アイタカッタ
わたしはイチ。
今リリス様がジャンガジャンガジャンガジャンガしている。
もうすぐコロシアイ。
わたしは足をチーターのように変える。
ブーツも足に合わせて変形してる。
便利だわコレ。
瞬殺。
モンドウムヨウで瞬殺。
力を溜めて合図と共に飛び出し、ゼロの腹をエグる!
──コロシアエ!!!──
刹那。距離を詰める。
死ね!
最高速度で付き出した手刀!
エグった!
クソ!
すんでで躱された!
すぐさま方向転換!
えっ!
クロエが目の前にいる?
わたしの額にクロエの人差し指!
「ボン」
─なんなの?
距離を離す。
─なんなのいったい?
そして足をバネのようにして跳ねる!
そのまま首を切り落とす!
避けられた!
真横にクロエ!
わたしのこめかみに人差し指
「ボン」
また。距離を取る。
さっきっから
─ボン!ボン!ってなんなの?
舐め腐って!
こうなったら接近戦だ!
幾度となく死線を潜り抜けた!
みんな殺した!
みんなみんな殺した!
お前も死ねよ!ゼロ!
わたしはゼロの懐に潜り込むと手をキリ状にし、刺す!
かわされた。
後頭部にまた指
「ボン」
くそ!
─なんなの?ボンって!
振り向き様両刀で凪払う!
うそ?いない?
また後頭部
「ボン」
「ふっざけんな!」
真横に切り払う!
また消え?下?かがんでる?
眼前にクロエ!
わたしの胸に人差し指
「ボン」
「ボンボンボンボンうっせー」
わたしは突く。
躱され
「ボン」
ふっざっ!
「ボン」
てめ!
「ボン」
死ね!
「ボン」
やべ
「ボン」
うるさい!うるさい!うるさい!
「ボン」
・
「ボン」
・
「ボン」
ハァハァハァハァハァハァハァハァ
わたしは息を切らす。
なのにゼロ。息を乱していない。
こんなに?
こんなに?
こんなに?
こんなに?
差があるの?
ウソでしょ?
認めない!
認めてやるもんか!
殺してやる!
殺して!
殺して!
殺して!
殺して!
殺し尽くしてやる!
死ねや!
渾身の突き
クロエは身を捩っただけ。
こめかみに
「ボン」
★
「あらら」
リリスは呆れる。
差が有りすぎる。
まあ。勝てないとは思っていたけど、もう少し何とかなると思っていた。
クロエちゃん防御すらしていない。
自動防御発動すらしない。
元々イチに勝ち目はなかった。
それはわかっていた。
でもコレじゃあ練習相手にもなりはしない。
あれから3時間。
ボンボンボンボン
もう何百回もやられている。
そろそろかな?
降参させるか?イチを脅して……
ん?
イチとクロエ。
ふたりは離れて見つめあっている。
いや。
イチが睨み付けている。
クロエは涼しい顔。
イチは息も絶え絶え。
足も震えている。
イチは動きっぱなし。
クロエはその場からほとんど動いていない。
誰の目にも勝敗は明らか。
そして性懲りもなくイチが突っ込んでいく!
もう初めの頃のスピードはない。
右手の指を五本とも尖らして
突く
「マイッタ。こうさん。わたしの。マケ」
「へ?」
間抜けな顔をしたイチ。
クロエがそんなイチに凭れかかる。
「ふざけんな……なんなん……」
そう呟くイチにクロエは体重を預け、イチの肩に顎を乗せる。
そして血を吐いた。
イチの手がクロエの腹部を貫いていた。
イチは手を腹から抜く。
クロエは倒れ込む。
ずる。
ずる。
ずる。
イチの体の上から下へ、クロエは重力に逆らわずゆっくりと落ちてゆく。
イチもへたり込み、その太ももの上にクロエの頭がある。
クロエはうつ伏せに倒れたまま動かない
「くろえ!!!」
シロエが叫ぶ。
駆けつけようとするシロエを手で制すグレイ
「リリス。勝敗を宣言しろ」
リリスは頷き
「勝者!イチ!おめでとう!パチパチパチパチパチパチ」
口で拍手しながら、イチとクロエの元へむかう。
グレイはもうそこにいて、クロエの背中に右手を置いている。
それからその右手でぼーっと放心しているイチの胸ぐらを掴み、引き寄せると
ゴン!
思い切り頭突きをかます。
「痛い!」
額をおさえるイチ
「痛いじゃねぇ!痛いのはクロエだ。
もうテメーが勝ったんだ。さっさと治しやがれ!」
胸ぐらを掴んだ手でゆさゆさとイチをゆらす
「無理。わたし心から治したい人じゃなきゃ直せない。だってわたしゼロを憎んでいるもの!」
グレイは胸ぐらを引き寄せ、間近のイチの瞳を睨み付け
「じゃあ!なんでテメーは泣いてんだよ!
ぼろぼろぼろぼろ壊れたジョウロみたいに、涙垂れ流してんだよ!
つべこべ言わずにさっさと治しやがれ!」
そしてイチの両手を掴むと、血を流しつづけるクロエの腰の傷口に置いた
「さっさとしろ!でねえともう一発頭突きかますぞ」
「無理だからぁー!」
泣きながら反論するイチ。
その叫びとは裏腹に手が輝き出し、みるみるクロエの傷を塞いでいく……。
ひょこ
クロエが顔をあげる。
イチと目が合う。
ガバ!
クロエがイチに抱きつく!
「オネエチャン。ずっと。アイタカッタ」
そして抱きついたままわんわん泣き出した。
イチは恐る恐るクロエの背中に手を置く。
そしてぎこちなく撫でる。
それからぎゅっと引き寄せると
「わたしは会いたくなかった……でも……会えて嬉しい……のかな?」
そしてクロエの頭を優しく撫でた。




