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元魔王軍の武器庫番、レンタル武器屋を開業する。  作者: 河津田 眞紀@受賞2作発売中!
第8話

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賑やかな宴



(──あれから二百年か……)


 ゾギアとゲオルグを倒し、ラトゥリアの街へ帰還し……

 リューマたちは、街を襲った魔族の討伐完了をギルドに報告し、二十万ゼリンという多額の褒賞金を受け取った。


 で。今はその金で、討伐祝いの宴を開いているわけだが……


「アゼリアさん! フリフラ鳥(どり)の丸焼き、おかわりお願いします!」

「ちょっとフリム。さすがに食べ過ぎよ。これじゃあ褒賞金があっという間になくなるじゃない」

「ふっ。強靭な肉体は食事から生まれる。現代の勇者として、君には負けないぞフリム!」

「あなたは無理しないで、ユーリス!」


 宿屋『アルヘナポルク』の酒場兼食堂にて。

 フリムとミレイユとユーリスが、賑やかに食事を楽しんでいた。


 その様を眺め、リューマは思う。


 まったく。どうして人間(かれら)は、揃いも揃って宴好きなのか。

 

 ルドヴィグたちも、何かにつけてしょっちゅう宴をしていた。

 その後、二百年の間に出会った様々な客も、ハイベルグの街で出会ったバッカスも……

 皆、喜びを分かち合い、称え合うのが好きだった。


「あんたら……あんな戦いを終えた後だってのに、元気だな」


 頬杖をつきながら、リューマは呆れたように言う。

 するとフリムが、握ったフォークをぐっと掲げ、


「もちろん! むしろ頑張ったからこそ、お腹が減って仕方がありません! そういうリューマさんは元気ないのですか? はっ。もしかして、見た目よりもおじいちゃんだから、年齢による疲れが……?」

「誰がおじいちゃんだ、失礼な。まだピチピチだわ」


 ジトッと睨み、ツッコむリューマ。

 しかしフリムは、怯むどころかにこにこと笑い、


「リューマさん、ぜんぜん食べていないじゃないですか。このお肉、とっても美味しいですよ? どうぞ食べてください!」

「いや、俺は大丈夫だ。あんたらで食え」

「ならばその肉は僕がもらおう! 何故なら強靭な肉体は食事から生まれ……」

「その話はもういいから。っていうかユーリス、あなたお腹がはち切れそうよ⁈」

 

 なんて、再び騒ぎ始めるので……

 賑やかな三人を残し、リューマは静かに、宿を出た。


 しんと冷えた、夜の空気。

 見上げた空には、銀色の月が昇っている。


 ……モンスターに成り果てたはずの魔族が、知性と力を取り戻した。

 それを手引きしたのは、〈新たなる王〉と呼ばれる存在だという。


 そいつは一体、何者だ?

 モンスターを魔族に戻し、何を企(くわだ)てている?


 ヤツらは、強い武器を求めているようだった。

 いずれまた『魔神器(ファルズボルグ)』を狙いに、リューマのもとへ刺客を放ってくるかもしれない。

 そうなれば、きっと……フリムたちを再び危険に晒すことになる。


「………………」


 リューマは、顔を上げる。

 そして、振り返ることなく、街を去ろうと──

 ──足を踏み出した、その時。



「リューマさんっ!」



 後ろから、フリムに呼び止められた。


 リューマは驚き、振り返る。

 するとフリムが、ミレイユとユーリスと共に、彼のもとへ駆けてきた。


「どこに行くんですか? お祝いはまだ始まったばかりですよ?」


 首を傾げ、尋ねるフリム。

 リューマは少し躊躇(ためら)ったのち……こう返す。


「……俺は、ここにいるべきじゃない」

「え……?」

「魔族に戻った連中が、武器を狙ってまた現れるはずだ。ここにいる限り、あんたらを危険に巻き込んじまう。だから……」

「だから、なんです?」


 フリムは、リューマの言葉を遮って、


「だからこそ、一緒にいるべきじゃないですか!」


 真っ直ぐに、言った。

 意図がわからず戸惑うリューマに、フリムはずいっと近付き、


「わたしたちは強いんですよ? それを認めてくれたのは他でもない、リューマさんじゃないですか。絶対、一緒に戦うべきです!」

「しかし、これは俺たち魔族が起こした問題で……」

「魔族も人間も関係ないですよ! わたしはリューマさんに、この街にいてもらいたいんです!」


 そして、フリムは柔らかに笑って、


「言ったでしょう? わたし、『貸し武器屋リューちゃん』がないと困っちゃうんです。まだまだいろんな武器をお借りしたいですし……スタンプもぜんぜん貯まってないですしね」


 さらに、ミレイユが続けて、


「あなたがいれば、魔族の方からやってくるのでしょう? ふふっ、またレアな素材を手に入れるチャンスだわ……それに、あなたが貸し出す長杖(スタッフ)や、魔族の精神を吸い込んだあの木箱にも興味があるの。勝手にいなくなられたら、わたしも困るわ」

「リューマ! 次は僕に勇者の〝聖剣〟を貸してくれ! いつかきっと、あの剣に認められる『真の勇者』になってみせる! それまで、どこにも行くなよ!」


 ユーリスまでもがそんなことを言う。


 リューマは、ぽかんと口を開ける。

 それから……その口を、ニッと吊り上げて、


「……仕方ねぇな。それじゃあ……もうしばらく、この街にいるとするか」

 

 満更でもない内心を隠さずに、そう答えた。

 フリムは嬉しそうに微笑みながら、リューマの手を引く。


「ほらほら。お店に戻りましょう、リューマさんっ。お食事がいらないならお酒はどうですか? 今夜は褒賞金ですべて奢ります!」

「言ったな? それじゃあ、アンブル蜜酒(みつしゅ)を樽でもらおうか」

「って、それめちゃくちゃ高いお酒じゃないですか!」

「そうよ! 樽で頼んだらいくらするかわかったものじゃないわ!」

「それと、あんたら全員、追加の武器代を徴収するからな」

「む。途中で武器を替えたこと、忘れていなかったのか?」

「当たり前だろ。褒賞金使い切る前にきっちり支払えよ?」

「うわーん、リューマさんの守銭奴(しゅせんど)ー‼︎」


 静かな夜が、賑やかに染まる。

 酒場へと誘(いざな)うフリムたちを見つめ、リューマは──


 ──嗚呼、俺もたいがい宴好きになったな。と……


 一人自嘲しながら、『アルヘナポルク』の扉を、そっと閉めるのだった。



 

一区切りついたので、一旦ここで完結とします。

最後までお読みいただきありがとうございました。


まだまだ書きたいエピソードや、解決させたい本題、明かしていない設定など山ほどあります。

何より、キャラクターたちのことが大好きになってしまったので、またいつか続きを書きたいです。


感想・評価(★印)・レビュー等いただけると大変励みになります。本当に心の糧です……

よろしければぜひお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
完結お疲れ様でした! 仕事で忙しい日々だったのですが、このお話は欠かさず毎日読みにきていました!リューマやフリムに会えなくなるのは寂しいですが、また会えることを信じて、、! 日々の癒しでした、素敵な物…
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