表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻撃できないB級盾使いの俺、勇者と四天王の保護者兼“常識枠”になる 〜面倒事に巻き込まれた俺の世直し旅〜  作者: 街角のコータロー
聖教国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/20

第5話:「召喚」

王都の朝は、鐘から始まる。


だがその日は違った。


低い。


重い。


間を置かず三度。


広場の空気が凍る。


人々の動きが止まる。


「……審問だ」


誰かが呟く。


その言葉は小さい。


だが波紋のように広がる。


審問。


この国でそれは、


“正しさの確認”を意味する。


そして確認された正しさは、


決して覆らない。



治癒院の前。


白衣の騎士団が整列している。


純白の外套。


胸元の聖印。


一糸乱れぬ無言。


中央の男が一歩進み出る。


「治癒士レオン」


姓は呼ばれない。


役職のみ。


それだけで十分だ。


周囲の視線が集まる。


患者の母親が息を呑む。


子供が袖を掴む。


「先生……?」


レオンはその手を静かに外す。


優しい動作だ。


だが迷いはない。


包帯の巻かれた脛から、


うっすら赤が滲んでいる。


「用件は」


平坦な声。


「教義解釈に関する逸脱の疑い」


ざわめき。


“異端”とは言わない。


だが意味は同じだ。


逸脱。


外れた者。


この国ではそれだけで十分。



カイルが前に出る。


「何を――」


俺は腕を掴む。


「今じゃない」


怒鳴れば、火はつく。


だが燃えるのは俺たちだ。


レオンがこちらを見る。


その目は、静かだ。


昨日よりも。


「想定内だ」


小さく言う。


「逃げねぇのか」


カイルの声が震える。


「逃げれば、“確認”になる」


否定も肯定も不要。


この国はそういう仕組みだ。


レオンは歩き出す。


騎士団に囲まれながら。


背筋は伸びている。


だが俺には分かる。


足取りが重いのは、


傷だけのせいじゃない。


覚悟の重さだ。



その瞬間。


遠くの壁に、一瞬だけ焦げ跡が見えた。


円。


炎の形。


次の瞬間には消える。


見間違いかもしれない。


だが俺は見た。


誰かが、見ている。


監視とは違う視線。


見届ける目だ。



「公開審問は三日後、中央大聖堂にて執行する」


隊長の声が響く。


中央大聖堂。


この国の正義が集約される場所。


判決は“導き”として下される。


覆ることはない。


人々が目を伏せる。


抗議はない。


怒号もない。


正しさが恐怖を伴うとき、


声は消える。



騎士団が去る。


沈黙。


カイルの拳が震えている。


「何でだよ……あの人、ずっと人を助けてたじゃないか」


「この国では」


シオンが静かに言う。


「善よりも、秩序が優先されることがある」


剣を握る手に力が入る。


「されど某は見極める。

 本当に逸脱かどうかを」


カイルが顔を上げる。


「俺も行く」


迷いはない。


だがまだ荒い。


俺は思う。


これは剣の戦場じゃない。


理の戦場だ。


声を荒げた方が負ける。


怒った方が孤立する。


試されるのは、力じゃない。


立ち続ける胆力だ。



宿へ戻る道。


レオンのいない通りは妙に広い。


「ダグラスさん」


カイルが呼ぶ。


「俺、何もできないのかな」


初めての弱音。


俺は少し考える。


「できることはある」


「なんだ」


「見ることだ」


「……それだけかよ」


「ああ」


立ち止まる。


「力で解決できない場面を、

 逃げずに見ろ。


 正しさが人を傷つける瞬間を、

 ちゃんと目に焼き付けろ」


カイルは黙る。


悔しさが滲む。


だが逸らさない目だ。


少しだけ、変わった。



その夜。


宿の扉の下に紙が滑り込む。


赤い蝋印。


聖教国の紋章。


カイルが開く。


短い。


「勇者カイル。

 公開審問への出席を命ずる」


静寂。


俺は息を吐く。


巻き込まれた、じゃない。


最初から含まれていた。


レオンの審問ではない。


勇者の審問だ。


この国は試す。


力の象徴が、


秩序に従うかどうかを。


カイルの手が震える。


恐怖。


怒り。


そして決意。


「……行く」


小さい声。


だが逃げない。


俺は頷く。


ここからだ。


勇者が、


“力以外”の戦場に立つ。



三日後。


中央大聖堂。


鐘が鳴る。


王都が見守る。


正義の名の下に、


一人の治癒士が立つ。


踏み潰されるのは、


灯か。


それとも――


この国の、灰か。




もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、感想などをいただけると執筆の励みになります! よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ