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「ほーら!お菓子ですよ――」とフロンの声が途中で途切れた。
これは井上凜が三人のそれぞれのやり方を話し終えた時のことだった。
「この感じだと……フロンさんはしばらく戻りっこないだろう。」とフロンの途切れた声で井上凜がこう判断した。
これについて、井上桃花も「そうだね」と頷いて同意した。一秒の間を置いて、彼女は続いて「それでどうする?兄さん。正直、妹ちゃんがすぐ泣き止むとは思えない。父さんと母さんが心配だし……このまま待つの?それとも……」と言った。
「うーん……」
このまま待つのは不安だし……でも、この高さだと降りられないもんな。井上凜は考えながら、目の前の裂け目を見ていた。
今、井上凜、井上桃花、ツリーセ三人は裂け目の近くにいる。意外な攻撃でできてしまったこの裂け目は30メートルくらいの深さがある。
三人はいなくなった両親を探すために、何度もこの裂け目を観察したが、何の人影も見つからなかった。また、ツールや登攀の技術もないため、直接に降りるのもできない。
だから、ここにいる兄妹三人は、元々「空の声」というスキルで、何とか両親と連絡を取るという算段だったが……今のところもできない。
井上若実が泣き止むのを待つ間、三人ができることはほぼなかった。
「その……星が言いました。僕たちにはまだやれることがあるって。」とツリーセが言った。
「やれること?」と井上凜が問題を口にした途端、目の片隅にあるロールプレイング状態のメッセージが強調されたかのようにちらりと浮いて、すぐ答えが浮かんだ。
「判定……か。」
井上凜の自問自答に、ツリーセは頷いた。
「リンさんはあまり判定に頼りたくないのはわかっている。だから、ここは僕一人でやろう。僕の探索にはファンブルがないから。」
「捜索」のスキルを使えば、判定の結果に+2の補正がかかる。戦闘の判定と違って、探索や分析などの判定はファンブルを避ければ、普通の失敗に怖がる必要がない。少ない情報も手に入れる。
井上凜はこの理屈がわかっている。むしろわかっているからこそ、やれる判定はやった。だが、やはり心配してしまう。なぜなら、判定には特殊な状況が起こりうる。
「それはそうだけど……」星くんと合流する時だって、「その他」という結果がある……
「じゃあ、私も一緒にやろうか?」と井上桃花はここで口を挟んだ。
「桃ちゃん……」
「私も一緒にやれば、何かあった時カバーできるし、力合わせもできる。こうすれば、兄さんも心配しなくなるだろう?」
パチ……
「力合わせ……」と井上凜はこの単語に何かを思いついたように呟いた。
「どうした?兄さん。」
「そういえば、ルールブックにたしか『協力判定』という――」と、井上凜の話は途中で止めた。
パチ、パチ……
原因は、目の前に判定のメッセージが突然出てしまって、またツリーセの一つの言葉だった。
「なんか……聞こえなかった?」
「え?」「ん?」
パチ、パチ、パチ……どこからの枝が折れた音。
メッセージの内容と突然の出来事に混乱になってしまったせいで、井上凜と井上桃花はうまく判別できなかった。
「な、何の音?どこから?」井上凜は慌てて周りを見始めた。
だが、裂け目の部分以外、周りが木々に覆われていて、どんなことが起きたのか目視できない。
どんな方向から音が出ているのもうまく判別できなかった。
『???』の判定
ツリーセ(井上星):(省略)
判定の結果:6(+2)=8 成功
「こっちに来て!」と五感を研ぎ澄ましたツリーセが慌てて何歩を下げて叫ぶと、すぐ二人に自分の方向に手を招いている。
パチ、パチ……
井上桃花のメッセージ:
「『???』の判定に出目の結果と状況によって変わります……早く避けて!
1:ファンブル。
2~5:失敗。
6~9:成功。
10:クリティカル。
その他:その他。」
「どういう意味だよ?!」と井上桃花はとりあえずダイスを振った。
井上桃花はダイスを振ると、伸ばした手が直接ツリーセに引っ張られた。
『???』の判定
井上桃花
判定の結果:5(+2)=7 成功。
パチ……音が迫ってきた。
音が近づいてくるのがわかっている。だから、井上凜は話す余裕もなくなった。
井上凜のメッセージ:
「『???』の判定に出目の結果と状況によって変わります!避けてください!
1:ファンブル。
2~5:失敗。
6~9:部分的成功。
10:クリティカル。
その他:その他。」
井上凜は判定を避けるつもりだったが、元々井上桃花より遅れていた行動は彼の運命を決めたのだ。
『???』の判定
井上凜
判定の結果:自動失敗 ファンブル。
井上凜はツリーセのところに行きたかった。
しかし――
パチ!
ポン!
「プハッ!」井上凜は行く途中で、黒い物体が猛スピードで現れ、彼にぶつかった。
ツリーセにはすべての過程を見えたが、助けることができなかった。
パチ!という音とともに、隣の木が強い衝撃によって引き裂かれた。木が倒れた束の間、黒い物体が現れた。黒い物体が現れた瞬間、ポン!と井上凜にぶつかった。井上凜はぶつかると「プハッ!」という声を出した。
井上凜が伸ばした手を、ツリーセには掴むことができなかった。
ツリーセが井上凜の手に触れる寸前、黒い物体が猛スピードで井上凜の姿を消したのだから……
だが、その過程を捉えたツリーセは、当然黒い物体の正体も捉えた。
実は黒い物体は人の姿をしている生物だった。そして、その生物の正体は一体の吸血鬼である。
「リンディさん!」
「兄さん!」
井上桃花とツリーセが叫んだ人物は違えども、見る方向は同じ。
二人は青ざめた顔色で何本の木が倒れている方向を見ている。
強い衝撃によって倒れた何本の木の状況から、あの二人がすでに遠くに飛ばされていることがわかる。
「兄ーさん!」と井上桃花は不安になって、先に行動し始めた。
井上桃花は走った。
「あ!待って!モモナー」とツリーセは後をつけようとしたところ、プスっと鳥肌が立っていた。すぐに足を踏み留まった。
『回避』の判定
ツリーセ(井上星):(省略)
判定の結果:5(+2)=7 成功
ツリーセは足を止めると、目の前の地面に「ド」、「ド」、「ド」と三本のナイフが横から土に刺さった。ツリーセにはわかる。ナイフは地面に刺さる前の軌道は明らかに自分の頭を狙っていた。
そして、ナイフを避けると、横から冷徹な声がした。あまりにも感情のなさに、ツリーセは震え始める。
「……人間?なぜ人間は吸血鬼の匂いをするんだ?」
「だ、だれ……?」とツリーセは声の方向に目を向けると、一人の成人男性がいた。
男性は死んだような目をしていて、色んな武器を備えている。カチッと皮革のベルトを解いて、もう一本のナイフを取り出した。
「いいや、俺は間違えるはずがない……そうか。お前らは吸血鬼の予備軍だ……つまり、人間じゃない!」
成人男性は皮革のベルトを鞭のように垂れて、ツリーセに向かってナイフを振り始めた!




