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「ここが私の……家というか仕事場? というか両方です!」
月下紋次郎、松下鴎、桶川散魅の散にはシズエ・タカミザワ宅の前にいた。
シズエに助けられたので、紋次郎が恩返しをするため着いてきたのだ。
「ほーここが、シズエさんの家かいの」
「はい」
紋次郎たちの目の前には横に広がった平屋建ての建物があった。
建てられてからかなり年数が経っている建屋だ。
「なにか、いい臭いがするね」
「松下さんは相変わらず、いやしいねですね」
「なんで! なんで臭いでいやしい呼ばわり!?」
「さーなんででしょうね?」
鴎と散魅が言い争い始めた。
それを見て、紋次郎は、はーっとため息をついた。
シズエは紋次郎を見ていたらしく、苦笑した。
「うちは、昔からお弁当を作ってお届けしてるんです。おもにギルドなんかに……」
実家の商売をさっらっとシズエは説明した。
「ほー弁当の宅配かの。あれじゃな仕出し弁当みたいなもんかの」
「仕出し? 何それ紋次郎」
「松下さん……あなた、仕出しも分からないの?」
「……さすが年増ね、なんでも知っているといいたいのね」
「まーまー、二人とも止めんかの。仕出し弁当っていうのは……」
「お弁当のデリバリーのことよ、それも大人数向けのよ」
散魅が仕出し弁当のおおまかな説明をし、鴎がなんとなく納得した。
三人がアホなやり取りをしているうちに、シズエが弁当工場の入口の前にいた。
「三人とも早くー!」
「おう!」
紋次郎が早足で駆けだした、その後を追う鴎と散魅だった。
ガラガラ-。
シズエが弁当工場の引き戸を開けた。
中には人間、亜人、モンスターが大勢ところ狭しと弁当を作っていた。
「ここが、ウチの工場よ」
「「「……」」」
紋次郎たち三人は声を失っていた。
初めて人間以外の生物を見たからだ。
それも、一匹、二匹じゃないウジャウジャといた。
鴎は驚きのあまり腰を抜かし、地面にへたり込み。
散魅は人外を見たとたん外に走り出し、遠くから紋次郎たちを見ていた。
「人……以外も働いてるかの……」
「ええ。人も人外も同じ命ですからね」
「心が広いの」
「生きている以上、人と同じ何かを食べなければなりません、食べ物を買うためにはお金が必要なんです」
「……シズエさんが説明するってことは、この状況は珍しいことかの」
「はい……。人外と言っても外見が違うだけですから……差別する理由にはなりません」
「シズエさんが言うなら、ここではその言葉が正しいかの」
「……はい」
「なら、ワシらはあいつらとは仲間じゃの」
「そう、思っていただけるなら嬉しいです」
「まかせとけの。ワシも昔から色々な人たちを見てきたからの……」
「……」
「じゃから、ワシは本能を信じることにしとるのよ」
「……」
紋次郎は弁当工場で働く従業員たちを見て、大きくうなずく。
「みんな楽しそうに弁当を作っておるからの。ワシは信じるよ」
「……え?」
「心じゃ! こいつら食べてもらう人に喜んでもらいたくて弁当を作っておるのよ」
紋次郎は弁当工場の中に入り込み、楽しそうに言った。
「ワシもシズエさんの弁当工場で働いて恩返しじゃの。ダメかの?」
「え? え? え?」
「ワシと、あの二人。ここで働かせもらえんかの?」
「いいけど。ウチの仕事キツいわよ?」
「力仕事ならまかせとけの」
「……他の二人はあなたがいいならよさそうね」
鴎は紋次郎の背後に隠れながら、黙って頷く。
散魅は離れたところで頭上に両手で丸を作っている。
「なら、いいわ。ちょっと来て」
シズエは弁当工場の中へと歩き始めた。
その後を追いかける紋次郎、鴎、散魅の三人だった。




