依頼
この国は、4月1日と2日で学年が分かれる。
それが例え、3つ子でも。
熱が下がった。今度2人にはお礼を言っておこう。
ナリソコナイ、そんな夢を見ていた、気がする。
あの時のことは、もう忘れたものと思っていた。
だって、もうそんなこと分かりきっている。
「銀鏡 柚弦」は、なり損ないの出来損ないだ。
「ナリソコナイ、かぁ」
独りごちた。途端、隣のベッドからすごい音がして人が落ちてきた。
「ユズ、起きたの?起きたね!おはよう!」
いつになくハイテンションだ。
「おはよう」
私が返すと、落ちてきた凛ちゃんは笑顔になったあと、真剣な顔になった。
百面相だ。面白い。
凛ちゃんによると、一斉部会で茶菓子を頬張ってほくほく寮に戻ったら、部屋に憧れの先輩、ユミがいて、思わず叫びそうになったらしい。しかし、私が寝ていることに気付いて、ギリギリで堪えたそうだ。そのあと、ユミに言われたことが引っかかっていると。
「ねぇユズ、トラウマってなんのこと?ユミ先輩に『ユズちゃんがトラウマに堕ちそうになったら助けてあげて』って言われたんだけど」
凛ちゃんは、たまに空気が読めない。
「なんでもないよ」
とだけ返しておいた。
あれはトラウマでもなんでもない。
事実を突きつけられただけなのだから。本当に。
そういえばそんなこともあった。
今食堂でそんなことを考えている。
目の前には月見里彩雨先輩、栗木優先輩がいて、隣には凛ちゃん。
私は熱を出す前、この2人に絡まれたことを思い出していた。
「で、ゆづる」
月見里彩雨先輩、もとい、あやめ先輩は急に呼び捨てだ。
「依頼があるんだけどさ」
とここで凛ちゃんが、自分がいると気まずい空気を察して先に教室へと戻って行った。
凛ちゃんは、たまに空気が読める。
あやめ先輩はいつになく真剣だ。
「ゆづる、うちの部活に入ってくれない?」
青天の霹靂!柚弦に100のダメージ!
「あやめ〜、ユズが固まっちゃったよ〜?」
ゆう先輩は優しい。名前の通りだ。
少しHPが回復した音がする。
ゆう先輩は続ける。
「私たちは、ユズが入ってくれたら嬉しいな〜」
なんで自分、どうして、と考えて気付いた。
モモやユミの評判か。
ここでこの人たちが2人の名前を出したなら、すぐに断ろう。
ナリソコナイだから。
ゆう先輩は続ける。
「前に図書館で見た時に気付いたの〜」
何に。
「指の細かい動きが美しいなって〜」
.....!
「......ゆづるだから、言っている」
あやめ先輩のその言葉が、決め手だった。
初めてユミたちの知らない道を、モモたちと比べられないで歩むことを決めた瞬間だった。
読んでくださりありがとうございます!
この作品は難読苗字が多いです。完全に私の癖によるものです。苗字ってどれもかっこいいですよね。
ではまた!




