5章5話:ホーム
▌// [LOG] 2019-03-25 19:35 JST
地元に着くと、急に冷たい風が戻ってきた。
明るすぎる東京を見た後では、駅前の暗さと静けさに驚く。駅舎の改札から出ていく人も数人程度だ。駅構内のコンビニも20時で閉店する。
広い交差点も車が数台だけ。歩行者用信号音が響き渡る。
駅前ロータリーに、母の車と由実姉の車が並んでいた。
フロントガラス越しに由実姉が僕を見て、プッと、軽くクラクションを鳴らした。
僕は軽く手を挙げて応じる。
母の車の後部席に奏と空詩の姿が見えた。
ついてきたのかよ……
聡司が車に手を振って笑う。
「大好きなお兄ちゃんのお迎えだな」
「何が大好きなものか。暇持て余してんだ」
と僕が話している間に、双子が車から降りてきた。
「今から乗るのになぜ降りる」
聡司がバッグを降ろした。
「拓人」
「なに」
「土産、買ったか?」
「コロッケパン」
「マジそれだけにしたんかよ?」
聡司は東京駅構内をあちこち動き回っていたが、僕は父に頼まれた文房具を買うために、大型書店に駆け込んでいた。
聡司が僕に袋を差し出した。
「これ、双子に渡せよ。俺からな」
「甘やかすなよ」
「学食おごれ」
「しょうがねえな」
聡司に礼を言って、袋を開けるとお菓子が二箱も入っていた。
すぐ双子に袋を渡そうとしたら、微妙な距離で止まっている。
「ん?」
僕と聡司を見ている。
なぜ来ない?
「お土産いらないんか」
僕が袋を揺らすと、空詩が言った。
「おいでって言わないもん」
「あ?」
「おいでって、いつも言うじゃん」
奏が口を尖らせる。
「そんなこと言うかあ」
聡司に「言う」とあっさり言われた。
気づかなかった。
「おいで」
と言ったら、双子が納得した顔になる。
双子は子犬みたいに駆け寄ってきて、僕にべったりくっついた。
「なんだよ。くっついて」
「おみやげ!」
「けっ、菓子狙いか」
聡司が由実姉に頭をくしゃくしゃされながら車に乗った。
それを見送りながら僕は笑い、小さな弟と妹の温もりに少し慰められた。




