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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
落ち着き
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30

 「上……」井上凜が指で空中にランディの方向に指しながらこう言った。リンディ以外、全員視線を上へ向いた。リンディだけ動きが止まったままだった。


 パサッ、パサッ……と布がはためくような音が何回か響いていて、ランディはゆっくりと地面に降りた。


 ランディが地面についた後、井上凜は「ランディさん……」と呼んだが、ランディは井上凜の呼びに返事していなかった。


 ランディはまず各人物を観察し、両方のことを見合っていた。


 そして、ランディはリンディが止まった姿勢を見つめて、動きの先に倒れている井上智澄と井上佳月の二人に視線を送った。


 ランディはリンディのことを後にして、井上凜の方へ向いた。井上凜とツリーセ、また井上桃花を一目で確認した後、ランディは話した。


「たしかツリーセと……“グリーン”だっけ。」とランディはわざと“リン”の発音を伸ばした。


 ランディはグリーンのダジャレを披露して、まだお前たちのことを覚えているという意味を示している。


「はい。ツリーセです。」


「そうです。グリーンのグリンと申します。」と井上凜も気が合うように返事した。


 グリン……偽名?いや、ツリーセはたしか弟君のキャラクター名。つまり兄さんは偽名より――と井上桃花は一つの可能性に絞っている。


「それで、あの子は?」と、当然ランディは井上桃花のことを言っている。ランディの目に少し警戒の色が帯びていた。


「家族です。」と井上凜はこう言って、井上桃花に視線を送った。自己紹介してという意味だ。


「モモナーと言います。」と井上桃花もキャラクター名を使った。


「ふーん。」とランディはあまり気にしていない様子で井上智澄と井上佳月の方に一回頭を揺らした。まるで頭で指しているような動きだった。


「あの倒れている二人も?」


「はい。あの二人は父さんと母さんです。」と井上凜が返事した。


「家族が多いな。」


「本当ですが……」


「いいだろう。こちらも似たようなもんだから……」とランディは言いつつ、視線がリンディと青色の吸血鬼に向けた。


「信じてくれるんですね。」


「まあな。一応聞くが、どんなことが起きている?事情は?」


 井上凜は一度口を開けて説明するつもりだったが、詳しい状況が井上桃花の方が説明できると思って、「モモナーが説明しようか?」と井上桃花と顔を合わせてこう言った。


「……そうですね。実は――」と井上桃花がリンディたちとどんな感じに出会ったか、また戦闘のことも詳しく説明した。


 そして、全部の事情を聞いたランディは「ふーん。だからこいつがこう言ったんだ。『弱いほうが悪い』だと……」とあまり声色が変わっていない声で言ったが、かなり真剣じみた態度だった。


 その棒で言っているような「ふーん」の声も、井上凜三人に一つの感情が伝わっている――ランディが怒っていると。


「リンディ。弁明は?」


「ランディはこいつらの言葉を信用しているのか?」リンディは動きが止まったままだが、喋れるようだ。リンディは信じられないような声で言った。


「ああ、一応信じているが何が?」


「吸血鬼狩りかもしれないだぞ!」


「この人たちの身分はお前との弁明があまり関係ないだろう。それに、これだけは確信できる。こいつらは吸血鬼狩りじゃない。」


「なんでだよ!」「それは、わたしもちょっと気になるんですが……」


「この人たちは何の武器も持ってないだろう。吸血鬼狩りにしては不用心すぎる。」


 これは井上凜が「私たちの身を見てください」という話の本当の意味だった。だがリンディは蔓のことを武器として認識していて、証拠として不十分だった。そもそも証明できないものを証明するのはできないものだ。


 相手の話の意図を無視して、何の弁明も聞かないと、会話が通じ合えない。井上凜は簡単に痛感できる。井上星と井上桃花も何となく感じている。


「この人たちは確かに怪しいが、吸血鬼狩りじゃない。これが信じれる。」


「……ありがとう。信じてくれて。」と井上凜はランディの態度に嬉しくないが、何となく礼を言った。


「それに、ほら。こんな些細なことでも礼を言っている。あんな連中ができるのか?特に吸血鬼に!」


「それは……」


「この人たちの価値観は根本的から違う。敵対するより吸収しろ。歪な暴論よりこの人たちのほうが上だ!がっかりさせるな!」


 リンディは何も言えなくなった。リンディの返答に期待していなかったようで、今回ランディは青色の吸血鬼に言った。


「サンディ。君もだ。リンディに引っ張られるな。」


「申し訳ありません。」と青色の吸血鬼サンディ申し訳ない顔で言った。


「……わかっているならいい。」


「その……あなたたちは家族、ですか?」と井上桃花は気になる様子で言った。


「……仲間で家族みたいなもんだ。」とランディは一瞬井上凜とツリーセ二人の方に一瞥してこう言った。


「そうですか……では、父さんと母さんは返してほしいですが……」


「連れていけ。興味がない。」


「待って!ランディ!」とリンディは少し焦って言った。


「なんだ。」


「せめてあの二人にも血を与えた方が……」リンディは動けないが、ランディは何を言っているのか知っている。


「なら気絶のやつより、行動能力を持っているやつにしたほうがいいだろう。交渉もできるし。」


 リンディはまた何も言えなくなった。


「グリンさん。」ランディは珍しくさん付けした。


「何でしょうか。」と井上凜が言った。


「もう二体の吸血鬼がいるはずだが……」


「はい。いますが……一人は遠くないところに縛っています。」と井上凜は一体気絶した吸血鬼を見てこう言った。


 少し責められる覚悟をしていたが、ランディの言葉は別のことを言っている。ランディは特に気にしていなかった。


「そう……あの二体に少し血を分けてくれてもいいだろうか?」


「それは……いいんですが」と井上凜は少し迷った後、続いて「もし私たちにそうさせたいのなら、一つ聞いてもいいでしょうか?」と言った。


「何だ?」


「あなたたちは一体……どんな目にあったのか、そして、どういうわけでこうなったのか、聞かせてほしいです。」


「……こちらはお前たちのことを聞いてないのに?」


「聞くなら話します。信じないかもしれませんが。」


「……巻き込まれるかもしれないぞ?」


「私たちはここにいる時点で、巻き込まれていると思います。」


「信じるのか、お前たち。」とランディはツリーセと井上桃花に言った。


「兄さんの判断なら信じる。」『兄ちゃんがそう判断したなら。』


 二人が二つ返事で返したことに、ランディは何とも言えない表情だった。


「ふっ。盲信なのか、信頼なのか……見当つかないな。」


「当然信頼だよ。兄さんのこと、好きだからね!ね!」と井上桃花はツリーセに言った。


 『うん!』「う、うん!」


「やはりおかしい奴らだな……」とランディはこう言い終わった後、静かになった。ランディが迷っている。


「とりあえず、あのもう一体のほうをここに連れておきましょうか?」と井上凜はランディが迷っているうちに、できることを済ましたい。


「……ああ、頼む。」


「じゃあ、二人はここに残ってね。」


「わかった。」「はい。」


 井上凜は少し距離を離れた後、すぐフロンに話しかけた。


「フロンさん。もしかして、吸血鬼狩りと関わる『シナリオ』って、ありますか?」と井上凜が聞いていた。


 だが井上凜はそう聞いているが、内心では願っている。「シナリオ」がないことを。


 しかし、願いは叶わなかった。


「ええ……あります。凜様の会話でずっと吸血鬼狩りの単語が出てくるので、何個もまとめました。」とフロンがこう宣言した。


「それに、とても大きな『悪意』に関わっています。」

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