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銭と神具は使いよう 〜 元WEB屋は魔法陣を解析して異世界を知る 〜  作者: 冬寂
騒乱の気配 ー スフォルツァ領

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新しい戦術を活かすー準備に注力する

「飛び先」をばら撒かないと「転移」は役に立たないわけで。

 いつ降り始めてもおかしくなかった雪が、午後にはついに降り始める


 雪が積もるほどではない今のうちに、とジャンフランコはスフォルツァ邸に滞在する間にやってしまいたい作業に着手する。


『【封印】の【魔法陣】』が移動手段に使えると気づいた以上、どんどん有効活用したい。

 まずは、万が一の時の緊急避難先としてスフォルツァ邸の魔道具工房に『【封印】の【魔法陣】』を施すのだ。


 別棟の建物の外周いっぱい外壁を埋め尽くすように『【封印】の【魔法陣】』を描いていき、一端に魔導線を繋ぐ。

 この工房には魔力供給の仕組みが備えられているので、配()盤からの魔導線を繋げば魔力が常時流れて『【封印】の【魔法陣】』が常時発動した状態になるのだ。


 多少の壁の厚みは融通を効かせてくれるらしく、工房の壁面程度なら「いしのなかにいる」状態とはならないようである。そもそも壁が厚すぎる場合は分厚い壁の手前が転移先になるようだが。


 実際に工房の中に【転移】できることを確認すると、偽装と保護を兼ねて【魔法陣】の上から樹脂をコーティングして完成だ。


 これで何かがあったときも緊急避難先としてスフォルツァ邸に戻れる状態になった。

 ひとまずリモーネ王国内でやるべき事は終わったので、【幽霊馬車】に飛び乗ってスフォルツァ邸を後にする。

 結局放置されたままとなる婚約者(レイチェル)が不機嫌になりそうであるが、ミルトンのことが片付くまでは目を瞑ってほしい。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 初雪が視界を遮る勢いで降りやがて積もり始めるが【幽霊馬車】はそれを物ともせずに進む。【身体強化】された馬の吐く息が雪を融かし消し飛ばす。


 コルソ・マルケ砦に到着すると、魔道具工房の資材を借りて、『【封印】の【魔法陣】』を多数書き込んだ魔道具~『【転移】の魔道具』と命名~を複数作成する。


 王族・貴族の救出後に彼等を収容する療養施設に置くために予備を含めて二つ

 ミルトンの首脳陣を捕え拘束するために五つ


 そこまでを一気に製作すると流石のジャンフランコも体力の限界に到達して動けなくなってしまう。

 魔道具工房でぶっ倒れているところをフレデリカに発見されて悲鳴をあげられたのだから笑えない。

 結局、そのままコルソ・マルケ砦で一泊することになる。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 元々、首都ミルトンへの侵攻に向けて必要な様々な魔道具の増産が進められていたが、新たな戦術として『【転移】の魔道具』を利用した人員の移動が加わったことを受けて、ジャンフランコは『【転移】の魔道具』の作成と配置に専念することとなった。


 既にジョヴァンナには『【転移】の魔道具』について報告済みであり、療養施設の管理を任せる予定のシビエロ侯爵をはじめとして主要な家臣にもジョヴァンナを通じて連絡が届いているはずだ。


  療養施設用の『【転移】の魔道具』を【幽霊馬車】に積み込むと、ジャンフランコはフレデリカとティツィアーノを伴ってシビエロ侯爵の居城へ向けて出発する。

 コルソ・マルケ砦からはもう一台、残りの 『【転移】の魔道具』を積んだ【幽霊馬車】がこれはキーンズへ向けて出発する。


 雪が降りしきる中、視界の悪さをものともせず、二台はひたすら東に突き進む。

 雪上でも滑ったり姿勢を乱す兆候すら見せず、ただ高速で前進するのは無限軌道(クロウラ)を使う最大の強みだ。

 スフォルツァ城での小休止を挟んで進み、途中の分かれ道でジャンフランコの乗る一台が南東方向に向きを変える。その先は軍閥を排除して領地を回復したシビエロ侯爵の領地だ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 シビエロ侯爵の居城に到着すると初老の家令に領主が既に目的地に向け出発したことを告げられる。

 そのまま家令に案内されて【幽霊馬車】は行き先を森の奥の屋敷、かつての僭主が隠れ家とするために建てた館へと変更する。


 ミルトン王を迎える療養施設とするため、やや古風な屋敷は現在突貫工事で改装工事中であった。

 屋敷の玄関先でジャンフランコ達を迎えたシビエロ侯爵は、療養施設としてこの屋敷を推した理由を説明しながら屋敷の中を案内してくれる。


「森の外からこの屋敷の様子を窺い知ることはできませんし、雪が積もればなおさらです。外部からの雑音を絶った状態で『お客様』に心安らかにお過ごしいただくには絶好の場所なのです」


 それだけではない。

 これだけの施設を自力で用意できるほどに領地を回復させたのは明らかにシビエロ侯爵の尽力の成果だ。

 食うや食わずの状態まで追い込まれていた領民を支援して農地を与え、廃業に追い込まれていた職人達に呼び掛けて家業を復活させたのは彼の功績だ。


「ジョヴァンナ様のご指示があってこの屋敷を調えてはいましたが、『お客様』をここまでお連れする方法に課題があるやに伺っておりました。それが一気に解決するとは、さすが若様ですな」

 一通り屋敷内を見て回った後、玄関ホールの壁面に 『【転移】の魔道具』 を設置する。

 実際に目の前で稼働させるとシビエロ侯爵はじめ全員が驚愕の顔になる。『稼働試験』は離れた場所にいたジャンフランコが『【転移】の魔道具』から飛び出してくるアレである。


 稼働試験が終わると魔道具を止め、ジャンフランコからのメッセージを合図に起動するよう手筈を整えておく。

 魔力供給は大ぶりの【人造魔石】を用いているため一週間くらいは魔力が持つ計算であるが、救出作戦開始の合図とともに稼働させるよう念を押しておく。


 万が一の時に駆けつけられるようシビエロ侯爵にも【鍵】の魔道具を預けるとジャンフランコ達はキーンズへ向けて出発する。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 キーンズでは既に砦の地下深くにある地下牢に『【転移】の魔道具』が運び込まれ、四つある大部屋それぞれに取り付けも完了していた。

 ここはミルトン共和国で急進思想を広めた元凶たちが転移させられる先として用意されている。


 ここではジャンフランコは稼働確認だけを行い、『【転移】の魔道具』の起動手順の確認だけを済ませると後は守将のピアネッツォーラ子爵に任せてスフォルツァ城に向けて出発する。


 スフォルツァ城の城門をくぐると、ちょうどピエレッタが【自律飛行する魔道具(飛行ドローン)】を並べて点検しているところに出くわす。

「情報収集のための偵察にひと段落つきましたからね。一旦戻して点検するのですよ」

「暫くの間フル稼働だったからね。問題の出ている機体はあった?」

「汚れは溜まっていましたけれど、洗浄すれば特に問題はありません」

「攻略戦では偵察以外にも使うと聞いているけれど」

「そうですね。若様の工房宛てに魔道具のリクエストを出していますよ」

「何だって!?聞いてないよ!」

「攻略戦までに七機分お願いしますね。期限厳守で!」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ウンザリしながら城の自室に戻ると、ピエレッタの予告通り【自律飛行する魔道具(飛行ドローン)】につける【睡眠】と【麻痺】の魔道具のリクエストが届いていた。ご丁寧にも「倍量記法で!でも魔石で重くならないように!」 とメモがついている。


「簡単に言ってくれる」と文句を言いながらも注文に応えようと手を伸ばす。

 まずは中核(コア)になる【睡眠】の魔道具を作り出す。【睡眠】自体はそれほど複雑な【魔法陣】を必要としないので、【魔法陣】を描いた基板自体は非常にコンパクトだ。

 問題は魔力を供給するための魔石の収納方法と外装だが…倍量記法で魔力の消費量が二倍になったことへの対応をしつつ重量増を嫌うと相反する条件をクリアしなければならないので簡単ではない。


「いっそのこと一回限り(ワンオフ)の仕様で作るか」そう呟くと、基板をくるむように【人造魔石】を形成する。空気抵抗にならないよう流線型に形を整えると完成だ。


 ペアになる【麻痺】の魔道具も同様に作成すると、「魔力の充填と試験は任せた!不具合がなければ、同じ仕様で残りも作るから」とメモを付けて棚に並べておく。


 ほかにも量産が必要な魔道具のための【魔法陣】作成の依頼が何件か届いていて、こちらには黙々と対応していく。出来上がった【魔法陣】を城とコルソ・マルケ砦の工房に回すと仕様通りの魔道具を量産してくれるので、こちらへの対応は真剣だ。


 スフォルツァ家の戦力の少なさを補うために強力な魔道具をいくつか用意しておくのだ。

 その他にも『斬首作戦』で用いる【魔封じ】の魔道具などの量産も始まっている。


 戦力と戦力が直接ぶつかる形での交戦はなるべく避けることを主軸に戦術が組み立ててられている。

 何せ兵力の単純比較では圧倒的にスフォルツァ家が不利なのだ。


 現時点での首都ミルトンの戦力(推計)は、最精鋭である宮廷魔導師団が杖の天恵持ち(魔法使い)約100名と剣の天恵持ち(騎士)約30名。魔力を持たない守備兵が約3万。最悪の場合はここに領民12万が加わる。

 一方、スフォルツァ家がミルトンに投入可能な戦力は、杖の天恵持ち(魔法使い)40名と剣の天恵持ち(騎士)40名。一般兵に至っては約8,000と彼我の戦力差は歴然としている。

 本来ならあと2年は準備に掛ける予定であったのに、それが前倒しとなってしまった影響は大きい。


 兵法の常道(セオリー)が攻城側に求める戦力は守備側の三倍。普通に考えれば無謀な戦力比であり、コレを様々な魔導具の投入と緻密な作戦遂行でひっくり返すのが今回の攻略戦の要だ。


 事前の作戦通りならミルトン側に仕事をさせる前に主要な作戦目標を達成してしまえるはずだが、不測の事態は常に起こりうる。バックアップとして攻撃魔法をばら撒く魔道具の増産は必要だ。

 他にも有用な【魔法陣】を印刷した紙も用意して実行部隊に持たせる予定だ。


 こうした()()()()()()魔道具生産の進捗を横目で見ながら、ジャンフランコ自身はスフォルツァ城やコルソ・マルケ砦にも『【転移】の魔道具』を設置したりピエレッタの追加注文に応えたりと彼にしか作れない魔道具の製作に力を注ぐ。


 そうこうしているうちにフランチェスコ(お祖父様)に約束していた一週間はあっという間に過ぎ去った。

今回の新要素:

・ 【転移】先として、スフォルツァ邸(魔道具工房)、シビエロ侯爵領内の療養

 施設、キーンズの地下牢を設定 (ほかにも?)


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