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泣いても家族が近くにいないという事実、またずっと大声で泣くとちょっと疲れるため、井上若実は急に泣くのをやめたではなく、段階を踏んで、大声から弱々しく泣く、最後はすすり泣きに変わって、やっと泣くのをやめたのだった。
完全に終わったわけではないが、情緒を発散したおかげで、静かになった井上若実は鼻水をすすりながら、目尻に涙がついた目は、その視線がフロンに置いてある。
めのまえのおじさん……へん。と、これは今の井上若実が考えていることだ。
おでこの部分に大きな「白い角」が立っている。額だけでなく、他に腕や首、また顔にも一粒一粒の「結晶体」が身体に嵌めたように生えている。
明らかに人間と違う皮膚の色が所々に縫い合わせた感じに水色や緑色、他に赤色など、多彩な色に見えてしまう。更によく見ると、その皮膚の色は発生源があり、その体中に綴っている結晶体が発するものだった。
他にちょっとツルツルとした皮膚に蛇のような瞳、かくかくのおててと、背に生えている膜のついた翼……簡単にいうと、井上若実の目に映ったフロンの外見は、あまりにも人間離れのものだった。
四歳の井上若実でもわかる。フロンの外見はとてもへんだ。
でも、そのへんな外見のおかげで、井上若実は一つのことを思い出した。このことはフロンが頑張っている姿勢のおかげでもあった。
「……じゅの。」井上若実が言ったこの言葉、一時的にフロンの動きに止めさせた。
ずっと回るに回っていたフロンの大きな「白い角」、目立ってしまうほど、目を奪われるほど綺麗だった。
だから井上若実はずっとフロンの「じゅの(角)」を見ていた。初めて会った時も。
綺麗なものに惹かれていた井上若実はやっとフロンのこと(主に角の部分)を思い出した。
そして、「そうですよ!」とフロンはとても感動した様子で言った。
「この『角』です!私のことを思い出してくれましたか!若実姫様!」と心から嬉しい様子のフロンである。まるで記憶喪失の彼女に自分のことを思い出してくれたかのように自分の努力が実ったと感じたのだった。当然、フロンはそんな経験がない。
「……じゅの!」と、ここで井上若実が伸ばした手は強い意志を示した。「触らせて!」と。
「あ、はい。どうぞ。若実様。」と、フロンも素直に頭を下げて、井上若実に触らせた。
……普通なら、「結晶」は不安を煽る、「精神攻撃」に使うものなんですが……子供に効かないのは本当だったな。とフロンは昔のことを考えながら、触られていることに集中している。
しばらく数十秒触った後、井上若実は手を止めた。不安げな表情で周りを見始める仕草は彼女の気持ちを物語っている。子どもの気持ちが変わるのが早い。特に家族がいない時に。
……せっかく安心できるようになったのだ。もう一度泣かせてはいけない!と、フロンはそれを見て、すぐ慌てて両手を井上若実の前に振って、少しでも気を逸らしたつもりだ。
そして、フロンの目的は成功した。井上若実はフロンを見始めた。
フロンは軽く手を井上若実の肩に置いて、真っ直ぐに目と目を向きながらで言った。
「若実姫様。大事なお知らせがあります!ちょっと前にも言いましたが、姫様のご親族、つまり、パパ、ママ、おにぃ、ねぇね、にぃに全員が今、ちょっと遠いところにいます。」フロンは最初に助言を得た時に井上若実に説明した要領で、もう一度に状況を説明した。
フロンの話を聞いて、井上若実は周りを見る動きがすぐ地面を見つめることに変わった。
そして、「とおい、ところ……」と小さな声で呟いた。
「はい。少し申し訳ありませんが、姫様の家族、また、あなたにも手伝いさせたいことがありまして、あまり良くない手口でやってしまいました。『悪意』を減らせるには、この世界の人たちの力が必要でして……あ!ちなみに、『悪意』を『消す』ではなくて、『減らせる』んです。なぜなら、『悪意』は完全に消せないので、減らせればいいです。悪意を減らしたら、姫様の家族も全員帰れます――」とフロンはどんどん説明の口調が増えて、ほぼ全部の事情が井上若実に話したが……
井上若実、わからない!
少しボーとしている井上若実に、フロンはハッとなって、自分がまたやってしまったとわかった。
「と、とりあえず、若実姫様!あなたの家族は、あなたの力が必要です!」フロンは簡単に話をまとめた。
そして、力強い言葉が井上若実の心に響いていた。
当然難しい話は井上若実にはわからない。
特に普通の四歳児なら、何もできやしない。
精々わめくことやわがままなど、意志表現する気持ちだけを持っている。だが、もしこの論点が違うとすれば、実は四歳児はまだ他に何かの力を持ったとすれば、それはきっと――
「あなたの『応援』は、家族の力になります!」
――子どもの声であろう。
子どもの声は大人の声援になり、力になる。
井上若実には複雑な事情がわからない……が、感じている。このまま何もしないと、家族は戻ってこないかもと。
「若実姫様。こちらに来てほしい。」フロンは丸いステージの上に立ってこう言った。
おにぃ、ねぇね――井上若実は家族の様子を浮かべて、よちよちとフロンがいた舞台へと歩いた。
その少し不穏でありながらも単純で真っ直ぐに自分のところに来た井上若実の姿に、フロンは強い思いを感じた。家族への強い思いを。
これはきっと……子どもの強い一面だろう。だから「結晶」は効かない……感情のままに生きる。それが子ども。
フロンは感慨を感じながら、井上若実が来るのを見守った。
そして、井上若実が舞台に立った時、フロンが言った。
「若実姫様。姿は見えないですが、声が聞こえます。あの言葉を言えば、聞こえます。」
フロンの言葉を聞いて、井上若実は一瞬目を向いたが、すぐ地面に戻した。
「そりゃの……こえ……」ちょっと標準じゃない発音でも、井上若実は何かがつながったと感じた。
この感じはちょっと前もあった。だが、一つが少ない。
「おにぃ……?」
だが、井上若実の声に、すぐ返事がこなかった。
少し静かな空間で変な雰囲気になったもので、フロンはちょっとおかしいと思った。
この間、向こうは何かがあった……フロンが声をかけようとしたところ――
「はぁ……はぁ……すみません。若実ちゃん。さっき、おにぃは……ちょっと忙しいんだ。」
「うんーん、だいじょぶ……」
フロンが井上凜の声を聞くと、また井上若実の無邪気な声も混ぜたため、一瞬胸をなでおろした。
しかし、井上凜の次の話、また言い方は再びフロンに緊張させた。
「本当にごめんね……はぁ……ねぇねと、にぃにも……忙しいんだ。君には悪いけど、しばらくおにぃ一人だけで、お話をしてもいいかな?」井上凜、はきはきとした声が出ない。
「うん。」井上若実、無邪気の声のまま。
「若実ちゃんは本当にいい子だね……いい子には、ご褒美のお知らせがあるよ……ゴホ……」
「なに……おかし?」井上若実の声は、少し元気になった!
「はは……帰れば作ってあげる!」
「いいのぅ?」井上若実、嬉しい声が出た。
「ああ。それと……」井上凜、少し止まった後、「にぃには、もうすぐ迎えに行くよ……」と言った。
「凜様!それは……!」とここまで聞くと、さすがにフロンは井上若実の会話を邪魔せざるを得なかった。
しかし、フロンが話を聞く前に、ある人物が青い光とともに部屋の中に現れた――その人物は井上星だった。




