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月下紋次郎、松下鴎、桶川散魅の三人を助けた女。
名前をシズエ・タカミザワ、年齢は28歳。
彼女が日本風英語ネームらしき名乗った時、三人驚いた。
「それでは、店長。この金額で納得してもらえますね」
「ああ。これだけもらえりゃ、店直しても釣りがくるよ」
「そういうことは、言わない方がいいと思いますよ」
話を聞いていた紋次郎が拳を握りながら震えている。
「そうみたいだな、すまんね」
「いいえ。これで、この三人のことを水に流してくださいね」
「おう! あんたんところには世話になってるからな」
「それはどうも……」
「おい! あんたらもまたウチの店に来いよ、その時は客でな! アハハハハッ」
店長の言葉を聞いて、紋次郎だけではなく二人も怒りで震えていた。
「……一応、領収書を出してもらえますか?」
「領収書かー。いいよ、いいよ、店の方に出しておく? それともシズエちゃん?」
「店でお願いします」
「あいよ、ちょい待ってな」
店長は言いながら、そのまま店から出てどこかへと消えていった。
「あのよ……店長がどこか行ってしまったよ?」
紋次郎が困り顔でシズエに訪ねた。
シズエは笑顔で答える。
「心配いりませんよ。この辺の元締めのところへ行っているのでしょう」
「元締め?」
「ええ。先ほどの用心棒たちは囲ってる人のことですよ」
「はー。そんなのおるのか」
「ええ……」
しばらくすると店長が領収書を持って戻ってきた。
シズエは領収書を受け取り、紋次郎たち引き連れ露店から出て行った。
シズエが先行する形で三人は後を付いていく。
紋次郎たちが、今まで見たことがない街に溢れかえる活気だった。
街は、祭りみたいな雰囲気。
そこら中から笑い声や怒声や話し声が聞こえ。
歩いている人は誰一人として頭を下げて歩いておらず。
背筋を伸ばし顔を上げ早足で歩き。
人々は活力溢れていた。
「みんな元気じゃの」
紋次郎は人々を見た感想をポロッと呟いた。
それを聞いたシズエが小さな声で言った。
「この街は無理してでも気張らないと生きていけませんからね」
「どういうことなの?」
「役人の取り立てが他のエリアより厳しいんですよ」
「……」
「私たちが今いるエリアは、エリアーC……別名、商業エリアと呼ばれてますね」
鴎が紋次郎の腕に絡みつき、散魅が額に青筋を浮かばせた。
それからシズエは口を閉じ、笑顔で歩いていく。
その後を紋次郎たちは追いかけるように後を追った。
「ねえ、紋ちゃんシズエさんって足が速いね」
「紋次郎からゆっくり歩くように言ってよ」
「ん? 何か言ったかの?」
紋次郎はシズエの後ろ姿を見ながら、これからを考えていた。
「ちょっと紋次郎! あたしのこと無視しないでよ!」
「あーーーっ! さっき私たち無視してシズエさんと!」
「いきなりシズエさんの手を握ってたよね! どういうことなの紋次郎!?」
「紋ちゃん! もう!」
紋次郎は二人の声など、どこ吹く風で反応せずに、シズエを追いかけていた。




