朝焼けの海と、ふたりで描く未来の地図
黎明の静寂と、愛おしい朝の目覚め
八月中旬、午前五時三十分。
沖縄の夜がゆっくりと明ける頃、プライベート・ヴィラの寝室には、波の音と静かな寝息だけが響いていた。
キングサイズのベッドの上、シーツの海に包まれながら、橘樹は目を覚ました。
「……ん……」
体に残る心地よい疲労感と、腕の中に伝わる温かく柔らかい感触。
見下ろすと、そこには薄いシーツを一枚羽織っただけの夏目涼香が、樹の胸元にすっぽりと顔をうずめて眠っていた。
昨夜の星空ジャグジー、そして部屋に戻ってから交わされた熱い愛の余韻。
乱れた黒髪と、ほんのりと朱を帯びた素肌が、朝の淡い光の中で息を呑むほど美しく輝いている。
(……綺麗だ。本当に……僕の奥さんなんだ……)
樹がそっと彼女の頬に触れると、涼香の長い睫毛がピクッと震え、琥珀色の瞳がゆっくりと開いた。
「……ん……樹くん……?……おはよう……」
「おはよう、涼香。起こしちゃいましたか?」
「ううん……樹くんの腕の中、温かくて気持ちよかったから……」
涼香は満足そうに微笑むと、樹の首元へすりすりと顔を寄せ、彼の唇に小さくおはようの口づけを落とした。
黄金色に染まる海と、ふたりだけのサンライズ
「ねえ、樹くん。……お散歩、行きましょうか?」
二人は軽く身支度を整え、誰もいない早朝のプライベートビーチへと足を運んだ。
水平線の彼方から、ゆっくりと太陽が顔を覗かせる。
空と海が群青色から鮮やかなオレンジ色、そして黄金色へとグラデーションを描いて変わっていく圧巻の光景。
「うわあ……すごい……!」
「綺麗ね……。でも、私には……隣にいるあなたの方が眩しいわ」
涼香は風に髪をなびかせながら、樹の手をぎゅっと握り締めた。
二人の指で輝くプラチナのペアリングが、朝日の光を反射して一際強く煌めく。
波打ち際で足を止め、涼香は樹の肩にそっと頭を預けた。
「樹くん。……この旅行、本当に楽しかったわ。あなたと出会えて、好きになって……こうして夫婦として同じ時間を過ごせていること、全部が私の宝物よ」
「僕もです、涼香。受験生だった頃は、こんなに幸せな未来が待っているなんて想像もできませんでした。……全部、涼香が僕の手を引いてくれたおかげです」
未来への新たな約束と、東京への帰路
「ふふ、じゃあ……これからもずっと、私の手を選択してね?」
涼香は樹の正面に立ち直すと、少し悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「東京に帰ったら、秋学期が始まるわ。講義の予習復習、そしてレポート……大学生活はまだまだ忙しくなるわよ? でも……」
涼香は爪先立ちをして、樹の耳元で甘く囁いた。
「お家に戻ったら、毎日私がとびっきりの愛であなたを甘やかしてあげる。だから……大学でも、私をがっかりさせないでね、私の自慢の旦那様?」
「はい! もちろんです! 涼香に恥じない夫になれるよう、これからも全力で頑張ります!」
樹の力強い返事に、涼香は胸を熱くし、二人は朝日に包まれながら深々と唇を重ね合わせた。
数時間後。
ファーストクラスの機内から見下ろす沖縄の青い海に別れを告げ、二人は思い出をいっぱいに詰め込んで東京へと戻った。
日常という名の、一番甘いストーリーへ
夕方、久しぶりに戻ってきた本郷の新居。
部屋に入ると、慣れ親しんだ我が家の匂いが二人を迎えてくれた。
「ただいま、私たちの家……!」
涼香はスーツケースを置くのもそこそこに、樹の背中から抱きつき、幸せそうに頬をすり寄せた。
「旅も楽しかったけれど……やっぱり、あなたと暮らすこのお部屋が一番落ち着くわね」
「そうですね。……さあ、涼香、荷物を片付けたら夕飯の準備をしましょうか」
「ええ! 今夜はふたりで一緒に作りましょうね!」
試練の受験期を越え、南国のリゾートで深めたふたりの愛。
キャンパスライフと新婚生活という、甘く眩しい日常のページは、これからも二人で仲良く、どこまでも続いていくのだった――。




