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攻撃できないB級盾使いの俺、勇者と四天王の保護者兼“常識枠”になる 〜面倒事に巻き込まれた俺の世直し旅〜  作者: 街角のコータロー
聖教国編

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第24話: 秩序の重さ

聖堂の会議室は、音を吸う。


高い天井。

長い卓。

外の喧騒は届かない。


刻印施療一時制限から三日。


数字は安定している。


削れの報告は減少。

神性流動は平準。


報告書が整然と並ぶ。


ベルンハルトはその一枚を静かに閉じた。


「現段階では、有効です」


感情はない。


事実だけ。


卓の向かいに座るのは、枢機卿ヴァルツ。


指を組み、目を閉じている。


「混乱は抑えられた」


低い声。


「それが第一だ」


秩序を守る者の声だった。


彼にとって、正義より先にあるのは安定だ。


混乱は信仰を腐らせる。


信仰が腐れば、国が揺らぐ。


だから制限は“必要悪”ではない。


“必要”だ。


その隣にフィリアが座る。


若い。


だが視線はまっすぐだ。


「秩序は手段です」


静かに言う。


「目的ではありません」


ヴァルツの視線が向く。


否定ではない。


確認。


フィリアは続ける。


「数字が安定しても、祈りが減れば意味がない」


ベルンハルトがわずかに首を傾ける。


「祈りは主観です」


「観測はできません」


穏やかだ。


だが譲らない。


「観測できぬものを基準にすれば、制度は揺らぎます」


理論は完成している。


穴はない。


フィリアは息を整える。


「揺らぐからこそ、人は選ぶのです」


言葉は若い。


だが弱くない。



会議室の隅。


カイルは立っている。


席には着かない。


発言を求められてもいない。


それでも視線は集まる。


ベルンハルトが言う。


「勇者の神性は安定値です」


「基準として運用すれば、流動の揺れは抑えられる」


事実だ。


勇者の光は強い。


固定すれば、揺れは小さくなる。


ヴァルツが頷く。


「象徴が基準となることは、秩序の助けになる」


正しい。


誰も間違っていない。


カイルが口を開く。


「俺は基準にならない」


声は大きくない。


だが部屋に残る。


ベルンハルトは表情を変えない。


「拒否は可能です」


「しかし、社会的効率は下がります」


冷静だ。


感情をぶつけない。


「効率で人を測るのか」


フィリアが問う。


ベルンハルトは即答する。


「社会は測定なくして運用できません」


事実だ。


ヴァルツが目を開く。


「勇者殿」


「混乱が戻れば、責は誰が負う」


重い問いだ。


カイルは答えない。


答えられない。


会議室の外で足音が響く。


扉が叩かれる。


治癒士が一人、報告書を持って入る。


「規定内ですが……軽症の長期化が確認されました」


小さな数字だ。


大きな問題ではない。


まだ。


ベルンハルトが目を通す。


「想定範囲内です」


即座に言う。


「制度初期には誤差が出ます」


理屈は通る。


フィリアは報告書を見つめる。


その紙の向こうに、顔があると知っている。


ヴァルツは沈黙する。


秩序は守られている。


だが、どこかがきしむ音がする。


カイルは拳を握る。


拒否はした。


だが、何も変えていない。


ベルンハルトが静かに結ぶ。


「安定は進行中です」


その言葉に嘘はない。


だが、部屋の空気は重い。


正しさがぶつかっている。


勝者はいない。


まだ。


会議室を出ると、廊下は静かだった。


遠くで鐘が鳴る。


祈りの時間だ。


だが、聖堂の声はどこか小さい。


秩序は守られている。


未来は、まだ決まっていない。



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