そして伝説に
斥候部隊との衝突を皮切りに、竜宮での修練は文字通り実戦形式となった。崑崙山からの接触は続き、彼らは仙骨持ち(仙人、龍を含めた術を行う才能を持っている存在の総称)の中でも、特に**龍理と宝貝の二重具現化という特異な力を持つ『W世代』**の力を解析しようと、様々な戦術で挑んできた。葵と徳彦は、四体の具現化体(龍理と宝貝)との連携を、短期間で驚くほどに完成させた。
「W世代が持つ二重具現化の力は、やはり仙界の法則の外にある。彼らが放つ龍理の奔流は、仙人たちの長年の修行を、たった一撃で無に帰す」
ジンは、二人の成長を認めざるを得なかった。特に、徳彦は氷龍の龍理で周囲の龍理の流れを極度に鎮静させ、葵の応龍の龍理がその鎮静を一気に打ち破って『昇華』させるという、完璧なコンビネーションを確立していた。
「ノリ、お前の安定化プロトコル、マジで最高だぜ! 俺がブッ放す前に、一瞬世界が止まったみてえになる!」
「…君の非合理な推進力が、俺の安定化を最大の効果で発揮させる。この連携は、今のところ最も合理的な結論だ」
修練の厳しさが増す中、インが社の石畳に、龍理の波動で一つの紋様を描き出した。それは、七瀬七海の霧龍の龍理の痕跡だった。
「七瀬七海は、崑崙山の領域に潜入し、情報を送り込んできた。解析が完了したようだ」
徳彦は、その紋様を凝視した。それは、地理的な情報ではなく、龍理の法則が最も集中し、そして最も不安定な場所を示していた。
「これは…崑崙山の『心臓部』か」徳彦が呟いた。
「そうだ」ジンが頷く。「彼女は、我々に修練の時間を稼がせ、その上で、次に向かうべき場所を特定させたのだ」
「合理的な最速ルートかよ、相変わらず」葵は、苦笑しながらも、その行動力を認めざるを得なかった。
インが社の周囲に張られた結界を見上げた。
「これ以上、竜宮に留まることはできない。崑崙山は、近いうちに総力を上げて、この特異点を排除しに来るだろう。竜宮は、君たちを鍛え、次の舞台へ送り出すための、一時的な避難所だった」
徳彦は、氷の槍を握りしめ、冷徹な決断を下した。
「行こう、アオ。彼女が示した法則の最も不安定な場所へ。そこで、俺たちの仙骨を真に完成させる」
葵は、夜明けの光が差し込む海の境界線を見つめた。
「よっしゃ、次こそは崑崙山で、七海にラーメンをおごらせてやる。行こうぜ、ノリ!」
二人の少年は、新たな決意を胸に、龍理の法則が渦巻く仙界の、より深き領域へと足を踏み出す準備を始めた。




