アリアちゃんと異世界の少女。
どうしよう。
ナインの悲しみが伝わってくる。
恐怖もあるけどそれよりももっと。
夢で会った? どう言うことだろうと思った時、胸の奥から一つの気持ち、記憶? が、湧き出てきた。
あたしとあきさんのあの刻。それを見ている少女の夢。ああ、これはナインの、チトセさんの心?
さっき聞いた事、あたしにはチトセさんの身体がレイヤー乗算されているって。たぶん、事実なんだろうな。そうすれば全て辻褄があうもん。あたしの身体がまりあちゃんと違うのも。
返さなきゃ、いけないのかな……。
でも、返すって言っても……。
ナインのあのセリフ、まるであたしに成り代わりたい、そうも聞こえる。
それは……、ダメ。
嫌だとかどうこう、じゃ、ない。
あたしの人生はあたしの、そしてチトセさんの人生はチトセさんのもの、だ。
簡単に入れ替わっていいものじゃないはず。
だから。どうしよう……。
立ち竦んでいろいろ考えてしまっていたその時。
「そこの二人。ちょっと尋ねたいことがあるんだけど、いい?」
いきなりそんな声がした。
透き通るような少女の声。
「え?」
思わず声が出て。
そちらを向くと。
金色に光るふわふわの髪をなびかせた美少女が、その碧い目をこちらに向けていた。
でも、この子、存在感が半端じゃない。近くに居たら絶対に気がつく、そんなオーラが漂って。
なんで今まで気がつかなかったんだろう? っていうくらい。
「ちっ」
急に現れた(様に見える?)その子にナインが苛立って、
「あんた、どこの誰か知らないけど、邪魔するなら容赦しないよ?」
黒猫の姿で威嚇する様牙を剥きながらそう言うと、あからさまに全身にオーラを漲らせた。
でも、その彼女は慌てる様子もなかった。
「こういう手合いには我の出番か」
彼女の右手のあたりからそんな声が聞こえたかと思うと、蛇? トカゲ? なんか爬虫類っぽい顔がゆっくりと滑り出すように出てきて。
彼女、そのまま右手を持ち上げてナインに向ける。
掌から伸びるヘビの様な顔、そこから強力な魔力のオーラがほとばしる。あたしにもそれとわかるくらい、金色に弾ける様な光を纏い。
ナインの方が負けを悟ったのか、フサフサに立ち上がっていたしっぽがシナシナと垂れたと思うと、
「ふん!」
と、負け惜しみにも聞こえる声を発してその場から消え去った。
まるで、異世界の魔人?
そんな能力の彼女。
もし彼女が敵なら、あたしなんて叶わない。ナインだって負けるだろう。あきさんなら……。
そんな事考えて。ぼおっとしてしまっていたら彼女、
「ねえ、あなた。大丈夫?」
ヘビ? を仕舞った右手を差し出して、そう優しく話しかけてくれた。
その声に。ああ、このひと良い人だ。あたしは本能的にそう感じ、右手を差し出していた。




