会話に入ってきたため、女性陣は一瞬で視線をそらした。

 そうとは知らぬゴーシュは、缶ビールの蓋をプシュッと開けゴクゴクと喉を潤してからトドメを刺した。


「特に⋯⋯」


 周りを見回した上で、視線を本郷にロックオン。


「こういう女は絶対無理だな。あいつの一番嫌いなタイプだ」


 顎をクイッとしながら本郷にまさかの戦力外通告。

 同じビルで働いているからと色々と考えて、チクチク遠回しに諦めさそうとしていた私の作戦を根本から引っくり返すような爆弾をいきなり投下ですか?

 まぁ、仕方ない。当初の予定は狂ったけど、一応目的は果たせたんじゃない⋯⋯と私が安堵のため息をついた瞬間。


「もし二人の邪魔をする奴がいれば俺が()す」

「ゴーシュッ!!」


 その時、真夏のバーベキュー会場は体感温度が一気に10℃ほど下がった気がした。







次回はちょっとしたオマケです。

かなり短めになっております。

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