表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/31

5章5話:ホーム



▌// [LOG] 2019-03-25 19:35 JST


 地元に着くと、急に冷たい風が戻ってきた。

 明るすぎる東京を見た後では、駅前の暗さと静けさに驚く。駅舎の改札から出ていく人も数人程度だ。駅構内のコンビニも20時で閉店する。

 広い交差点も車が数台だけ。歩行者用信号音が響き渡る。

 駅前ロータリーに、母の車と由実姉の車が並んでいた。

 フロントガラス越しに由実姉が僕を見て、プッと、軽くクラクションを鳴らした。

 僕は軽く手を挙げて応じる。


 母の車の後部席に(かなた)空詩(うた)の姿が見えた。

 ついてきたのかよ……

 聡司が車に手を振って笑う。

「大好きなお兄ちゃんのお迎えだな」

「何が大好きなものか。暇持て余してんだ」

 と僕が話している間に、双子が車から降りてきた。

「今から乗るのになぜ降りる」


 聡司がバッグを降ろした。

「拓人」

「なに」

「土産、買ったか?」

「コロッケパン」

「マジそれだけにしたんかよ?」

 聡司は東京駅構内をあちこち動き回っていたが、僕は父に頼まれた文房具を買うために、大型書店に駆け込んでいた。

 聡司が僕に袋を差し出した。

「これ、双子に渡せよ。俺からな」

「甘やかすなよ」

「学食おごれ」

「しょうがねえな」


 聡司に礼を言って、袋を開けるとお菓子が二箱も入っていた。

 すぐ双子に袋を渡そうとしたら、微妙な距離で止まっている。

「ん?」

 僕と聡司を見ている。

 なぜ来ない?


「お土産いらないんか」

 僕が袋を揺らすと、空詩が言った。

「おいでって言わないもん」

「あ?」

「おいでって、いつも言うじゃん」

 奏が口を尖らせる。

「そんなこと言うかあ」

 聡司に「言う」とあっさり言われた。

 気づかなかった。

「おいで」

 と言ったら、双子が納得した顔になる。

 双子は子犬みたいに駆け寄ってきて、僕にべったりくっついた。

「なんだよ。くっついて」

「おみやげ!」

「けっ、菓子狙いか」


 聡司が由実姉に頭をくしゃくしゃされながら車に乗った。

 それを見送りながら僕は笑い、小さな弟と妹の温もりに少し慰められた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ