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強襲




 格納庫にて虎(イル=ホランギ)を纏う。まずは足、次に腕、そして胸と頭。封印布越しに流れる電流、僕の魔力を吸っていく。でも痛くもなんとも感じない。アウシルの力が補助してくれている。


 「システム始動、作戦を開始する」


 格納庫の扉が開く。黒い空、地面の青、星の世界。

 バチバチ、わずかな雷の音。瞬間、背鰭から雷が現れる。

 瞬間、凄まじい加速によって宇宙を駆ける。

 星空、宇宙では星は瞬かないと今知った。


 「綺麗だ」


 眼下に広がる青い地球。体勢を翻してその青い中に飛び込んだ。

 地面が大きくなる。どんどん大きくなり、視界の半分から黒が消えた。それと同時に赤に包まれる。


 「引力め……」


 大きく揺れる。ガタガタと音を立てて。断熱圧縮によって生じる燃え盛る空気のカーテン。この鎧はこんなものには楽々耐える筈だ、設計上。だから大丈夫。ただ古の時代の物だから少しだけ怖いんだ、そこが。


 「くそ!」


 バコン!視界のほとんどが赤色になった時、どこかの装甲が外れた音がした。


 「こんな事で!」


 左目の布を解く。同時にドクンと心臓が鳴った。


 「バリアさえあれば!」


 火を噴き出す鎧、バリアが広がる。同時にカーテンも広がって外が見えるようになった。


 「海!塔!」


 薄赤のカーテンから見える、砂漠の真ん中に聳え立つ塔。天を貫くような。あれがシュメルの首都、バビロングラードことバビロンの塔である。


 「塔!バリア!!」


 熱のカーテンが消えた時、青い空と茶褐色の塔が見えた。あの塔はそのものが街であり、また巨大な薄青色のバリアがあの塔を覆っていた。

 あの塔に侵入する為にバリアを破壊する、その為のこの鎧だ。


 「使えない!?」


 照準を合わせて何度もトリガーを引く。しかし何も起こらない。背中のキャノンも腕のブレードも全部朽ちてんだ、長い時間で。


 「回れッッ!!」


 身体を半回転、雷の翼を下に向ける。


 「いっけェーッ!!」


 背鰭から巨大な雷が塔を穿つ。瞬く間にバリアは焼き切れる。


 「くっ……」


 ボン!ドカン!うるさいアラートと共に鎧の各所が爆発し始める。


 「不味いな……」


 瞬間、目の前が赤に染まった。同時に轟音と衝撃が訪れる。鎧が爆発したのだ。


 「ゲホッ……」


 天空で咳を一つ、落ちながら。

 もはや鎧は爆発四散し、生身で天空を落ちている。

 雷の翼の残穢、風のうるさい音。やがて砂埃が激しく舞った。

 左目を再び布で封じてから薄汚いローブのフードを深く被る。砂埃が晴れた時、巨大な塔を臨んだ。


 「凄いな……」


 巨塔。ビルのような日干し煉瓦の建物が何千と積み重なり塔となっているような形。今から僕はあの塔に侵入してロベルピエルを捜索、もしくは救出を行いつつ最終目標としてアペプ・アポピスを逮捕か殺害する。

 王として、メンフィスを守る者としての任務。ただ僕の本来の気質、あるいは2人に当てられて僕にも研究者気質が芽生えたのか、僕は今純粋な知的好奇心に駆られてワクワクしてる。どんな街なのか、なぜあんなに高いのか、と。


 「行くか」


 しばらく歩いて塔の麓へ。麓はまるでアトランティスで見たような摩天楼であるが違和感がある。その高層建築の壮大さに比べて道があまりにも稚拙なのだ。だってこの道、ただ砂を掻き分けただけの道じゃないか。タイルもなければ街灯もない。


 「沈んでる?」


 隣のビル、窓となる部分が地面にある。あの公園だってそうだ。滑り台とかブランコとかは置いてあるけどトイレとか手洗い場は無い。またその策のの構造は敷地を分けたりボールが飛び出さないようにという構造ではなく、落ちないようにという構造であった。つまりあの公演は元々はビルの屋上だったのである。

 特に驚くべき事ではなく当然のことなんだけれど、この街は沈んでいるんだ。


 「兄ちゃん!」


 野太い男の声、あそこのバザーからだ。


 「パンか?」


 パン屋、クロワッサンやフランスパンっぽい奴が色々置いてある。


 「お!あんたこの辺のやつじゃねぇな」


 無精髭の生え二の腕の大きな男らしい男、彼はテーブルに肘を付いている。


 「国中を回ってる。ウルの街から」


 「旅の奴か。この街にくるのは初めてか?」


 「あぁ。圧倒されたよ、一目見て」


 「だろ?ならそうだな、割引してやるよ。旅すんなら食いもん要るだろ?」


 割引。多分割り増しする気だろうな。だって僕はここの市場を知らない。つまりカモなんだな。


 「それりゃありがたい。じゃあそうだな、一番美味いやつくれ」


 店主が選ぶのは細長いパン、ちょうどフランスパンみたいなやつだった。


 「塔パン、この街の名物だ。長期保存が効くから旅にもピッタリだろう」


 「そりゃ有難いな。買わせて貰う」


 「30シュケルだ」


 高い、格段に。相場は3シュケルくらいだろう。でも別に良い、お腹空いてるし、金は結構持たせて貰ったしね。


 「良いね。ただ少し高い気がするから、その分としてこの辺の宿屋を教えてくれないか?」


 「あぁ、そこを真っ直ぐ行って左に行って、3個先の通路を通路を右に行ったところに安い割に設備の良い宿がある」


 「ありがとう、しばらくそこに泊まるよ」


 パンと硬貨を交換。去り際店主は健やかな笑顔を浮かべる。僕もそれに返す、すると店主は一度悪い顔をしてから捨て台詞のような言葉を、怪談を話し始めた。


 「お、そうだ。砂に埋もれた場所には入るなよ、幽霊が出るんだとさ」


 「気を付けとくよ!」


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