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『四葉のクローバー』学園物語  作者: 優貴(Yukky)


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第1話「春風と四葉の約束」

四月。

桜の花びらが風に舞い、新しい制服に袖を通した生徒たちが校門をくぐっていく。

私立青葉学園。

この春から高校一年生になった少年――

**藤崎悠斗ふじさき ゆうと**も、その中の一人だった。

「高校か……」

新品の学生鞄を肩に掛けながら、悠斗は空を見上げる。

期待。

不安。

その両方が入り混じった気持ちだった。

中学時代は特別目立つ存在でもなく、友達もそれなり。

恋人なんてもちろんいない。

だからこそ高校では何か変わりたい。

そんな思いを胸に抱いていた。

「おーい!」

突然後ろから声が聞こえた。

振り返ると幼なじみの少女が走ってくる。

「悠斗ー!待ってよー!」

「美咲か」

同じ高校に進学した幼なじみ。

朝倉美咲あさくら みさき

肩まで伸びた黒髪と明るい笑顔が特徴の少女だ。

「入学初日から遅刻するかと思った!」

「しないって」

「怪しいなー」

美咲は笑う。

昔からこうだ。

元気いっぱいで、人懐っこい。

悠斗とは家が近く、小さい頃からずっと一緒だった。

「同じクラスだといいね」

「そうだな」

二人は昇降口へ向かった。

そして教室。

一年二組。

悠斗は自分の席を探す。

すると――

「隣だ」

席表を見ると隣は美咲だった。

「やったー!」

美咲が飛び跳ねる。

「一年よろしくね!」

「はいはい」

周囲からは少し羨ましそうな視線が飛んでいた。

幼なじみで隣同士。

まるで恋人みたいだからだ。

しかし二人は全く意識していなかった。

少なくとも今は。

昼休み。

悠斗は校舎裏へ向かっていた。

教室の賑やかさが少し苦手だったからだ。

「静かだな……」

ベンチを見つけ腰掛ける。

春風が心地いい。

その時だった。

「あっ……」

小さな声が聞こえた。

振り返ると一人の少女がしゃがみ込んでいた。

長い栗色の髪。

透き通るような肌。

どこか儚げな雰囲気を持っている。

少女は地面を見つめていた。

「何してるんだ?」

思わず声を掛ける。

少女は少し驚いた顔をした。

「えっと……クローバー探し」

「クローバー?」

「うん」

少女は微笑む。

そして一本の草を見せた。

「四葉のクローバー」

「へぇ」

悠斗は少し興味を持った。

「好きなのか?」

「うん。小さい頃から」

少女は照れたように笑う。

「四葉のクローバーを見つけると幸せになれるって言うでしょ?」

「言うな」

「だから探してるの」

なんだか不思議な子だった。

だが嫌な感じはしない。

むしろ話しやすい。

「見つかった?」

「まだ」

少女は肩を落とした。

「今日はダメかも」

その時だった。

悠斗の目に何かが映る。

足元。

草むら。

「ん?」

しゃがみ込む。

そして一本摘み上げた。

「これじゃないか?」

「え?」

少女が目を見開く。

そこには確かに――

四枚の葉。

四葉のクローバーだった。

「うそ……!」

少女は立ち上がる。

「本当に四葉だ!」

顔いっぱいに笑顔が広がる。

その笑顔は桜よりも綺麗だった。

「すごい!」

「たまたまだよ」

「ありがとう!」

少女は大切そうに受け取った。

「私は白石四葉しらいし よつば

「え?」

悠斗は驚く。

「名前も四葉なのか」

「そうなの」

四葉は恥ずかしそうに笑った。

「だから余計に好きなんだ」

「なるほど」

「君は?」

「藤崎悠斗」

「悠斗くん」

初めて名前を呼ばれた。

不思議と胸が少しだけ高鳴る。

「また会えるかな?」

四葉が尋ねた。

「同じ学校なんだから会えるだろ」

「そっか」

四葉は嬉しそうだった。

チャイムが鳴る。

昼休み終了。

「じゃあまたね!」

四葉は手を振りながら去っていく。

悠斗も軽く手を振り返した。

だがその背中を見ながら思う。

――また会いたい。

そう自然に思っている自分に気付いていた。

放課後。

悠斗は教室で帰り支度をしていた。

すると美咲がやってくる。

「誰?」

「何が?」

「昼休みに話してた女の子!」

「見てたのか」

「見えるもん」

美咲は頬を膨らませる。

「可愛かった」

「そうか?」

「可愛かった!」

なぜか力強い。

「名前は?」

「白石四葉」

「へぇ」

美咲は少し考え込む。

「ライバル出現かな」

「何のだよ」

「なんでもない」

ニヤニヤ笑う。

悠斗は意味が分からなかった。

帰り道。

夕日が街をオレンジ色に染めていた。

美咲と並んで歩く。

いつもの道。

いつもの景色。

だけど今日は少し違う気がした。

四葉との出会い。

新しいクラス。

新しい毎日。

高校生活は始まったばかりだ。

そして悠斗はまだ知らない。

この出会いが未来を大きく変えていくことを。

四葉のクローバーが結んだ小さな縁。

それはやがて――

友情と恋が交差する物語へと繋がっていく。

春風は優しく吹いていた。

まるで新しい物語の始まりを祝福するように。

第1話 完

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