星と雪の聖夜
エピローグ:クリスマスの再会
十二月二十五日。クリスマスの夜。
東京都内の小さな公園は、薄く雪化粧をしていた。瑞希は、いつもアオとノリと三人で過ごしたブランコに座り、空を見上げていた。手元には、特技のスイーツづくりで朝から準備したホールケーキ。
「アオの莫迦…ノリも。ケーキ、作ったんだよ」
吐く息が白く、星空に溶けていく。二人が突然姿を消してから、もうどれくらい経っただろう。ジンとイン、そして七海という不可思議な存在から託された「クリスマスまでには帰ってくる」という言葉だけが、瑞希を支えていた。
瑞希は、ふと流れ星が一筋、夜空を横切るのを見た。その流星が消える代わりに、星空の一部が不自然に歪み、時空間の膜が破れるような閃光が走った。
「どうか…アオもノリも、無事帰ってきて」
その願いが届いた瞬間、閃光の中心から、二つの影が静かに地上へと降下した。
一人は、金色に輝く応龍の巨大な翼を広げた葵。彼は片腕に、意識を失った徳彦を抱えていた。翼はすぐに消え、二人は雪の上にそっと着地する。
葵は、全身の龍理を使い果たし、立っているのがやっとだったが、目を見開いた。目の前には、黒い髪を揺らす瑞希の姿。
「…瑞希」
瑞希は、ケーキの箱を雪の上に落とすのも忘れ、葵と徳彦の元へ駆け寄った。
「アオ!」
葵は、瑞希の細い体を受け止めながら、力の抜けた声で言った。
「ただいまーーメリークリスマス。ケーキ、食えるかな」
「馬鹿!馬鹿馬鹿アオ!心配したんだから!」
瑞希は涙を流しながらも、無事帰還した葵の背中にしがみついた。そして、徳彦を抱える。
「ノリ!しっかりして!」
徳彦は、かろうじて意識を取り戻し、かすれた声で瑞希に囁いた。
「…無事、帰還…成功。合理的な結論だ、瑞希…」
葵は、冷たい雪の上で瑞希を抱きしめた。仙界の法則も、究極の宝貝も、彼らの衝動と理性、そして地球へ帰りたいという強い願いの前には、何の意味も持たなかった。
夜空には、再び無数の星々が瞬いていた。彼らの長きにわたる仙界での修練は、クリスマスの夜、ついに終わりを迎えたのだった。




