第280話 放課後ティータイム
「やぁ、君たちか。はじめまして、じゃないよね」
嫁さんが連れて来た男女に僕は気さくに挨拶した。
貴族家の子弟や令嬢が集まる喫茶店のような食堂に、突如として引っ張り込まれてしまった二人の男女の学生は、生きた心地もしない、というような顔面蒼白の表情で凝り固まっている。
「支払いの心配なら必要ありませんわ。ここは全て寛大なるお兄様が持ってくださいますので。どうぞ、こちらへ」
なんと、ここで王女ラクティフローラが自ら立ち上がり、優しく微笑して彼らに座るよう椅子を指し示した。
「ほらほら!遠慮しないで!私がね、あなたたちとお話ししたいの!」
それでもコチコチになっている女子学生と男子学生の肩を持ち、無遠慮に無理やり椅子に座らせるのは嫁さんだ。
二人は、嫁さんとラクティフローラの間に並んで席についた。いきなり訪れたVIP待遇に、もはや頭と心が追いついていない様子である。可哀想なことに二人とも目の焦点が合わず、汗だくだ。
一方で嫁さんは、楽しそうに自身の思いを語った。
「私ね、今日のうちに友達作りたかったんだ!せっかく学校に通えるようになったんだから、昔できなかったこと、いっぱいやりたくって!」
「それで、この子たちを連れて来たのか。まぁ、僕も貴族っぽいヤツらより、彼らの方が好感を持てるかな」
「いいでしょ?今朝、見かけた時、なんとなく、この子、初めて会った気がしなかったから」
「……え?」
嫁さんが妙な言い回しをするので、僕は別の意味で、以前にぶつかった女子学生のことが気になった。
「君、名前は何て言うの?」
「あ、あたいは……プリムラと……申します」
これで顔を合わせるのが3度目である女子学生は、ついに名前を教えてくれた。それを見て、隣の男子学生も意を決したように答える。
「おれは、シスルです」
「プリムラとシスルか。僕は、蓮・白金だ。こっちは妻の百合華。で、娘の牡丹。よろしくな。二人とも、この国の出身かな?」
「え、ええ。そうです……」
「おれたちは、同じ村から来ました」
自己と家族の紹介をしつつ、彼らの出身地を尋ねてみたが、特に地球人らしき特徴も見当たらない。不審に思って僕は嫁さんに聞いた。
「百合ちゃん、初めて会った気がしないって、どういうこと?」
「だから、なんとなくだよ。見た瞬間、友達になりたいなって思ったんだ」
「ああ、そういうことか……」
嫁さんの感性をいつも頼りにしている僕であるが、今回はどうやら深読みし過ぎたようだ。取り急ぎ、僕は嫁さんがしでかした、拉致に近い勧誘を謝罪した。
「二人とも、ごめんね。ウチの嫁さんが強引で。ここには王族とか貴族家の人間もいるけど、僕を含めて、庶民も多いんだ。何も気に病む必要はない」
今、喫茶店のテラス席に集っているのは、僕、嫁さん、牡丹、ラクティフローラ、シャクヤ、ダチュラ、カエノフィディアである。このうち、王族はラクティフローラで、貴族令嬢はシャクヤだ。それ以外は、皆、平民であり、身分的には彼らと対等なのである。
とはいえ、僕を除くと、全員が美形揃いだ。僕が裕福になっているため、装いもそれなりに高価な素材で出来ており、客観的には、どう考えても上流階級の集まりに見える。
質素でツギハギだらけの衣服を着ているプリムラとシスルには、自分たちがあまりにも場違いな所にいるという実感があった。
たまりかねたシスルは、隣のプリムラに肩をぶつけながら催促した。
「プ、プリムラ、こういう所、来たいって言ってたよな。お前からしゃべれよ」
「そ、そそそ、そったらこと言ったって!無理なものは無理だ!シスルこそ、大地主の息子なんだから、しっかりせんといかんじゃろ!」
「地主の息子って言ったって、農家のせがれであることに変わりねぇべさ!」
動揺しすぎて二人とも地元の訛りが出てしまっている。そのやり取りを見て、二人が農村の出身であると知ったシャクヤが、おかしそうに笑った。
「うふふ。わたくし、農家の方には尊敬の念を抱いております。皆様のお陰で、わたくしどもはおいしいパンを食べられるのですわ。申し遅れましたが、わたくしはシャクヤと申します。本名はピアニーですが、ハンター名のシャクヤでお呼びください」
それを受けて、ラクティフローラも微笑して告げた。
「私はラクティフローラ。一応、王女なんて肩書があるけど、ここでは気にしないで。私たち、アカデミーで学友を作ることを夢見ていたのよ。どうか、これからは気兼ねなく友人として接してほしいわ」
ちょうど王女の隣に座っているシスルは、その柔らかい表情と優しい声を間近で見聞きすることになり、酔いしれたように見惚れた。
そのデレデレになった彼を見て、ここで初めてプリムラが笑顔になった。
「シスル、顔が真っ赤だよ」
「うるさいな!お前もだろ、プリムラ!」
どうやら次第に打ち解けはじめたようだ。僕は、さらに彼らを安心させるため、先程からずっと静かにしている侍女を紹介した。
「で、そこにいるのが、カエノフィディア。彼女は学生じゃないんだけど、普段はウチで侍女をしてくれてるんだ。娘のお守り役として来てもらってる」
「え!侍女さんが主人と一緒にお茶を飲んでるんですか!?」
仰天しているプリムラに嫁さんが笑顔で答える。
「それがウチのやり方なの」
「な?ここには、身分の上下で人を差別する人間は一人もいないんだよ。だから、僕たちも何も意識せず友達になろう」
そして、僕が彼らの疑問と不安を払拭するように告げると、シスルが覚悟を決めたように恐る恐る口を開いた。
「ウ、ウン……じゃあ……レン……でいいかな?」
「ああ。シスル、よろしくな」
ようやく対等な会話をすることができた。生まれ育った世界こそ違うが、僕も嫁さんも、彼らから恐れられるような身分でも存在でもない。これが当然なのだ。
シスルに感化され、プリムラもホッとするように僕たちの名を呼んだ。
「えっと……レンさん、ユリカさん、ボタンちゃん、ラクティフローラさん、シャクヤさん、カエノフィディアさん」
「すごいわね。プリムラちゃん!一発で名前覚えちゃったんだ!」
感心する嫁さんにシスルが語る。
「こいつ、物覚えがすごく良くって、大抵のことは1回見たり聞いたりしただけで覚えちゃうんだ」
この申告には、僕もラクティフローラもシャクヤも驚愕した。
「なんだ、それ!羨ましいな!天才じゃないか!」
「私もかなり優秀な方だと自負してたけど、そこまでの記憶力は無いわ!」
「隠れた逸材ということでございますね」
こういう時、つい僕という人間は実験をしてみたくなる男である。テーブルの上にノートを広げ、サラサラとランダムな数字を書いてみた。
「ちょっといいかな。プリムラ。これを見て」
「はい」
ほんの2秒ほどノートの内容をプリムラに見せたところで、すぐに裏返した。そして、問いかける。
「今、何が書いてあった?」
「15、32、8、9、146、73、55、41、7、12、81、101、33、543」
見事に合っている。ノートを横から覗き見ている嫁さんと共に僕は驚嘆の声を上げた。
「すごっ!」
「一瞬でも、見ただけで覚えてしまうのか!」
なんと羨ましい能力を持っていることか。これほどの記憶力を持ち、現代社会に生きていれば、どれだけ無双することができただろう。この子は、生まれてくる世界と時代を間違えたのではなかろうか。今からでも、現代日本に異世界転生したらどうだろうか。
などと一瞬、夢想めいたことを考えたが、こうなると、この奇跡の出会いをもたらした嫁さんにも感心してしまう。
「さすが百合ちゃんだよね。こういう”持ってる”子を何気なく連れて来るんだから……」
「えへへ。まぁ、そこまで考えてたわけじゃないんだけど」
ところで、そんな僕たち一同の驚嘆には気にも留めず、当の本人であるプリムラは、テーブルの真向かいに座っているダチュラのことを気にしている。先程から、ずっと彼女のことをチラチラ目で追っているのだ。
そして、ついにプリムラは、只今、絶賛男装中のダチュラに言及した。
「あ、あの……ところで、そちらにいらっしゃる御仁は……」
これまで一度も紹介されてこなかった男装の女剣士は、実は、あまり自ら男のフリをしたくないという思いがある。ゆえに今まで黙って過ごしていたのだが、尋ねられてしまった以上、名乗らないわけにはいかなかった。
「ウ、ウン、俺は、ハンターをしているダチュラだ。ここには、王女殿下の護衛を兼ねて、来ている。君たちと同じ庶民の出だ」
男装中のダチュラは、初めて会った時もそうであるが、あえて声を太くし、妙にクールな感じの男を演出する。今も、なにやら、もったいぶった様子で、カッコつけたしゃべり方で、自己紹介した。
ところが、どうもそれがプリムラのツボにハマったらしい。彼女はウットリした顔で尋ね返した。
「ということは、剣一筋で、このようなお方たちと親しくなられたのですか?」
「あ、あぁ……」
一瞬、言葉を詰まらせたダチュラは、僕と嫁さんに視線を移しつつ、ちょっとバツが悪そうに答えた。
「……そこはまぁ、何というか、ここにいるレンとユリカのお陰でもあるんだ」
これに僕と嫁さんはクスッと笑ってしまった。
「なんか、ダチュラに素直に褒められるの、滅多にない気がする」
「だよね」
しかし、頬を紅潮させたプリムラは身を乗り出すようにダチュラを称えた。
「す、すごいです!それでも平民がこのような方々に囲まれて、堂々としていらっしゃるんですから!あたい、心から尊敬します!」
「そ、そう?……ありがとう」
ダチュラは戸惑いながらも照れくさそうに礼を言った。何やら恋する乙女のように彼女に視線を注いでいるプリムラを見ると、ちょっと申し訳ない気持ちになるが、まだダチュラの正体を知らせるわけにもいかない。
すると、嫁さんは、ここで全く予想外の話題を持ち出した。
「ところで、プリムラちゃん。さっき剣術部の練習を見てたでしょ。誰か、お目当ての人でもいるの?」
「「えっ!!」」
これには全員が驚いた。先程、修練場の前にいたにも関わらず、誰もその事実に気づいていなかったのだ。
「さっき、私たちとは全然、別の方向から修練場を見てたんだよ。プリムラちゃんが。だから、気になって声を掛けたんだ」
「へぇーー、そうだったのか。気がつかなかったな」
僕は、ただただ感心するばかりだ。この事実を言い当てられたプリムラは、恥ずかしそうに事情を説明した。
「実は……女の身で恐縮なんですが、あたい、剣術にも興味がありまして。こっそり覗き見してたんです。剣術部に女が入るなんて、バカだと思われるでしょうが」
「バカってことはないぞ」
プリムラの被虐的な謙遜を即座に否定したのはダチュラだ。彼女自身の生き様が、そうさせたのだろう。これにプリムラは、再び頬を赤く染めて感謝した。
「え、あ……ありがとうございます。ダチュラさん」
それにしても、登校初日から、ただならぬ縁があると思っていたが、このプリムラという女子は、稀に見る多才な学生である。こんな子が農家の娘のまま埋もれてしまったら、社会の損失と言えるのではないだろうか。
彼女と、それを支えるように一緒にいるシスルという少年に、僕は大いに関心を抱いた。
「二人は、どこに住んでるんだ?」
僕からの新たな質問には、シスルが答えた。
「おれとプリムラは、学生寮に住んでるんだ。って言っても、ただのオンボロアパートだけどね」
次にシャクヤが、興味深そうに尋ねる。
「アカデミーにいらしたからには、何か夢がおありなのですか?」
「おれは、ここで勉強したことを活かして、自分の村を豊かにしたいんだ」
「あたいは……まだよくわからないんですが、ここで勉強していけば、何かが見えてくると思っていまして」
シスルもプリムラも学生らしい回答で、なんとも微笑ましいと思った。そして、庶民の暮らしを最も理解しているダチュラが、非常に感心しながら二人に告げた。
「それにしても、高額な学費が必要になるアカデミーに送り出してくれるなんて、二人のご両親はよほど大切にしてくれてるんだな。羨ましいよ」
「あ、あぁ…………」
「………………」
ところが、この賛辞についてだけは、なぜか歯切れが悪かった。何か、特殊な事情を抱えてアカデミーに来たのだろうか。ますます興味が湧いてくるじゃないか。
「二人は、よく一緒にいるみたいだけど、恋人同士じゃないの?」
「「……!!!」」
ここで急にウチの嫁さんが直球ストレートの質問を二人にぶつけた。これに仰天しつつ、シスルとプリムラは順番に笑いながら答えた。
「いやいやいやいや!!無い無い!それは無い!確かにこいつ、顔は意外といいけど、そういう対象じゃないよ!」
「昔から、きょうだいみたいに育ってきましたから、シスルをカレシにするなんて、考えたこともないです!ハイ!」
確かに言われてみると、プリムラはダチュラを見ながらモジモジし、シスルはラクティフローラとシャクヤの顔を交互にチラ見しながら鼻の下を伸ばしている。共にイケメンと美少女が好みのようだ。
とはいえ、シスル自身もどちらかと言えば凛々しい顔立ちをしており、むしろ僕よりモテそうに思える。また、プリムラについて言えば、農村生まれのためか、多少の肌荒れが目立ち、衣服が貧相でコーディネートもうまくないため、どうしてもダサく見えてしまいがちなのだが、そのキラキラした大きな瞳は、磨けば光るダイヤモンドの原石のように感じる。
ヘラヘラした貴族階級の学生たちより、余程、良い素質を秘めていると思った。
そんなことを考えていると、ちょうどここで、別の一団が水を差すように僕たちに声を掛けてきた。僕が初日に出会い、今日もなんだかんだで王女たちと名乗り合うことに成功した、5人の貴族学生たちである。
そのうちの1人。彼らの代表格のような男子が、僕と王女に機嫌よく挨拶してきたのだ。彼の名は、確か『バジル』だ。
「やぁ!シロガネくん!ラクティフローラ殿下!ごきげんよう!」
そして、その横には女子学生の1人。名前は『マーガレット』と言ったか。いつもバジルにくっつくように歩いている、いかにも貴族令嬢のお嬢様、という印象の着飾った女子であるが、彼女が声高に笑いながら言った。
「あら、奇遇ですわね、皆様!このような所で再びお会いできるなんて!これもワタクシたちの高貴なオーラが引かれ合って、そうさせるのかしら!オーーホッホッホッホ!」
一国の王女を前にして、これだけのことを言うのだから、本人も相当な家柄の出身なのだろう。これまたベタなお嬢様キャラである。
僕としては、彼らのことはあまり好きではないのだが、こうした上流階級気取りの連中に慣れている王女が、優雅に受け答えた。
「あら、今朝、お会いした方々ですわね。よろしければ、ご一緒します?」
「まぁ!ありがとうございます!王女様にお誘いいただけるなんて、この上ない喜びですわ!」
マーガレットが大袈裟な仕草で歓喜した。
「では、隣の席を繋げてしまいましょう」
すると、カエノフィディアが率先して立ち上がり、僕たちが座っている8人掛けのテーブル席にもう一つのテーブルを寄せてくれた。これでは、本当にファミレスや喫茶店だ。
「ありがとう。では、お言葉に甘えて…………」
バジルが喜んでその席に座ろうとした。他の4人もその後に続く。
ところが、彼らは席の方に移動した途端、急に固まった。こちら側の、あるものに気がついたためだ。
「「…………………………」」
彼らは、店側に背中を向けるように座っていたシスルとプリムラに、当初、気づいていなかったのだ。それが角度を変えた瞬間、全員の目に留まった。
そのシスルとプリムラもまた、貴族学生たちが訪れてから、緊張した顔つきで、息を殺すように静止している。
僕は、突如として何やら気まずそうに硬直した貴族学生たちを不思議に思い、率直に尋ねた。
「どうした?」
「あ、いや……どうやら、この席には虫がいるようだね。ボクらは屋外の席は苦手なんだ。今日のところは遠慮させてもらうよ。申し訳ない。また今度」
引き攣った笑みを浮かべて、バジルはそう言った。そして、仲間たちと共に店を出て行った。嫁さんはそれを見ながら首を傾げた。
「虫?……虫なんていた?」
「……今は考えない方がいいよ」
彼らの言動の意味を推察した僕は、事を荒立てないように、それだけ答えた。この場でそれを言えば、気を悪くしてしまうのはシスルとプリムラだからだ。
正直言って、むしろお邪魔虫がいなくなってくれたお陰で、僕たちは、その後も有意義な会食をすることができた。お茶と共に頼んだデザートにも、シスルとプリムラは鼻息を荒くして、おいしそうに舌鼓を打っていた。
「うふふ。今日は、今まで経験したことのない、穏やかなティータイムを過ごせましたわ。宮殿で貴族令嬢を相手にしたのでは、ここまでざっくばらんな会話をすることはできませんもの」
お開きにするため、給仕人を呼んで会計を済ませた僕に、王女は満足そうに感想を漏らした。これに僕はあえて踏み込まないことにした。
「どうして?ってのは聞かない方が良さそうだな……」
「女の子は怖いからねぇーー」
嫁さんも横でニヤニヤ笑っていた。
店の外に出た後、僕は別れ際にシスルに告げた。
「二人とも、アカデミーでの暮らしは大変だろ。困ったことがあったら、いつでも相談してくれよ」
ところが、彼はこの言葉に不機嫌そうに返した。
「……レン、それじゃあ、対等な友人とは言わないんじゃないか?おれたちは、きみに恵んでもらいたくて友達になったわけじゃない」
「あ、ごめん」
「でも、お茶はご馳走様」
「ああ。また明日な」
「うん。また」
苦言を呈されつつも笑顔で別れた。彼は気持ちの良い男だ。そして、プリムラは元気に明るく、おじぎをした。
「今日はおいしい物をたくさん、ご馳走様でした!」
二人は嬉しそうに楽しそうに学生寮へと帰って行った。僕たちの新居は別方向なので、彼らが見えなくなるまで手を振った。
そんな中、ダチュラが妙にしんみりした表情で、彼らの影を目で追っていた。
「なんだか……あの二人を見てると、昔の自分を思い出すわ。リーフと一緒に一人前のハンターを目指して、右も左もわからず突っ走ってた、あの頃を……」
「ダチュラ……」
なんとも言えない感情で嫁さんがダチュラを見つめている。僕もまた、その感慨に同意した。
「僕も同じようなことを思ったよ。シスルは、なんとなくリーフと似ている部分がある。それと……本人は平凡なのに、才能豊かな女子を見守るように一緒にいるところが、僕とも似てる気がする」
僕としては、世界最強の嫁さんを伴っていることと重なるものがあって、このように言った。ところが、女性陣からは総スカンを食らうことになった。
「いやいや、蓮くんソレ、自分が平凡だって言ってる!?」
「ホントにレンって、時々、イヤミったらしいわよね!」
「レン様が平凡であるなど!それでは、わたくしどもは、何を基準にすればよろしいのでございますか!」
「そんなお言葉は、わたくしが許しませんわよ!お兄様!」
「えぇーーーー」
なぜかダメ出しを受けながら、僕たちは帰途についた。剣術大会に向けて、やる気満々のダチュラは、腕を振り回しながら、意気軒高に歩いている。
「さ!私は私で、サイネリアさんに勝つための特訓をするわよ!早く帰って、鍛錬しなきゃ!」
「じゃあ、私が手伝ってあげようか?」
「やめてよ!ユリカじゃ、次元が違い過ぎて修行にならないから!」
「えぇーーーー」
手伝いを申し出た嫁さんもダメ出しを食らうのであった。
さて、こうして女性陣の登校初日が無事に終わった。
アカデミーでの過ごし方もわかり、講義の感触も掴み、友人まで作ることができて、嫁さんたちにとっては、最高に満足した一日となった。
だがしかし、僕たちの見通しは、少し甘かったのかもしれない。本当の意味で、人の気持ちを理解していなかったのかもしれない。
この異様なまでにスクールカーストがハッキリしている土地で、大っぴらに平民の学生を僕たちのグループに入れたことは、別方面での歪みを生み出す結果に繋がってしまうのだ。
「なぁ、そこのお二人さん。ちょっと待てよ」
学生寮への帰り道、シスルとプリムラを呼び止めたのは、先程、王女の誘いから逃げ出した5人の貴族学生たちであった。
「「…………え?」」
シスルとプリムラは、脅えながら振り向いた。




