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「星様!」井上星が部屋の中に現れたのを見て、フロンはすぐ井上星の名前を叫んだ。
おかげで、フロンの声に惹きつけた井上若実もすぐ井上星のことに気付いた。
井上若実は「にぃに!」と叫んだ後、小さな歩幅で駆けつけた。フロンはまだ向こうのことがあるため、舞台から降りられない。
「にぃに!」と井上若実は叫びながら、ポンっと、身体に回り切れない短い両腕で井上星を抱擁した。
小さな身体でも少々強めの力に、井上星も思わず抱き返した。
「若実……」不安が抑えられない井上若実にはまだ気付いていない。井上星の元気がない声に。
井上若実はしばらく安心できる匂いに浸っていると、やっと気付いた。
ふるえている……
井上星が震えている。
井上若実は小さな頭を少し離れて、頭を上げた。すると、泣きそうになった。
土気色の顔色がひどく憔悴している。普通なら生き生きとしている目付きはあまりにも生命力が感じられない。何より、井上若実はとんでもない悲しみを感じている。
「いだいの?どこがいだいの?」自分のせいだと思われている井上若実は泣きそうな声に、目も少しの涙が溢れ出そうとしている。
井上星は力のない視線が井上若実を捉える時だけ、少し元気が取り戻した。彼はゆっくりと頭を横に振った。
「違うよ。若実のせいじゃない……」と井上星の返事に、井上若実ははっきりの理屈がわからなくても感じていた。自分の兄は確かに傷ついているということ。
この事実を感じた途端、井上若実は「いだくない……いだくない……!」と言い、もう一度井上星を抱き締めた。
「もういだぐない!いだいのとんでっりゅ!」自分が知っている単語を繰り返して並べる。自分が泣いた時に兄がよくそうしたように同じことをやる。
ただただひたすらに、一所懸命に、傷ついた心を癒す。
「もういだくない……だいじょぶ……いだくない……とんっでりゅの……」
自分のかわいい妹が一所懸命の姿に、井上星は少しの微笑みを零した。彼ももう一度その小さな体を抱き返した。
暖かいな……井上星は目を閉じて子どもの体温を感じて、また井上若実の気持ちを感じながら思っている。
二人はしばらくこうして抱き続けた。
そして、「凜様――」とずっと喋っているフロンの声が徐々に背景の音と化した中、井上星の震えが治まった。
当然、先に意識を戻した井上星は、自分がいた環境を見始めた。
ここは……部屋?こんな疑問が脳裏によぎった途端、「いだくないぃ、いだくない……」と、まだ自分のことに気付いていない井上若実は頭をすりすりしながら言い続けている。
それに気付くと、井上星はしょうがない笑顔をして、少し井上若実を引き離した。井上若実は頭ですりすりしたから、前髪がちょっぴり乱雑になった。
「ありがとう、若実ちゃん。もう大丈夫だよ。」と井上星は少ししゃがんで、手で井上若実の前髪を整理しながら言った。
引き離された井上若実は真っ直ぐな目で井上星を見て、「ほんどう……?」と言った。
「ああ、本当。」と井上星がこう言っても、井上若実は潤とした目で見ている。
やはり心配されている……と、井上星はどうすればいいと考えていたら、すぐ思いついた。
「……そんなことより、若実ちゃん。」と井上星の口調は井上若実に「はい!」と気を引き締めたように返事した。なぜなら、説教の雰囲気を出している。
「“にぃに”じゃなくて、“兄さん”だろう?」
「うっ……」
「それに、フロンおじ――フロンさんに迷惑をかけてないよね?」
「……かけてないもん!」
「じゃあ、最初に大声で泣いたのはどの子だ?」
「ないてないもん!おじしゃんにめいわぐをかげてないもん!」
「おじ……」もう学んじゃった……あの時は聞いてたもんな。「……まあいい。でも、嘘ついたな!若実ちゃんは泣いただろう!」
「うっ……!」呻き声をあげると、井上若実はすぐ目を逸らした。
「嘘ついた子は?」井上星は両手を腰に当て、怒っている風に言った。
五秒の間、フロンの声だけ部屋中に響いている。
そして、井上若実は先に耐えられなかった。彼女は視線を地面に移して、落ち込んでいる表情で「ごめんなしゃい……」と言った。
「うん。反省できてえらい。」と井上星は言いながら井上若実の頭を撫でていた。
井上若実はしばらく撫でられると、両手で軽く井上星の手を触った。彼女は自分の頭を撫でたように撫でている。
井上星は一瞬動きを止めて、眉がハの字になった。彼は若干不自然な笑顔で「若実ちゃんは本当にいい子だね」と言った。
やはり……辛いかも……
“「――だって、星は僕のために泣いたんだ。」”この話が浮かぶと同時に、フロンが話しかけた。
「星様……その……あなたのキャラクターは……ツリーセ君は……死にました。」
フロンの宣言を聞くと、井上星はまるで脳が刺激されたように、少し前のこと――ここに伝送される経緯を思い出した。
次話、戦闘開始!




