恋する乙女
千年前。
マーリンは何があったか話してくれた。
アーサーは当時もフェルという名前だった。
羊飼いでも何でもない。
フェルとマーリンは当時から夫婦で、他に数人も妻がいた。
ちなみにマーリンは不老不死の代わりに、子供は産めない体となっていた。
だが、不老不死の者達でも子を産める者達がほとんどだ。
そしてその妻の中にリリスという見た目魔族な美しく豊満な女性がいたらしい。
彼女はマーリンが云うには女神で、フェルの転生に合わせて何時も傍に現れるという。
そしてフェルが転生前でこの世界にいない時には、ルルワという黒髪の絶世の美女の姿の、女神に戻るという。
つまりリリスの姿になるのは、フェルが転生した証でもあるみたい。
そのリリスがフェルと贅沢三昧な生活を楽しもうと思って、当時の王国の国王を籠絡して王国を乗っ取ろうとしたらしい。
リリスは見た目魔族だが、心が人とはかけ離れていて人の命を何とも思っていない。
国王を操りフェルの邪魔に成りそうな者を、悉く殺したという。その事はフェルもマーリンも知らなかった。
世間から隔離した地で、スローライフよろしく幸せに浸っていたから……知っていたら確実に止めていた。
そしてリリスがいざフェルを迎えようとした時、どういう加減かルルワという女神に変貌した。
ルルワの美貌に国王は虜になり、せっせと貢ぎ物をした。
ルルワは王宮に瞬く間に逆ハーレムを築き上げた。
年老いた国王を見た目の良い若者に変貌させた。
王宮には美男しか入場できなくし、ルルワは裸体のまま玉座で過ごしていたという。
あらゆるこの世の贅沢を満喫し、王国はもちろん機能不全に陥った。
貴族達は王家を見限り独立し、各地を勝手に切り取り己の領土した。領土はさながらパッチワークのようだった。
反乱を企てた者もいたが、女神ルルワの美男達は超人的な能力を授けられ反乱を悉く潰し、その勢いで反乱を起こした貴族家の者を皆殺しにして消滅させた。
だから貴族家も王家に構わず、好き勝手し出した。
それで形だけとなった王国は無法地帯となり荒廃し、この世の地獄が現れた。
それを懸念した肉体を持つ神々がフェルの元へ集った。
男神ではカインとセト。
女神はアワンにアズラ。
そして初期の人類で不老不死の者達数名。
その中の一人がマーリンだった。
フェルはその神々と接触すると、封印されていた記憶が解放されるようで、当たり前のように彼らと話を始めた。
神々は協議してリリスとルルワが仕出かした尻拭いをすると決めた。
神々は地下に広大な空間を作り、共同で美男の生態ゴーレムを作成した。そこは花々が咲き乱れ泉や小川もながれる地下の楽園だった。
神々はある貴族を飼い慣らし、ルルワにその地下の楽園を献上させた。嬉々としてやって来たルルワは、しこたま強力な酒を飲まされ快楽に耽り、寝込んだ所を神々によって封印された。
その場にフェルもマーリンも居たという。
一時しのぎの楽園は消滅し、無駄に広いダンジョンが残された。封印の間近くにはゴーレムを配置した。
このゴーレムは神々の力を有した者しか壊せない設定にした。
神々の力を持たない人間にとっては、完全無敵な最悪のゴーレムだ。
★
その封印の場所も気になるので、アリエッタとマーリンが旅を再開したら訪れるという。
★
それからは出来レースだった。
フェルはアーサーと名乗り、みすぼらしい格好で街へ出た。
噴水のある広場で絶世の美女マーリンが佇んでいた。
そのマーリン見たさに、人々は広場に集っていた。
そこへアーサーがやって来て、マーリンから王族だと告げられた。そしてマーリンは仰々しく臣下の礼をとった。
勿論全くの嘘デタラメである。
そのまま群衆を引き連れて神殿へ赴き、数百年前に仕込んでいたエクスカリバーの伝説をマーリンが利用した。
何万人が手にしても抜けなかった神剣エクスカリバー!
それが背は高めだが、一般男性並みの力しか無いようにみえるアーサーの手によって抜かれた。
後は簡単だった。
噂は瞬く間に広がり、勝手にアーサーの元へ人々が集った。金髪碧眼のアーサーは綺麗に着飾り、神剣エクスカリバーを掲げ進軍するだけで良かった。
ただ急いで進軍しないで、時を待っていた。
それは王宮に残された逆ハーレムの男達への、ルルワの恩恵が切れる時。
三年近く経ち、美男子に生まれ変わった国王は老いた王へと戻った。力ある美男達も普通の人間並みの力に戻った頃を見計らって一気に王宮へ進軍した。
そして本当に狂ってしまった王の首は落とされ、グラントロス帝国は建国された。
不老不死のマーリンは影に徹し、何時も目深にフードを被り老いた大賢者を演じた。
アーサーはマーリンを深く愛しながらも、表では人間や亜人の妻を数名娶り多くの子を成した。
絶対不死の肉体を持つ神々は身内の尻拭いの為に協力し、ルルワを封印してすぐ解散した。
アズラはアーサーと共に生きる事を選んだ。
これまでの転生でも、アズラはフェルの傍にいることが多かった。
極初期の人類。
不老不死の者達はアーサーの元にあり、妻となり子を成した。
魔族の祖。
エルフの祖。
ヴァンパイアの祖。
ドワーフの祖。
ノームの祖。
ホビットの祖。
各獣亜人の祖達。
全て女性であった。
彼女達はそれぞれ離宮を与えられ、秘密裏でアーサーと愛し合っていた。
そしてアーサーが死ぬと、生まれた自分の子供達を伴って各地に散っていった。
それがグランドロス帝国の建国の伝説の真相である。
その話を聞かされたアリエッタは疑問に思った。
何故みんなこぞってそのアーサーを名乗ったフェルという男に忠誠を誓い、共に生きる事を誓うのだろう……。
その疑問をぶつけてみると、マーリンは微笑んで答えた
「何故だか知らないわ。
ただ彼に会うと、恋しくて愛おしくて仕方なくなるの……。
フェルといる時だけ、わたしは女に戻れるわ」
そんなマーリンは恋する女の色香を漂わせていた。
そしてマーリンはアリエッタを見詰めた
「貴女も本気の恋をしてみると良いわ!
世界が変わるわよ!
ジュリエッタ!!」




